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ゲンバノミライ(仮)

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被災した街の復興プロジェクトを舞台に、現場を取り巻く人たちや工事につながっている人たちの日常や思いを短く綴っていきます。※完全なるフィクションです。実在の人物や組織、場所、技術な…
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#街づくり

第76話-1 語り合いたい野崎さん(AI編-3・上)

第76話-1 語り合いたい野崎さん(AI編-3・上)

野崎正年は、半世紀以上も前に新卒でゼネコンに就職した。現場一筋の人生と言っていいと思う。
40代半ばに管理職として支店に上がり、50代に経営陣となり現場から離れた時期はあったが、海外の金融機関の破綻に端を発した世界的な不況で売り上げが落ち込んで、責任の押し付け合いからリストラを始めた時に、即座に手を上げてゼネコンを去った。

「経営陣がいの一番にリストラの波に飲み込まれてどうするんだ」「野崎に責任

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第71話 墓守の育夫さん

第71話 墓守の育夫さん

「この街で新しい墓地が開かれる姿を見るのは、私は生まれて初めてです。
それって、やっぱり悲しいですよ」 

例年よりも早く春が訪れたようだ。海風がなびいてくるが、冬場の突き刺さるような冷たさはなくなり、むしろ、心地よさを運んでくる。
この街で石材店を営む岡本育男は、目の前に広がったまっさらな平地をゆっくりと見渡した。
ここに、これから墓石が建ち並んでいく。

今日は、この街の復興事業を一手に担うコ

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第69話 ワイヤーソーの舞さん

第69話 ワイヤーソーの舞さん

「ほら、見てください! きれいな断面。ぎっしりと詰まっています」

コンクリート構造物を解体する会社で働く梶原舞は、構造物の切断作業が終わった後に現れた表面を、必ずじっくりと見定める。

「いい仕事してましたね!」

隣にいる現場監督の山内衛にそう話し掛けると、「おうっ」と応じた。
照れているのか目を合わさないが、目元は緩んでいる。

「中がスカスカだったら、どうしよう…。その時は黙っていてくれよ

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第68話 親不孝な高山さん

第68話 親不孝な高山さん

「レベルはオッケー?」
「一番奥がもうちょい下かな」
「これくらい?」
「もう一押し。もうちょい。
はい、オッケー!」

高山伸也はユニットバスの施工を専門とする職人だ。
決められた高さにユニットバスの床を据え付けて、水平器で傾斜をチェックした。定規のようなアルミ製フレームの中央に液体が詰まっているガラス管があり、気泡の位置と目盛りを見ながら、水平かどうかを確認する昔ながらの測定器だ。高山はデジタ

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第67話 海を望む和也さん

第67話 海を望む和也さん

「空き地だって希望だ」。
森本和也は、このキャッチコピーに触れた時、頭に血が上った。
心の奥底から憤りがわき上がってきた。

和也は、海辺にあるこの街の小さな集落で生まれ育った。
2階の自分の部屋から、海を見るのが好きだった。海が怖いなんて、あの日まで知らなかった。

結婚前に、妻になるさくらを初めて連れてきた時に、「私もこの景色が好き」と言ってくれた。だから、生まれた娘には、海からの希望とともに

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第65話 わびおの小田君

第65話 わびおの小田君

「大丈夫ですか!! どこにいるんですか!!」

あの災害で甚大な被害を受けた海辺の街の復興プロジェクトで、下請け建設会社の土木技術者として働く小田文男は、現場に出て陣頭指揮を執っていた。そこに、専務である久保拓也から電話が入った。

「事故った。すまない。
田辺さん…、CJVの田辺さんに申し訳ございませんと、それだけ伝えてほしい。頼む…」

か細い声で言われたところで、ガタッと音がした。

携帯電

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第64話 ジエンドの久保専務

第64話 ジエンドの久保専務

ああ、俺の人生終わった…。

ゆっくりと目を開く。顔の前面にはエアバッグが広がっている。フロントガラスが派手に割れている。
頭が痛い。顔の右側で血が滴り落ちている。どこが切れているのかは分からない。

「大丈夫ですか!」

ドアの外から人の声が聞こえる。
シートベルトを外して、ドアを開けて、外に出て…。
やるべき事はうっすら思い至るのだが、体が動かない。

ああ…、痛い。苦しい…。

力が抜けてい

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ゲンバノミライ(仮)第45話 新人の海斗君

ゲンバノミライ(仮)第45話 新人の海斗君

「そろそろ始まります」
鳶・土工会社の新入社員である西野海斗は、この日のために新調したネクタイをきゅっと締め直した。スーツも新しいものを買いそろえた。作業服の時以外はビシッといこう。各地の同期と話して、そう決めたのだ。

画面越しに、あの災害からの復興街づくりが進む自治体で首長を務める柳本統義が映った。

復興街づくりを一手に担うコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)に関係するすべての

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ゲンバノミライ(仮)第37話 レンタルの豊さん

ゲンバノミライ(仮)第37話 レンタルの豊さん

頼まれたらすぐに持って行く。終わったら回収して、手入れをして、いつでも再出動できるようスタンバイする。シンプルだが、求められているのはそういうこと。ニーズを間違いなく受け止めることが何より大事。

企業向け資機材レンタルサービス会社で働く清水豊は、入社以来、そう教わってきた。伝票形式だった在庫管理を電子化して、稼働履歴を担当者間で容易に共有できるようシステムを構築したのは、顧客対応のスピードと正確

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ゲンバノミライ(仮)第36話 式典担当の吉住主任

ゲンバノミライ(仮)第36話 式典担当の吉住主任

無事に終わった。皆さんが、笑顔で帰っていった。
決まった流れでいつも通り。そうだけど、同じことの繰り返しではない。それぞれの人にとって、かけがえのない一度きりのこと。一生の中で、最初で最後の人も多いはず。だから、絶対に気が抜けない。
スムーズに進行し、気がつけばあっという間に終わっていた。それくらいがちょうど良い。

式典関連サービスを手掛ける企業で働く吉住学は、主任への昇進と合わせて、あの災害で

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ゲンバノミライ(仮)第34話 地盤改良の康平君

ゲンバノミライ(仮)第34話 地盤改良の康平君

支えたいのはあなたの未来
強固な地面をつくっています!
CJV 地盤改良&杭打ちチーム一同

復興街づくりの中央エリアのゲート近くにポスターが張り出された。
地盤改良の専門工事会社の一員として、復興の工事に従事する三橋康平が作成した。
大きな文字のバックは、機械撹拌(かくはん)工法に用いる大型の重機が林立する写真だ。

「良い出来じゃない! 彼女に伝わるといいね」
後ろから、声を掛けられた。この街

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ゲンバノミライ(仮)第31話 広報担当の相馬課長

ゲンバノミライ(仮)第31話 広報担当の相馬課長

きれい事ばかりで良いのだろうか。
自分の会社をPRするのが仕事なのだから、良いに決まっている。
もちろんそうなのだけど、腑に落ちない。

本社の広報部門の課長として社内報制作を担当する相馬駿助は、悩んでいた。

あの災害からの復興街づくりが次号のテーマ。企画の中心には、復興プロジェクトを包括的に手掛けるコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)の取り組みを据えた。
同じゼネコン社員である中

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ゲンバノミライ(仮)第30話 道路屋の友哉くん

ゲンバノミライ(仮)第30話 道路屋の友哉くん

すべすべとした滑らかな表面。太陽の光が当たると、てかてかと輝くように見える。

美しい。
きれいだね。
そんな風に声を掛けたくなる。

でも、それだけではない。
年月が経てば、何度も何度も踏みつけられて、汚れてきたり、ブツブツが出てきたりもする。それは致し方ない。
生まれたてのきれいな姿も好きだけれど、頑張ってきた証が年輪のように刻まれた表情には、別の美しさがある。
頼もしくも誇らしい。

何十年

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ゲンバノミライ(仮)第28話 境界線上の森田社長

ゲンバノミライ(仮)第28話 境界線上の森田社長

ようやく最上階まで立ち上がってきた。設備や内装の工事はこれからなので完成にはまだ時間はかかる。最初の1棟ができても、周辺は更地のまま。だが、復興に進んでいることが見えてきただけでも大きな進歩だ。

森田真知子は、復興プロジェクトを包括的に手掛けるコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)の下請企業で社長をしている。3代目続く小さな総合建設業の会社として若くして家業を継いだ。社長としての肩書

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