どんでん返し。
「いやだ! 死にたくない!」
友人は崖から飛び降りることを拒み続けている。彼はもう3日間泣き叫び続けている。
「なぁ、こう言うのって酷だとは思うんだけどさ、拒んでいること自体本当はまずいんたまぜ」
「君、それは僕に死ねと言いたいのかい? 僕は死にたくないんだ! 」
やれやれ、こうなった友人を止めることは難しい。
「なぁ、本当にあと少しで、君の名前は不名誉な形容詞として、伝統に連ねられてしまうんだよ」
「伝統なんて知ったことか! 僕は死にたくないんだ! 」
残念、タイムオーバー。かつて一度も執行されうらなかった対処法が、友人には処された。強制投げ込み。それは、筆舌に尽くし難い屈辱となるはずだった。
その刹那、友人は空中に立った。常識の範疇を超えたその光景に、全員が息を飲んだ。
「やったぁ! 僕は死なずにすんだみたいだ! 」
なるほど、人間の意志の力を我々は少々見くびっているようだ。