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筋肉図書館

街ブラ中の女性。
 
「あれ?
 
 ここ…
 変な建物になってる。
 
 ここって元々、何だっけ?
 ……忘れた。
 
 久しぶりに来た場所って、
 更地さらちになったり、
 建物変わると元が思い出せないよね。
 
 でも、すごい重厚な門構もんがま…。

 この建物…
 何か、写真映えしそう。
 
 営業時間中みたいだから、
 ちょっと、入ってみようかな。
 
 ………
 って、開かない。
 
 これ、自動じゃないの?
 この扉、だよね?
 
 映画ならゴゴゴゴッて、
 音立てて開くやつでしょ、これ?
 
 え?!
 取っ手がある!!
 
 これって、手動なの!?
 
 私…いけるかな……
 
 ふーーーーーーーーん!!
 ふぃーーーーーーーん!!
 
 こんなの絶対無理。
 
 自分の倍もある石の扉って、
 誰も開けらんないでしょ!」
 
ゴゴゴゴッ!!
 
「開いた~!!
 しかも奥に~!?
 スライドじゃないんだ~!!」
いらっしゃいまっする
 
「あっ、どうも…うわ~っ!!
 
 マッチョ!!
 マッチョマッチョ!!
 
 マッチョ、いっぱいいる~!!
 
 何ここ!?
 トレーニングジム!?
「ようこそ、お客様。
 我が図書館へ
 
「図書館!?
 ここが?!」
「はい、そうです」
 
筋トレグッズ
 ザバス置いてるようにしか、
 見えませんけど」
「最近オープンしたばかりの、
 筋肉図書館です」
 
「全然、図書館には見えないけど」
「お客様、どうします?
 まずは…
 トレーニングですか?
 それとも読書ですか?

 
「やっぱり、ジムじゃん!!」
「いえいえ。
 トレーニングはあくまで、
 読書のためのもの
でして、
 読書をメインでやらせて頂いてます」

「ほんと~?
 
 しかも、本は見当たらないし…
 見るからにジムなんだけど。
 
 本当に読書できるんですか?」
「ご安心下さい」
 
「まあ、そこまで言うなら…
 って、ちょっと待って!
 ここ有料ですか?」
「いえ。
 こちらは市立筋肉図書館ですので、
 どちらも無料です」
 
「どっちも!?
 トレーニングも、読書も?」
「はい」
 
「それはスゴいかも。
 でも私は、
 トレーニングにあんま興味ないから、
 読書でいいかなぁ」
はい~!
 読書1名入りましたぁ~!!

 
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
 
「では、こちらで、
 お好きな本をお選び下さい
「うわっ!!
 気付かなかったけど…
 これ壁一面に本の名前がきざまれてる
 
「はい。
 ずかしながら蔵書数は少ないのですが、
 素晴らしい作品を取りそろえております」
「そうなんですね…
 どうしようかな~。
 
 私、あまり読書しないんですよね~。
 でも、せっかくだし…
 ………
 あっ、これ知ってる!
 
 ぐりとぐら!
 
 子供の頃によく読んでた。
 この絵本お願いしても……」
 
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
 
「みなさん…
 何でテンション低いんですか?
「お客様。
 誠にすいませんが…
 もう少しページ数の多いものを、
 お願いできますか?

 
「ページ数?
 何かよくわからないけど…
 ………
 そうだなあ…
 
 じゃあ…
 これはどう?
 
 不思議の国のアリス」
不思議の国のアリスゥ~!!
 入りましたぁ~!!

 
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
 
マッチョな集団は、
奥へと駆け足で消えていった。
 
「では、お客様はこちらのお席へ」
「はあ…」
 
「しばらくお待ち下さい」
「?」
 
1分後。
 
「今日もキレてるよ~!!」
「あいっ!!」
 
「筋肉バリバリ~!!」
「ういっす!!」
 
「よっ!肉の子!!」
「うりゃ!!」
 
ひとりの男性が何かをかつぎ、
その隣で声援を送るもうひとりの男性。
 
「人の究極型~!!」
「うおりゃ!!」
 
「あなたはひき肉ですか?!」
「筋肉ですっ!!」
 
「肩メロン!!
 いや、肩スイカ!!」
「あざっす!!」
 
「いけ~!!
 NGリストバンド~!!」
「ジャ肉問題~!!」
 
「肉も出てるし、声も出てるよ!!」
「4年ぶり~肉出し応援~!
 あざ~っす!!」
 
(な、何が、おこなわれてるの?!)
 
ドシーーーーン!!
 
女性の目の前に、
全身、黒光りの男性が、
巨大な石板を置いた。
 
「不思議の国のアリスゥ~!!
 1ページ目~入りましたぁ~!!」
 
「おつかれさまっする~!!」
「おつかれさまっする~!!」
「おつかれさまっする~!!」
「おつかれさまっする~!!」
 
「あの~これって?」
こちらが当館の本になります
 
「この石板がですか?!」
「はい。
 当館は持続可能な図書館として、
 SDGsを推奨すいしょうし…
 防災や書物の維持いじの観点から、
 有名書籍を石板化●●●しております

 
「え゛え゛~!?」
「さあさあ、
 よろしければ読み進めて下さい。
 次々と彼らが運んできますので
 
あせるな!!
 慎重に運ぶんだ、肉弾頭!!」
「ういっしゅ!!」
 
「あの~
 不思議の国のアリスって、
 全部で何ページありましたっけ?」
「確か…200ページくらいかと…
 あっ、お客様失礼しました。
 
 この後、ご予定ですか?
 
 でしたら、
 貸し出しも可能ですが
 
「か、か、貸し出し!?」
 
「いいぞ~!!
 買い物仕立ての冷蔵庫!!」
「パンッパンッです!!」
 
「いいえ!!
 ここで読ませて下さい!!」
 
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
「ありがとうございま~っする!!」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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二月小雨
お疲れ様でした。