すき家の明かり。

すき家の明かりが、俺の風情を邪魔する。マンションの屋上で吸う煙草。俺は、ただ郷愁したかったのに。秋冷えの夜の静寂。煙草の煙を吐き出した先には、エモーショナルな夜景が広がっているべきなのに。すき家の明かりが、俺の風情をやけに邪魔する。

すき家の明かりは、否応がなしに目に入る。俺が遠望をせんとしても、赤と黄の警告色に目線が移ろう。まったく、迷惑な明かりだ。

しかし、物事には全て意味があり、然るべき理由がある。 俺は神様のメタファーを読み取ろうとする。もし、すき家の明かりがなかったら? 俺はここで何を考えていただろう。そうだ、俺は逃げるように煙草を吸いに来ただけなのかもしれない。そのようにして、得るものはあるだろうか。すき家の明かりは、俺を遮二無二走らせようと、そこにあったのではないか。

そう思うと、すき家の明かりが愛おしくさえ思える。俺は煙草の火を消して、階段を降りた。あれでいて、腹が溶けてしまいそうなくらい美味い牛丼が出てくるから憎めないのだ。

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