心に響くベストな短篇集「記憶に残っていること」
<文学(208歩目)>
新潮クレストのベスト短篇集です。ベストと名乗るレベルで読んでよかった作品が多いです。
記憶に残っていること: 新潮クレスト・ブックス短篇小説ベスト・コレクション
堀江 敏幸 (編集), デイヴィッド ベズモーズギス (著)
新潮社
「208歩目」は、新潮クレスト・ブックスの短篇集。やはり水準を大きく超えて良かったです。
この「ベスト」から、どんどん読書が進んでいきます。
「マッサージ療法士ロマン・バーマン デイヴィッド・ベズモーズギス」
先行者(いわゆる先人≒先に移民された人々)と後行者(後から移民してきた人々)
カナダに移民してきて、なかなかうまくいかない父。
同じ故郷を持つ者たちに受け入れてもらいたい。しかし、先行者が何気なく示すことに心が大きく傷つけられていく。
人生で多くを積み上げたにもかかわらず、最初の一歩からのスタートをしないといけない境遇。
これが、移民であるとしたら、今までの人生での歩みは何だったのだろうか。と心を突く作品。
いくつかの描写が心を突くが、最初の悩み(多くの人に認められたい)の手前はいつも後から考えると小さな出来事に一喜一憂する時代がある。
初めて、デイヴィッド・ベズモーズギスさんを読んだが素晴らしいと感じた。
「ピルザダさんが食事に来たころ ジュンパ・ラヒリ」
新天地に移ると、故郷では戦火が。
新天地の条件の良さを理解するも、故郷に戻る選択をする者を見つめるこどもの視点が心を突く。
大人が、祖国の戦乱を何事も変わらないような振る舞いをしようと努力している中で、こどもは少しずつ気づいていく。誰かに対して『祈る』ことを覚えるこどもたち。
そして、大人になった時に「あの時」を思い出す。
故郷を遠く離れて暮らす人々の悲しさがこどもの天真爛漫な姿から深くあぶりだされる素晴らしい作品でした。
「死者とともに ウィリアム・トレヴァー」
連れ合いを亡くしたエミリーの行動に、二人で紡いだ人生が浮かび上がる。微妙な心情が淡い光の中で浮かび上がるような作品。
とても短いが、いろいろな意味で考えさせられる。
「島 アリステア・マクラウド」
この短篇集の中で、読み返したのはこの作品。
ヒロインの心情描写から、老境に至っての最後のシーン。あ~人生は素晴らしいと感じた。短篇ですが、読後感は大河小説を読んだ気分。
「あまりもの イーユン・リー」
林ばあさん(と言っても50歳少々)を巡る登場人物の目線がいい。
なんとなく人口が多い国で市井の「その他大勢」にされているが、それでも生きることから得られることが多いことを学ばされる。
利他で生きる林ばあさんがいろいろな意味で私たちに問いかけてくる。
上記の短篇と同じ様に読んでよかったのは「人はなにかを失わずになにかを得ることはできない 堀江敏幸」。
あ~そうか。と感じました。
やはり堀江さんがベストと言うだけあって、どの作品も読んでよかったと感じました。
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