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響きをともに|茉記

わたしが通うライアレッスンのクラスでは、年に一度、公開練習会が開かれる。今年の会場は、海が見えるとてもすてきな場所だった。
当日、リハーサルをしているととても繊細な音が空間に美しく響いて、緊張したわたしをすこしずつほぐしてくれた。そとではリスも鳴き始めて参加し、レッスン中、お庭に鳥や蝶が次々にやってくるあの感じを思い出させた。

公開練習会に参加するのは3回目。
これまでは、レッスンを受けている方々の家族や近しい友人が演奏を聴きにきてくださっていたけれど、今年からは一般の方々にも参加いただけることになった。練習会の日が近づくにつれ
わたしのつたない演奏や歌を聴いていただいてよいのだろうか…
緊張感が日に日に増す一方で、練習は思うようには進まなかった。

公開練習会の1年目は「ひなどり」というかわいらしい曲のメロディを、先生の伴奏と共に弾いた。
2年目は、1年目に弾いた「ひなどり」の伴奏を弾き、メロディは一緒にレッスンを受けている方が弾いてくださった。その時の会で一緒にレッスンを受けている方が歌いながら演奏された
The seven sleepers of the ephesus
練習会までのレッスンで聴きながらすてきだなぁと感じていて、わたしもいつか弾けるようになりたいと思っていたから、迷いなくこの曲に決めた。
歌いながら弾くということがこんなにも難しいとはきづいていなかった。

振り返ると、わたしが初めてライアの演奏をはじめて聴いたのは、師である山下りかさん。
とても美しい歌声と共に演奏されていた。
入院中の母がいつ旅立ってもおかしくないと言われた時期で、毎日病院に通っていた。病院がある街の山の上で、クリスマスのライアコンサートがあったのだ。
母の最期と向き合っていた日々に迎えたクリスマス。友人夫妻の企画だったこともありライアコンサートに向かった。わたしの暗闇の中が、シュッとマッチで火を灯されたようで、だんだんと安心に包まれていった。経験したことのない感覚は、うたとライアがセットだった。

発表会1週間近く前になっても、歌いながらの演奏は思うようにはいかず、たくさんのヒントをいただいた。メロディ、歌詞、伴奏が自分の中にすっかりと入っていないときは、空間に響かせることができず、聴いてくださるひとに届かず楽譜の中のことで終わってしまう。楽譜を目で追いながら練習の時間を経て
公開練習会の日、空間から響きをいただき、響かせることができただろうか。

ライアを通じてお会いできた方々の存在はとてもありがたく感じている。それぞれの暮らしでライアと向き合う日々を経て、演奏を共にするまでの時間からその後の時間と響きまでをも共有できることの尊さをより感じている。

このリレーエッセイで始めた書くこと
はじめての弾きながらの演奏
わたしのとっての大きな扉を押した2024年もあとすこしだ。

#ライア #演奏会#響き#歌いながら演奏する#会#リレーエッセイ#15巡3番目


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HAKKOU/リレーエッセイ
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