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究極の不条理の掌編集「おじいさんに聞いた話」

<文学(235歩目)>

おじいさんに聞いた話
トーン・テレヘン (著), 長山 さき (翻訳)
新潮社

「235歩目」はトーン・テレヘンさんの圧倒的な不条理な世界。

「ピロギ」
杖を売る店があるが、ある日理由もなく売ってしまった。
ここから始まる酒浸りの日々、ロシアでは珍しいことではないらしい。
こんな「唐突」で始まる物語。
予定が狂うことを嫌う私たちの国民性からは最も離れた人生を送る主人公。
この正気を失いそうになる男の物語が、途中から人間の本質を突く物語になる。

掌編なのに、いろいろなことを読者についてくる。
ロシアの「日常」なのか?「非日常」なのか?
わからないことが多いながら、私の心を突いてくる。
何でもない話の中から、本質を突いてくる作品。
短い掌編でも、読んで余韻が残る作品で、テレヘンさんの真骨頂を感じた。

「ユダたち」
ロシア正教の国、ロシアにおけるローマ・カトリック教会の話。
自殺が主題の物語で、やるせない気持ちになるが、読後に考えさせられる作品。
こんなロシアの不条理が、当事者ではない私たちに投げかけるものは何なのか?考えさせられる。

「神と皇帝」
「神が全能であるか?」を問うお爺さん。
皇帝と神を比較した話を続けるお爺さん。
このロシアと言う不条理だらけの国で、お爺さんが孫に伝えたいことは何なのか?
読み進めていくと、究極の不条理が学べる。

徹底的な不条理を描き、孫に不条理の物語を語る祖父。
ちょっとユーモラスで、クスリと笑う文章が多い。
どこか、違う次元の世界の話に思えるが、これが20世紀のロシア(ソ連)だと思うと、お爺さんが伝えることは救いようがない。
孫の立場で読み進めると、ロシアという国の究極の極端さが見えてくる。
ちょっと異質な文学です。

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