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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2021年10月の記事一覧

猫のいない街。

市境を示す看板を過ぎた途端に、助手席の彼女は青ざめた。車内の気温すらぐっと下がってしまう…

周波数。

時々、やけに周波数が合う人がいる。これだけ人間というものが世界に溢れているから、ある程度…

1/100億円。

道で、100万円を拾った。道で? 適切な表現は上手く思いつかないけれど、兎にも角にも100万円…

美術館の余白。

美術館では、時間の概念が希薄だ。それが、何によってもたらされるのか、例えば静寂なのか、そ…

すき家の明かり。

すき家の明かりが、俺の風情を邪魔する。マンションの屋上で吸う煙草。俺は、ただ郷愁したかっ…

脳みそをバターに。

なぜ、人は悩むのか。なぜ、人は苦しむのか。堂々巡りの思考は、身体を悪くするだけだ。答えな…

空芯菜人間。

君は、空芯菜みたいな人間になってしまったね。心の空洞を周りから隠して、自分からも遠ざけている。ドーナッツの方がまだましだ。ドーナッツなら、空洞を埋めんとする可能性がまだ残っている。しかし、君はその空洞を隠してしまった。空洞を忘れようとさえしている。自分が、根菜のようにぎっしりと中身が詰まっていると思い込んでいる。 君は、僕の忠告にぴんときていないはずだ。僕に空洞なんてないじゃないかと、反駁さえするかもしれない。僕は悲しいよ。空芯菜人間になってしまったら、もう後戻りができない

芋煮の神様。

仙台には、芋煮という奇妙な風習がある。銀杏臭い路地を抜けて、河原に出て豚汁をつくるという…

虹、滑る。

空を落下している時、都合よく虹があったので着地してみることにした。しかし、それが苦難の始…

鏡越しの視線。

鏡越しにあなたを見ていたら気づかれちゃったみたい。まったく、男の子っていうのは視線に敏感…

黄色い山茶花。

「最近、ここいらも物騒だね」   「また妖怪もどきが出たらしいよ」 「ここいらは妖怪もどき…

幸せの形。

今日は、ビットコインが過去最高値を更新したらしい。今の市場は、誰も全貌を把握出来ていない…

どんでん返し。

「いやだ! 死にたくない!」 友人は崖から飛び降りることを拒み続けている。彼はもう3日間…

思い出ベッティング。

「ロン」 Aは跳満で、見事な逆転を演じてみせた。満貫以上の高役が連発し、かなりの点差が着いた。 「やられた〜」 Cは久々の大負けだ。玄人でも運に左右される日がある点、麻雀というゲームはよく出来ている。 「それじゃあテンピンだから……80符分の思い出だね」 「いやー、もう中学生の記憶は、全部なくなってしまうよ」 プシュン。 「いやはや、一番の悪魔は数字とやらなのかも知れませんネ」 検察官は笑った。 「縋り続けて来たのは我々の方ですからネ。もはや、この概念を消し