虹、滑る。

空を落下している時、都合よく虹があったので着地してみることにした。しかし、それが苦難の始まりだった。

まず、赤。焼けるように熱い。これはちょっと筆舌に尽くし難い熱さだ。次に、橙。辛酸を嘗める。口腔だけでなく、全身が酸っぱい。続けて、黄。全身がすっかり老いる。ついでに、潰れたぎんなんまでついてきやがる。そして、緑。悶えるような苦さ。体全体が緊縮して、嘔吐を伴う。そして…。

もちろんこれは夢であったのだが、目覚めの倦怠はそれを現実せしめる心地だった。青以降も被っていたことを想像するだけで、寒気がする。それにしても、何事も近づけばいいと言う訳では無い。遠くから望んでいた方が無難な場合が、世の中にはしばしばあるのだ。

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