トランスジェンダーというカルト11 月経
女と生理は運命共同体である。ミニピルと出会うまでは、これがあと何十年も続くのかと定期的に絶望していた。「女ならみんな生理はあるからしょうがない」「生理痛があるのは当たり前」日本にいたころは、そういう諦め論で自分を納得させていた。だが、生理に選択肢がある国に来た途端、自分の考え方は社会によって作られていたものだと気づく。その気づき以降、私の生理に対する考え方は大幅に変わったと思う。
元夫は私が生理痛で横になっていると、薬や湯たんぽを持ってきたり、私が担当の家事を代わりにするなどしていた。しかし、生理前のイライラや気分の落ち込みには懐疑的だった。彼が直接言葉にしたことはない。だが、私はずっと近くにいたので、彼がいかに「女性特有のホルモンバランスの乱れ」に疑問を抱いていたかを知っている。
昔、彼の友達を巡って大喧嘩をしたことがある。私が知らないところで彼が友達に私との関係で起こったこと、喧嘩の内容などを横流しにして助言を求めていたことに私はブチ切れて、その友達に直接問い詰めた。彼女は「助けようとしただけなのに、もう話すのはやめよう」と元夫に言ったらしい。しばらくするとその友達の彼氏経由で「このあいだはごめん。月のもののせいで気分が落ち着いていなかった。」と元夫に謝罪があったが、彼はその理由に釈然としていない様子だった。その様子に、私は自分が生理前で調子が悪いと言っていた時も、こんな感じだったのかと想像した。
私の場合はPMSではなく、PTSDによる心の不調だったのだが、それでも生理前はいつも腸の調子が悪く、普段よりカリカリしていた。日本で心療内科に数年通うも合う薬は見つからず、こちらに来てメンタルに効果があり、かつ依存性が少ない薬を見つけるまで時間がかかった。日本にいるときは特に不眠・気分の浮き沈みが酷かったので、それに付き合わされたせいでPMSに対して懐疑的になっているのかもしれない。そう考えると、自分にも責任がある気がした。
ホルモン治療を開始して数ヶ月した頃、彼は思い詰めた表情で「自分の中で『生理』がきたと思う。気分の浮き沈みが激しい。」と私に言った。正直、返す言葉もなかった。もちろん、ホルモン治療をしたからといって子宮が生えてくるはずがない。体は当然そのままだ。男性の体で生成される男性ホルモンを抑えて女性ホルモンを無理やり投与すれば、そりゃ感情もおかしくなるだろう。生き物としての自然な体の働きを止めていながら、代償がないとでも思ったのだろうか?遺伝子組み替えされた野菜しかり、体格差が大きい者同士で交配された動物しかり、人工的に操作されたものが利点しかないことがあっただろうか?
元夫はカムアウト後、今後の不安を口にする私に「女になれば今までとは違って活発になる。今までは体がだるくて仕事の後も家に籠もってばっかりだったけど、今はそうじゃない。本来の自分を見つけたから、一緒に買い物だって行きたいし、もっと外に出たい。」と言ったことがある。もちろん私は「こいつは何を言っているんだ」状態だったが、もう現実に起こっていることが散々すぎて、反論する気力すら残っていなかった。いつか目が覚めるから今は黙っていよう。そうやって歯を食いしばっていた。
ジェンダー医療は綺麗事しか言わない。人体改造で利益を得ている側は「ジェンダーを肯定する」「包括的」「多様性」「本来の自分」などと聞こえの良い言葉で揺すりをかけるが、一度でも彼らが彼らの「医療」がもたらす社会的影響を声を大にして伝えたことはあっただろうか?元夫はジェンダークリニックの医者とビデオ通話を2回しただけで、1000ポンド以上むしりとられた。性同一性障害はNHSで診断されず、事実上プライベートのみの医療となっている。そのプライベートのジェンダークリニックすらキャンセル待ちになっているところがある。全国で何万人もの人が自分の望む診断を求めて、ジェンダークリニックを利用する。このビジネスはまさに金の成る木であり、無限に湧き出る資金源だ。数値に出る医療では矛盾が出てきてしまう。
ホルモン治療前に受けた血液検査の結果が出たとき、元夫は「テストステロンの数値が男性にしては低かった」と嬉しそうに話していた。だからなんだというんだ。元々女に生まれる予定が急遽男になったとでも思っているようだった。生物医学を専攻していたくせに、ホルモン値が変動することすら知らないのかと呆れたが、どうやら医療側はどうにかしてジェンダー医療に物理的な証拠をくっつけようとしているらしい。あの手この手で差別はいけないだの、自殺者が増えるだの道徳的配慮を駆使して生物学を覆そうとしているが、すべては苦し紛れの口先だけの言い逃れだ。だが、自己肯定感が低かったり、人生が上手くいっていない理由を見つけたい人は信じてしまうのだろう。
元夫にとって月経は気分の浮き沈みを説明する、つまり言い訳のツールだった。彼は真剣だったかもしれない。女であることの象徴でもある月経という現象を口にすれば女に近づける、と。それでも私は同情するどころか、不快になった。そんなに生理が欲しければ、股間にぶら下がっているものでもチョン切って出血していればいい。その出血だって何十年も定期的に続くものではない。それ以前に、出血なんかで女の人生がいかに生理に振り回されるかなど、「生理のない性別」に理解できるものか。
この彼による言葉の侮辱には、まだ続きがある。
(次の記事に続く↓)
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