ドライフラワー。
「君は、ドライフラワーみたいなものだね」
僕はリキュールの空き瓶の殆どに、ドライフラワーを挿す生活をしていた。
「そんなにいいものじゃないさ」
友人は鬱陶しそうな目配せをした。
「そうだよ、まったくいいものじゃないさ」
僕はその言葉の意味を咀嚼するのにとても時間がかかった。そして、それが一つの皮肉であることに気づいた。
「それは……どういう意味で言ったんだろう?」
僕はドライフラワーというモチーフから、一縷の皮肉も見いだせなかった。
「君だけ止まっているみたいだ、ということだよ」
君だけ止まっている、と僕は頭の中で繰り返した。き、みだ、け、とま、って、い、る。
「あるいは、止めてしまったのかもしれないね」
「それは、悪いことなのかな?」
「何も悪くないさ。ただ、僕達が移り変わっていく中、君は変わっていないというのは、ひとつの事実だ」
僕は、ドライフラワーになったみたいだ。確かに、この数ヶ月間僕は動かなかった。何の感傷も抱かずに、時間を食い散らかしていた。
「それなら、僕もそろそろ変わろうかな」
「それは、すこし難しいんじゃないかな」
友人は、同情のI’m Sorryを表情に浮かべていた。
「水をやって蘇生できるなら、みんなドライフラワーにしてしまうさ」