バター鮭子🐟

フェミニスト/トランスウィドウ/トランス女性自認の英国人男性と国際離婚/主に自分の人生とフェミニズムについて書いています/女性学を学ぶことと自分の本を出版することが夢

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フェミニスト/トランスウィドウ/トランス女性自認の英国人男性と国際離婚/主に自分の人生とフェミニズムについて書いています/女性学を学ぶことと自分の本を出版することが夢

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はじめに

私は良い妻ではなかった。良いパートナーでもなかった。 家事はできないし、お金も稼げないろくでもない存在だった。 結婚生活は思っていたより大変で、我慢も多かった。私は感情的で飽き性だし、これが最初で最後の結婚生活になるとは自分でも思っていなかったけれど、まさか夫が本当は女に生まれたかったという理由で結婚生活が終わるとは思ってもいなかった。 私はこの出来事が起こる前からトランスジェンダリズムには懐疑的だった。 いくら性器を切り落とそうが、ホルモン治療をしようが、性別は変えられな

    • トランスジェンダーというカルト14 賛美

      トランジション開始からたった数ヶ月で、私は普通の人なら縁のない不快感を散々味わった。毎日毎日、性別に関する侮辱をされ、心はボロボロだったと思う。では、なぜ私は彼から離れなかったというと、ビザの問題があったからだ。 私は彼の配偶者として英国に移り住んだので、ビザのルートは英国籍の配偶者となる。当然、夫婦関係が終われば、私は日本に帰らなくてはいけなくなる。もちろん、外国から移り住んでくるのは配偶者だけではないので、他にも永住権への道はある。例えば雇用主がスポンサーとなる就労ビザ

      • トランスジェンダーというカルト 13 願望

        カムアウトをきっかけに、私は元夫がいかに今までの人生で人から注目されたことがなかったかを知ったと思う。両親には息子の彼より熱中するものが常に存在し、本人は目立ちたくはないけど他人とは違っていたい。けれど、他人より秀でている特徴がない。父親から教え込まれたような男らしい男性にもなれなかったし、高額な学費の割にはキャリアエリートにもなれなかった。しかし、私は彼がいつもどこかで注目されることを望んでいたと思っている。 以前の記事で書いたように、見込みもないのにゲーム実況者になると

        • トランスジェンダーというカルト12 女性らしさ

          元夫のおかしな行動はホルモン治療開始後、更に拍車がかかった。まず初級レベルから始めると、突然スーパーで植木鉢に入った花を買ってきてキッチンに飾っていたことがある。花なんて今まで見向きもしなかったのに、何のつもりだと開いた口が塞がらなかった。こちらでは男性から女性への贈り物といえば花束だ。街に出れば、花束を抱えて何処かへ向かう男性が必ずいる。私も昔は彼から花束を貰うのが好きだったし、気が向いたら自分で買うほどだった。 イングランドはガーデニングの国なので、多くの人が中年になる

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          トランスジェンダーというカルト11 月経

          女と生理は運命共同体である。ミニピルと出会うまでは、これがあと何十年も続くのかと定期的に絶望していた。「女ならみんな生理はあるからしょうがない」「生理痛があるのは当たり前」日本にいたころは、そういう諦め論で自分を納得させていた。だが、生理に選択肢がある国に来た途端、自分の考え方は社会によって作られていたものだと気づく。その気づき以降、私の生理に対する考え方は大幅に変わったと思う。 元夫は私が生理痛で横になっていると、薬や湯たんぽを持ってきたり、私が担当の家事を代わりにするな

          トランスジェンダーというカルト11 月経

          トランスジェンダーというカルト⑨ 性別変更

          英国で性別を変更するのに、性別適合手術は必要ない。診断書さえ貰ってしまえば、その先は自由だ。逆に手術をすることは書類上で性別を変えるよりも大変で、診断書の種類によっては性別適合手術を受けられないこともある。医師の診断といってもお粗末なもので、2回ほど医師と話すだけで、何年もかかるような慎重なプロセスは踏まない。体がホルモン治療に耐えうるかを判断するための血液検査は必須だが、もちろん本人の気持ち以外の根拠はない。 英国の性別変更には2種類あって、公的書類上の性別を変える「表面

          トランスジェンダーというカルト⑨ 性別変更

          トランスジェンダーというカルト⑧ ジェンダークリニック

          英国には国営の医療制度National Health Service(NHS)がある。移住した人はもちろん、学生やワーホリとして現地に住む長期滞在者もその対象で、医者にかかりたければ、自分の住む地区に登録済みの診療所General Practice(GP)に予約を入れなければいけない。どんな問題だろうが、最初に診療所のGeneral Practitioner(一般内科医)に診てもらう必要がある。GPで解決しなければ、そこからようやく専門機関や専門医に紹介状されるが、NHSには

          トランスジェンダーというカルト⑧ ジェンダークリニック

          トランスジェンダーというカルト⑩ ホルモン治療

          めでたく診断が下りた暁には、「本来の性別」になるべくGender-Affirming Hormone Therapy(性別を肯定するホルモン治療)が始まる。MtFの場合、女性ホルモン(エストロゲン)の増加とテストステロン(男性ホルモン)の抑制を促すため、内服薬や注射、パッチなど様々な方法があるが、元夫は最初は注射とパッチを併用し、その後内服薬とパッチに切り替えていた。 女性ホルモンを投与し始めると、男性にはない身体的特徴が現れ始める。乳房の発達、筋肉量の低下、脂肪がつきやす

          トランスジェンダーというカルト⑩ ホルモン治療

          トランスジェンダーというカルト⑦ 化粧

          元夫はカムアウトからすぐに女装をして外出することはなく、最初は休日に家に籠もってひたすらメイクの練習をして自撮りをしていた。メイクは特にアイラインにこだわりがあったらしく、描いては落として、自分が納得するまで描き続けていた。こちらでは日本のナチュラル風メイクはあまり見かけず、アイラインをばっちり決めてファンデーションで陶器のようなマット肌にして、唇をぷっくり強調するしっかりメイクか、ファンデはしないでマスカラとリップだけの最小限のメイクのどちらかに二分されているような印象だ。

          トランスジェンダーというカルト⑦ 化粧

          トランスジェンダーというカルト⑥ 着飾る

          私は夫婦の形というものを、少々楽観的に考えすぎていた。今振り返ると、どう考えても楽観的になれる状況ではないにも関わらず、それでも私はなんとか少しでもポジティブに考えようとガムシャラに脳みそを動かしていた。精神的に追い詰められると、それこそ心は火事場の馬鹿力的な働きをするのだろう。しかし、元夫が女性物のパジャマを着て寝室に入ってきた時、私は決定的に彼の女装を受け入れることは無理だと確信した。 テレビでトランスジェンダータレントが親に縁を切られたと話すたびに、私はそれほどのこと

          トランスジェンダーというカルト⑥ 着飾る

          トランスジェンダーというカルト⑤ 理解とは

          私は元夫の言う「女になる」の意味がよく分かっていなかった。今でもよく分かっていない。私が生まれたときには既にMtFのトランスジェンダータレント、女装家のゲイタレントやドラァグクイーンはテレビに多く出ていたが、ゲイの場合、性別違和はないはずで、彼らのジェンダーは女装とは関係ない。今はどうか分からないが、私が日本にいたころはよくトランスジェンダータレントの人生を紹介する番組が放送されていた。昔からノンフィクションが好きな私にとって、彼らの人生は非常に興味深くて、今でもその内容をよ

          トランスジェンダーというカルト⑤ 理解とは

          トランスジェンダーというカルト④ 娘が欲しかった

          では元夫の母親はどうだったかというと、平凡な部類ではなかったと思う。初めて母親に直接会いに行ったとき、一人暮らしの割にはあまりにも立派な家に住んでいたことに度肝を抜かれた。屋外のプールに、プロが管理しているであろう綺麗な庭、大理石の床、部屋の数は少なくとも五つはあるだろう。思わず元夫に彼女の収入源を聞いたが、彼も知らないらしい。のちに母親本人から聞いた話では、離婚する前は一緒にブティックホテルを運営していて、彼女の元夫の現妻は彼らの従業員だったという。それが直接の原因で離婚に

          トランスジェンダーというカルト④ 娘が欲しかった

          トランスジェンダーというカルト③ 生い立ち

          私は元夫が女性を名乗り出した原因は、彼の生い立ちにもあるのではないかと考えている。 彼はもともと孤児で、裕福な家庭に養子として引き取られて育った。父親は馬とサッカーと金勘定が好きな典型的なイングランド人で、若い頃は仕事の都合でアジア圏で過ごす時間もあったらしいが、そこで出会った元夫の母親と数年にわたる泥沼離婚裁判やそれに付随する財産分与で、元夫が成人を迎える頃にはすっかり外国人嫌いの極右白人になっていた。昔から金儲けは得意だったようで、元夫を上流家庭がごろごろいる寄宿制の小中

          トランスジェンダーというカルト③ 生い立ち

          トランスジェンダーというカルト② カムアウト

          元夫に女性になりたいと言われるまでの経緯は、実にくだらないものだった。英国では毎年各地で日本の文化イベントが開催される。規模は大小様々だが、なかにはアニメやコスプレに寛容なところもある。私と彼は前年に行った大きめのイベントが楽しかったから今年も行こうと話をメッサージ上でしていた。その中で、彼は自分の好きなアニメのコスプレに挑戦してみたいと私に話した。彼は前から思いつきで、自分の願望を口に出すタイプで、私はそれがずっと頭にきていた。ゲーム配信者になりたい、と言って実際に配信して

          トランスジェンダーというカルト② カムアウト

          トランスジェンダーというカルト①

          配偶者や恋人に違う一面があるとわかったとき、他人は決まって「なぜ気づかなかったのか」と言う。元夫から「ずっと女性になりたかった」と言われたときは、私もそう思った。なぜ気づかなかったのだろう、と。 そのとき、私は必死で考えた。たしかにそう言われてみると、彼に違和感を覚える場面はいくつかあった。彼は生粋のイングランド人で、大学を卒業して一般企業に就職した一般人だったが、私と出会うまでは、一度も恋人がいたことがなかった。30歳手前で恋人がいたことがないと聞いたときは少し驚いたが、

          トランスジェンダーというカルト①

          名誉男性だったころ

          ※この記事には性暴力が含まれます 私が直接的な性暴力、レイプの被害に遭ったのは19歳のときだった。 ありふれた話で、バイト先の20歳年上のフリーターに片思いをしていた私はその人の家に行った。最初はバイト先に近いお店でご飯を食べようという誘いだったが、直前になってその人の家で手料理を振る舞ってくれることになった。私はその人のことが好きだったし、そういう関係になってもよかったので、その夜は彼の家に泊まったが、私は途中でやっぱりやめて欲しいと言った。無理やり続けることはなかった

          名誉男性だったころ