空芯菜人間。
君は、空芯菜みたいな人間になってしまったね。心の空洞を周りから隠して、自分からも遠ざけている。ドーナッツの方がまだましだ。ドーナッツなら、空洞を埋めんとする可能性がまだ残っている。しかし、君はその空洞を隠してしまった。空洞を忘れようとさえしている。自分が、根菜のようにぎっしりと中身が詰まっていると思い込んでいる。
君は、僕の忠告にぴんときていないはずだ。僕に空洞なんてないじゃないかと、反駁さえするかもしれない。僕は悲しいよ。空芯菜人間になってしまったら、もう後戻りができないのだから。
あぁ、君の体を真っ二つに割くことが出来たら、君は元に戻ってくれるだろうか。しかし、空芯菜人間はあらゆる痛みを忌避するから、もう君に僕の声は届かない。世界中のあらゆる諌言から耳を塞ぎ、虚無でその空洞を埋めながら君は生きていく。体内に響く風の音を、胡蝶の夢と重ねて。