河伝

やっぱりギターが一番

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裸のランチとフロイト

人間、バロウズへの興味  ほとんど小説の類を読まないが好きな小説がある。それが「裸のランチ」だ。内容はというと脈絡がなく、場面もモラルもどこかへ飛んで行くような荒唐無稽なものだ。しかし、内容が無いとは思わない。むしろ、この本を通して著者であるウィリアム・バロウズの内面に接近することができる。そこに意味を見出だせる。  なぜ著者に接近する必要があるかと言えば、彼は筋金入りのジャンキーだからだ。まあ、好奇心だ。薬物依存状態下で書かれる文章である事を知った上で読むと興味深い。

    • TOKONA-Xによるヴェイパーウェイヴ(?)

       ヴェイパーウェイヴ(Vaporwave)とは、2010年代初頭に始まった主に80年代から90年代のポップスをサンプリングしてリバーブというエフェクトをかけた音楽である。ヒップホップのサンプリングと比べたら原曲がそのまま残っている印象、姿煮みたいな感じ。  原曲よりも遅く再生する事によるゆったりした雰囲気や、そこにかけるエフェクトにより音の輪郭がぼんやりするという点からVapor(蒸気)という名が与えられた。確かに風呂感はある。  タイトルにはTOKONA-Xと書いたが正確

      • 音楽好き界隈のギスギス、有識者の批評と余波

        細田成嗣氏、「にほんのうた」に指摘  みのミュージックこと、みのさんの「にほんのうた」が発売してどれくらいだっただろうか(1ヶ月やそこら)。旧Twitter(現X)でちょっとした動きがあり、それに呼応するような動きも現れた。「AA 五十年後のアルバート・アイラー」の編集者であり、批評家の細田成嗣さんが「にほんのうた」に疑問を呈したのだ。(以下敬称略)  細田成嗣の書評を見て、自分を恥じた。前回の記事で自分なりの疑問を書いたのだが、やはりプロはレベルが違う。恥ずかしながら

        • みのミュージックの「にほんのうた」を読んだ

          みのミュージックを結構見ている  見始めてからどれくらい経っただろうか。最初は「YouTuberがなんか音楽語っとるな」くらいのもんで、「なんぼのもんじゃい」と斜に構えながら動画を見始めたのがきっかけだった。  まぁ〜〜〜、詳しいね。その時見た動画は好きなアルバムを語る回とかだった。そこから一目置く事になる。  見始めたちょっと後にキラーコンテンツ「賛否両論」が始まったと記憶している。印象的なものだと「ジミーペイジはギターが下手?」という挑発的なタイトルの動画があっ

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          音楽におけるパクリ論争は今となっては不毛かもしれない

           音楽においてパクリという言葉は本当にパクっているものより、難癖や野次として用いられる事の方が多いと漠然と思う。確かに似たような音楽はあるといえばある。しかし、そう安易に「ちょっと似てる!パクリだ!」としてしまうのも気が早すぎる。  おそらく音楽を聴けば聴くほど、安易に「パクリだ!」と言えない事に気付くだろう。俺自身、中高生のとき「あれパクリちゃう?」みたいな事は深い考えもなく言っていたような気がする(都合の悪い記憶はうっすら)。知らなければ知らないほど、安易にそういう事を言

          音楽におけるパクリ論争は今となっては不毛かもしれない

          匿名性と、名前に名前っぽくない名詞をつける流れ

           思いつきと勢いなので粗勘弁。  M-1グランプリ2023、優勝したのは令和ロマン。お笑いについて語る気はないが、気になったのはこの二人の名前だ。高比良くるま、松井ケムリ。「くるま」と「ケムリ」、どちらもあまり名前に使われる名詞ではない。いや、今となっては言い切れない。  芸人に限らず音楽家にもその類の名前が既にいる。思いついた人だけでも挙げてみると、長谷川白紙、尾崎世界観、小林私、鈴木もぐら、水川かたまり、パソコン音楽クラブ、食品まつり、家主。  ちょっと範囲が広すぎて並

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          「traveling」のMVの宇多田ヒカルのリズムの取り方

           宇多田ヒカルの「traveling」は子供の頃に音楽番組のランキングでよく目にした映像だ。その頃から気になっていた事があり、最近その理由がわかったような気がした。その気になっていた事がタイトルに書いてある事だ。  該当のシーンは最初のサビで横からのアングルで後ろに諸々を連れ、音楽に合わせて首を縦に振っているところ。それだけでは普通の事に思えるが、何故か気になった記憶がある。今、凄くフワッと書き始めている。  音楽を聴くときにどのように首を振るのが正しいとかはない。しかし、

          「traveling」のMVの宇多田ヒカルのリズムの取り方

          君は人のために死ねるか

           という曲がある。宮崎駿の映画ではない。  これは杉さまこと杉良太郎さんの曲だ。初めて聴いたのはいつだったろう、結構前だ。改めて聴き返してみると驚いた。すごい変拍子なのだ。前々から歌いにくい曲だと思っていたが改めて聴くと、それはもう、予想以上に複雑だった。少なくとも俳優が劇伴で歌う曲の拍子とは思えない。踊らない方の「大捜査線」の主題歌だ。見たことないけど。  基本は4拍子なのだが途中で3拍子になったり、2拍増える部分やらがあり非常につかみにくい。  具体的に言うと「戦って戦

          君は人のために死ねるか

          YouTubeからおすすめされる絶妙な音楽たち

           YouTubeで音楽を漁る事は多い。取り敢えず「full album」と検索にかけてみる。検索履歴に蓄積された残骸により好みの傾向がある音楽へ誘われる。選んでいるようで選ばされている。そしてふと気付けばよく知らない日本のアーティストの作品が何百万再生を記録していたりするのを横目にする。コメント欄を覗けば日本人は少数派だと知る。  個人的にはYouTubeの選曲センスに一定の信頼を置いている。何なら音楽を紹介して欲しいが為に音楽以外の動画はシークレットタブで見たりして住み分け

          YouTubeからおすすめされる絶妙な音楽たち

          音楽のジャンルを分類する際のややこしさ

           「あれはロックだ」「いや、ロックではない」、音楽好きの中でよくある会話だ。「いや、本当の音楽好きは〜」とかは勘弁してください。何にせよ音楽をジャンルで括るのは難しい場合がある。しかしなんで。  もちろんわかりやすくまとめやすい勢力がいるからこそジャンルという分類は成立しているのだけど、音楽はジャンルの枠を跨りながら発展していく事が多いので(というか基本的にそうか)、どうしても跨り中の分類しにくいアーティストが出てくる。  もっと基本的な事を言えば同じアーティストでも違うジ

          音楽のジャンルを分類する際のややこしさ

          サブスクを解禁しないアーティスト

           サブスクを解禁しないアーティストは一定数いらっしゃる。もちろん解禁してくれた方が便利でありがたい。とはいえ不便だからとむやみにそのスタンスにケチをつける気はない。  サブスク、それらはここ10年、いや5年くらいで広く普及した印象だ。最初はサブスクを解禁していなかった有名アーティストたちもここ2、3年で次々と解禁しだした(漠然とした記憶だけで語っています)。名前を挙げ始めるとキリがない、そう言いながら名前を挙げるのを面倒くさがっています。 未解禁だからフィジカルへ  あれ

          サブスクを解禁しないアーティスト

          ギターにおけるイップス

           イップスと言えば野球でよく聞く「ボールの投げ方がわからなくなる」症状だ。当たり前のように出来ていた事が過度な緊張によって出来なくなってしまうという厄介なものだ。  自分はギターを弾いているが、過去になりかけた事がある。自分の経験を元にギターにおけるイップスを振り返ってみる。 イップスの発生  おそらくギターでイップスになる人は速弾きの練習をしている人に多いのではないだろうか。自分の場合「地獄のメカニカルトレーニングフレーズ」で練習している時、それは起こった。  そのフレ

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          THE FIRST TAKEのピッチ補正とスレイヤーズのAI疑惑

          ピッチ補正が普通になりつつあるものの  THE FIRST TAKEがピッチ補正やらで何やら言われているという事を知った。ピッチ補正の件は今年の5月頃の記事が多かったので、その時に話題になっていたようだ。なぜ今頃知ったのかと言うとKEYTALKのベースボーカルの首藤さんの発言がニュースになっていたからだ。  正直意外だなと思ったのはピッチ補正の認知度の高さだ。この件でコメントする人々の印象は割りと冷めた感じで、「ま、そんなもんでしょ」というスタンスの意見がよく見られた。中

          THE FIRST TAKEのピッチ補正とスレイヤーズのAI疑惑

          刺青があれば悪人か

          偏見と経験則  「偏見」という言葉は悪いイメージで用いられる言葉だ。差別的な物の見方に対して使われる。一方で「経験則」という言葉があるが、これはネガティブなイメージでは用いられないし、むしろ良いイメージかもしれない。誰の経験則であるかにもよるが。ちなみにどちらも個人的なものと集団的なものがあるように思う。  偏見と経験則の共通点は、どちらも収集された情報を元に見解を生み出すという点だろう。そこに悪意を感じたら偏見と捉えられる。「刺青を入れている人は〜」といった表面的な部分で

          刺青があれば悪人か

          大人が子供に持つイメージ

           NHKでマヤ文明をテーマにした曲の歌詞が過激という事で炎上しているらしい。恐らくマヤ文明の子供たちはもっと過激なものを見ただろう。そこまで過去に遡らなくても、現在もどこかで過激なものと隣り合わせの子供たちがいる。 そんなに繊細でしたか?  先進国の癖なのか治安が良いからなのか子供の見るものに過保護になる傾向があるように思う。しかし、子供の頃を思い出して欲しい。そんなに神経質な子供ばかりではなかったはずだ。  少なくとも大人が子供に抱く繊細なイメージほど繊細ではない事の方

          大人が子供に持つイメージ

          山下達郎とジャニー喜多川と人間の二面性

          発端  松尾潔氏が故ジャニー喜多川氏の性加害問題に触れた事を機に、所属事務所であるスマイルカンパニーとの契約が解除された。世間ではスマイルカンパニーがジャニーズとの関係性の為の忖度をしたと捉えられた。  また、その際に松尾氏はスマイルカンパニー所属の山下達郎氏の名を挙げ、彼も契約解除に賛同しているという事から波紋が広がる事となった。  それに対し、山下達郎氏は自身のラジオで応えた。そこには性加害を批判しながらも、ジャニーズから受けた恩恵は軽視できないという板挟み状態の氏の姿

          山下達郎とジャニー喜多川と人間の二面性