黄色い山茶花。
「最近、ここいらも物騒だね」
「また妖怪もどきが出たらしいよ」
「ここいらは妖怪もどきばかりだね」
「今度のは、何でも黄色い山茶花を探し回っているらしい」
「なんだいそれは。そんなのある訳ないじゃないか」
「そういうと、襲われちまうらしい。お互い気をつけようね」
まったく、人騒がせな妖怪もどきだ。
帰途、案の定そいつはやってきた。
「お兄さん、お兄さん。黄色い山茶花を知らないかい? 」
「黄色い山茶花かい…そいつはちと聞いたことがないねぇ」
「お兄さん、お兄さん。それじゃあ黄色い山茶花はないっていうのかい? 」
「いや、そうとは言いきれない。可能性を無視しちゃあいけないよ、お嬢さん。」
「お兄さん、お兄さん。それじゃあ黄色い山茶花を一緒に探してくれないかい? 」
「あぁ、いいとも」
そうして僕は、妖怪もどきと黄色い山茶花を探す奇妙な冒険をすることとなった。でも、そういう一興が人生には時々必要だと思う。