シェア
幽霊が隣で胡座をかいている。 「煙草でも吸ってくれよ」 僕はアメスピの黄色の箱を指で撫で…
「どうして私達は雨の日にしか会えないの?」 私は雨降りよりも、旅人の外套を脱がせてしまう…
彼の絞首は、他の誰よりも鬼気迫るものだった。脊椎は刹那的に酸素を希求するが、気道は外圧で…
僕と彼女は揃って芸術的な不眠症だった。僕達は三日三晩ぶっ通しで過ごしたこともある。フラン…
「君は、ドライフラワーみたいなものだね」 僕はリキュールの空き瓶の殆どに、ドライフラワ…
私は眠りを司る何かと契約をしてしまったようだ。この頃生活習慣が乱雑だったが、それは契約の…
カフェテリアには、クールビズスタイルの青年が一人いるだけだった。 「ここは広々としているし、いつも静かなの」 彼女は静かな店にやたらと詳しかった。まるで、彼女自身が静謐を引き連れているみたいに。 「でも、日曜日の昼時にここまで静かだなんて、この店はやっていけているのかな」 「それは私たちが考えることではないわ」 青年は熱心に書き物をしていた。ノートのサイズから推し量るには日記でありそうだが、エッセーのようなものなのかもしれない。そもそも、日記もエッセーの一部である
時刻の組み合わせは1416組もある。0~23時(24個)×1~59分(59個)=1416。たくさんの組み合わ…
彼女は東京に飲み込まれてしまった。彼女が地元に排出された時、ほとんどの人が彼女を彼女とし…
目が覚めると身体の至る所がシーツに縫い付けられている。苦しくはないが、気怠くはある。その…
「地下へと続く道は、あなたが思っているよりずっと多いのよ」 彼女の言葉を聞いてから気にす…
村のすぐ側の祠には、大きな人喰い蛇がいた。人喰い蛇はほとんどずっと眠っているが、噴火や地…
機嫌の悪い天使は、僕から睡眠を奪った。 「そろそろ返していただけませんか?」 身体は睡眠…
「人に弱みを見せられたのは、これが初めてです」 彼とは行きずりに出会ったが、趣味のいい魔法をかけられたみたいにお互いの波長があった。 「どうして、私には見せられたのかな?」 「分かりません。僕もこの人格は初めてなんです」 私は彼が害のない冗談を言っているのだと思った。 「記念すべき今日は、何個目の人格なの?」 「僕が認識している限りは、9個目です」 「私と出会ってなかったら、この人格は立ち現れなかった?」 「はい。あなたに会えたことを、僕は運命と言って差し支え