#気功
【知られざるアーティストの記憶】第95話 あの日、彼のことを見続けていた人影
Illustration by 宮﨑英麻
*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*
→全編収録マガジン
→前回
第13章 弟の死
第95話 あの日、彼のことを見続けていた人影
マリはマサちゃんのことを想った。昨年の11月2日にO病院への転院に付き添ったとき、マリがお腹に愉氣をすると涙を流したマサちゃん。その月の2
【知られざるアーティストの記憶】第76話 『郭林新気功』の功罪
Illustration by 宮﨑英麻
*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*
→全編収録マガジン
→前回
第11章 決断
第76話 『郭林新気功』の功罪
マリにとって見慣れない、伸び切った無精髭を蓄えたまま帰宅した彼は、帰るなりすぐにそれを剃り落とすことはせず、翌朝にやっと見慣れた姿に戻った。
入院してい
【知られざるアーティストの記憶】第75話 ダージャの愛のことばと気功
Illustration by 宮﨑英麻
*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*
→全編収録マガジン
→前回
第11章 決断
第75話 ダージャの愛のことばと気功
彼の入院に時を同じくして連発されたダージャの愛のことばは、このときのマリの心に渇望されていたかのようにヒットし、染み込んでいった。それは、マリがそれ
【知られざるアーティストの記憶】第71話 彼の部屋で留守を守る日々
Illustration by 宮﨑英麻
*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*
→全編収録マガジン
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第10章 5度目の入院
第71話 彼の部屋で留守を守る日々
彼と病院に向かった入院当日の朝はとても暖かく、嘘みたいに明るい青空が広がっていた。
「こういう暖かい日が続いたあとには、雪が降ったりするよ。」
【知られざるアーティストの記憶】第56話 母性の強い彼はマリの気功に興味を持った
Illustration by 宮﨑英麻
*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*
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第8章 弟の入院
第56話 母性の強い彼はマリの気功に興味を持った
マリは毎朝気功に出かけた。寒くなってくると、彼はマリの薄着であることを心配した。寒がりなマリは決して薄着ではなかったのだが、首周りの大
【知られざるアーティストの記憶】第44話 こそこそしなければならないことは、本当の愛ではない
Illustration by 宮﨑英麻
→全編収録マガジン
→前回
第7章 触れあいへ
第44話 こそこそしなければならないことは、本当の愛ではない
マリによる愉氣は毎朝の気功のあとに続けられたが、水曜日だけは彼がマサちゃんを風呂に入れ、残り湯で洗濯をする日と決まっていたため、ルーチンを優先させて愉氣はお休みにした。2021年9月22日はマリが愉氣を始めてから最初の水曜日であった。
彼
【知られざるアーティストの記憶】第41話 不穏な結果と、動き出した代替療法
Illustration by 宮﨑英麻
→全編収録マガジン
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第7章 触れあいへ
第41話 不穏な結果と、動き出した代替療法
2021年9月16日の昼前、マリは急な来客を迎えるために慌てて玄関の周りを掃除していた。来客とは、友人の中医足つぼ師のメイであった。
マリはその一週間ほど前に、熱いお茶をこぼして左手首にやや深手の火傷を負っていた。長袖のシャツに染み込んだ淹れたてのお茶が皮
【知られざるアーティストの記憶】第27話 彼はまるで飛び立つ鷺のようだった
→全編収録マガジン
→前回
第4章 入院3クール目と4クール目の間
第27話 彼はまるで飛び立つ鷺のようだった
2021年7月20日、彼が4クール目の入院に出かける日の朝、マリはいつもより早めに気功に出かけた。気功を終えて公園から引き返すと、彼がちょうど家から出てきた。マリのことを待つような素振りで、公園のほうから戻ってくるマリを認めるといつになく大きな笑顔を向けた。二人はぶつかり合う視線の
【知られざるアーティストの記憶】第18話 マリに現れた身体症状と、彼を待つ時間の学び
▽全編収録マガジン
第3章 彼を待つ時間:入院3クール目
第18話 マリに現れた身体症状と、彼を待つ時間の学び
蛇足かもしれないことだが、この頃のマリがおぼろげに感じていたことがある。それは、入退院を繰り返す彼と退院後久しぶりに会うと、話している間に急に頭痛がしてきたり、酷く首や肩が凝ったりするような気がするのだ。初めは気のせいだろうと思ったし、そう思おうとした。彼と会って話をするのは夢のよ
【知られざるアーティストの記憶】第16話 空白の時間、マリは自分のアファメーションを取り戻した
▽全編収録マガジン
▽前回
第3章 彼を待つ時間:入院3クール目
第16話 空白の時間、マリは自分のアファメーションを取り戻した
マリにとって、自分の声だけが聞こえる時間が訪れた。それはもちろん、彼にとっても同じことであった。公園でハグを拒まれて呆然と彼の後姿を見送った後、マリは4,5日の間、あまり記憶もないほどに自分を生きられない苦しさの日々に沈み込んでいた。マリは愛について悩んでいた。
【知られざるアーティストの記憶】第15話 渡辺謙さんの復活、そして彼へのエール
▽全編収録マガジン
▽前回
第2章 入院2クール目と3クール目の間
第15話 渡辺謙さんの復活、そして彼へのエール
彼のその頃の頭髪は、抗がん剤で抜け落ちたところと、抜けずに残った部分とがまだらになり、バーコードのようになっていた。彼は病気になる前からほとんどいつも帽子を被っていたが、この時ばかりは帽子を被る理由はこの頭を隠す意味もあるのだろうと思っていた。ところが、陽ざしの弱い早朝など
【知られざるアーティストの記憶】第01話 兆し
▽全編収録マガジン
第01話 兆し
2020年の4月、未知の事態への不穏な緊張に世の中が息をひそめていた頃、マリはひとりのん気に新鮮な空気を吸い込み、人が疎らとなった朝の公園に毎日出かけるようになった。中国から渡ってきた新種の流行病があっという間にこの国を脅かし、マリの息子たちが通う学校も保育園も休校休園になったことは、マリを忙しい朝の支度から解放したので、彼女はこれを習ったばかりの気功をみっ