1人、本を携えて長野の大自然へ。一人旅の醍醐味はここにある。
東京はいまだに少し暖かく、時には半袖でも過ごせてしまう日もある。
そんな11月初旬。
平日の休みをとって長野まで来ている。
上高地、白馬へと足を伸ばした。
あいにくの天気予報にもかかわらず晴れ間が出てきた。
ちなみに私はかなりの晴れ男であり、ここでも晴れとなった。
上高地、白馬は、秋を深めている。
気温は1桁で、朝晩はかなりの冷え込み。
冷たい風が頬や手の肌を刺す。
少し立ち止まれば、悴んでしまうほどの寒さ。
そんな中飲むホットコーヒーが美味しい。
冷たさと温かさの絶妙なバランスがどこか気持ち良さでもある季節になっている。
すっかり山々は秋の色に身支度をし、赤・黄・緑といくつかのグラデーションを見せている。
車を走らせ音楽を聴きながら、時々窓を開けて空気を吸う。
肺の奥まで新鮮でひんやりとした空気が漂う。
外に身を置いているだけで、リフレッシュできてしまう。
自然とは偉大なものだ。
観光地を訪れ、時間を過ごした後はホテルへ。
15:00のチェックインに向けて車を走らせる。
そう、この旅の目的はゆっくり過ごすこと。
どこかへ出かけた時は予定を詰め込み、行ける限りの場所に訪れるのが旅の醍醐味である。
しかし、一人旅ではぜひとも予定を入れない旅というのも選択肢として欲しい。
自然の中で景色を見ながらぼんやりすること。
ひんやりとした空気に体の熱を感じること。
ホテルでだらだらと過ごすこと。
これらは一人旅の醍醐味なのだ。
誰にも文句も言われない楽しみ方の一つだ。
時間を気にせず、満足するまでいられる。
最高の瞬間。
そして、ホテルでダラダラと過ごす時は本も携えて欲しい。
最近のホテルや温泉宿ではライブラリーを設置しているところが心なしか増えてきたように思う。(完全に個人主観、自分の予約するところがそうな気がしています。。笑)
やはり、時間をのんびり過ごすには本の持つ魅力は計り知れない。
と感じている。
1人のんびりの部屋でベッドに横になりながら読む本はかけがえのない時間の過ごし方だ。
時にはそのまま寝落ちしていることもある。
そういう過ごし方も含めて最高なのだ。
時間を贅沢に使う感触を味わってみて欲しい。
どんな見かけの充実よりも体の中心が充ちてくる。
喧騒の中で過ごしていると時間があっという間に過ぎてしまう。
そんな中で過ごしている自分を休めてあげて欲しい。
自然に癒され、ホテルに癒され、時間に癒される。
そうして、また活力が少し湧いてくる。
そんな過ごし方をぜひ提案したい。
私は、長野の大自然溢れる場所で『海底二万里』を読んだ。
山の中で読む太海の大冒険の話である。
ヴェルヌが描いた、繊細かつ大胆な描写により想像は無限に広がり、いつしか深海に想いを馳せている。
同じ時間に山と海の大自然を満喫。
大冒険に心が躍った。
1800年代後半に書かれたとは思えないほどの詳細な記載であり、一部事実とは異なるものの概ね今の常識からも離れていない。
ヴェルヌの情景描写に脱帽である。
海底二万里の感想はまた別の記事にて書きたいと思う。
しかし、ヨルシカの『ノーチラス』のモチーフになったストーリーで、読破後の音楽は身に沁みた。
以前、suisさんが『深い眠りから目覚める話』で忘れられない(原文とは違うと思います。ニュアンスです。笑)とおっしゃっていたが、まさにその通りだった。
ノーチラスの歌詞がより一層深く心に突き刺してくれる。
大自然の中に身を置いて、山々が風で蠢く音、小鳥達の囀り。
そういった山の中で織りなす自然音に合わせて、奏でられるノーチラスの歌詞はなんて最高なんだろうか。
そう感じた。
大好きな曲がより一層、深みを増して好きになる。
選ぶ本はなんでもいいと思う。
私のように全く逆に位置していそうな物語を選ぶのも良いと思うし、その土地にあった本でも良い。
大切なのは時間を贅沢に使うことだ。
一人旅、自然、本の掛け算はそれらを提供してくれる。
私は冬の東北、北海道に行き、雪景色を見たいと密かに計画を立てている。
その際には川端康成の『雪国』を手に携えて行ってみたいと思う。
物語の厚みはどう変わるのか?楽しみである。
土地の持つ魅力が際立つような、そんな感覚を得られたら嬉しい。
少し期待を寄せて次の旅に想いを馳せている。
雪国でも心を温めるような出会いになりますように!