鷺 行美(さぎゆきみ)
連載小説【知られざるアーティストの記憶】の本編を収録します。
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死 第97話 マサちゃんの火葬式(上) マリはマサちゃんの火葬式に、できることなら参列したいと思った。彼もまた、 「キミも来ていいんだよ。」 と、強くそれを願っているようであった。マリの夫は、マリが参列するのは故人本人との関わりの深さからなのかと問い、マリがワダイクミ
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死 第96話 愛と死と一般常識 マサちゃんの火葬は、斎場の都合で二週間近く待たされ、2022年3月10日に決まった。母親が亡くなったときにはその身を自宅に連れ帰ったという彼は、ドライアイスの交換などが大変でやりきれないからと、マサちゃんの亡骸を斎場に預けることにした。
今朝、急に寒くなったからかな? 突然、宗次郎の「大黄河」を聴きたくなりました。 今日の私には宗次郎しか勝たん! みなさんも、「大黄河」を聴きませんか? 誰からもバトンをもらっていません。 勝手に二回目なので、タグ付け、埋め込みなどいたしません。 みなさま、風邪をひかれませんように🍂 🍀関連記事🍀
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死 第95話 あの日、彼のことを見続けていた人影 マリはマサちゃんのことを想った。昨年の11月2日にO病院への転院に付き添ったとき、マリがお腹に愉氣をすると涙を流したマサちゃん。その月の25日に彼と一緒に面会に行くと、転院のときよりも遥かにはっきりと受け答えをし、早く
※タイトル画像は写藍さんからお借りしました。ありがとうございました。 ちゃりれれさんから、 意外な人、鷺行美にバトンが回ってきました! ミエハルさん、チェーンナーさん、はじめまして。 よろしくお願いいたします! 鷺行美は、 子どもの頃から歌うことは大好き。 「カラオケで歌う」のも好き。 でも、実はカラオケはちょっと苦手… それはズバリ、「選曲」するのが苦手なんです。 レパートリーが多くないから、人が喜ぶ、盛り上がる歌を歌えないから。 選曲に気を遣って、気持ちを擦り減らして
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死 第94話 コロナ療養中に深まった夫婦の絆と、O病院からの連絡 2022年2月21日、マリはようやく熱が治まるとともに、市内や近隣の公団を調べて、希望に合う物件に片っ端から応募した。夫との話し合いで、子どもたち、特に次男と三男にはやはりまだ母親が必要であるとの結論に
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死 第93話 ニラ入りの味噌雑炊とロミオとジュリエット 「ニラが入った味噌味の雑炊が食べたい。」 体の痛みに耐えながら眠り続けるマリは、かろうじて食欲はあったので、夫にそんなリクエストをした。マリの夫は、優しい男である。そして、料理のできる男である。夫はマリのリクエス
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死 第92話 流行病の季節 2022年2月15日、マリは年上の友人キョウコと共にT山に登る約束をしていた。そのことを彼に話すと、彼はまた 「私も行こうかな?」 と言った。それは、14日のランチ会でマホが改めて話してくれた、 「イクミさんはきっと、マリちゃんを通していろ
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々 第91話 雨夜に灯りの点る家と、灯りの消えた家 「イクミさん、大丈夫やったかな?話、つまらんかったんやないかな?」 お話会での彼の態度は、案の定、マホを心配させていた。 「いやあ、目をつぶって聴いてたんじゃないかな……。」 マリは自信なくそう答えるしかな
大好きです なつかしい人 ・・・ 必ずそばにいてくれる人 *昨日さいかちの前を通ったときに、ふと 「なつかしい人」というフレーズが浮かんだ
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々 第90話 マホのお話会に集う女性たちと彼 マホのお話会の会場は、彼の家から徒歩15分くらいのところにある、マリの友人がチベット人のご主人と営むチベット料理屋さんであった。マホに続いて、彼とマリもユミコの車に乗り込み、会場に向かった。 寂れた商店街の中に
私がnoteに初めての記事を投稿をした日から、2024年8月18日でちょうど1年になります。 8月18日は特別な日で、初投稿の1年前、2022年8月18日は彼の四十九日法要、納骨の日。忘れもしない、この日も不思議な日でした。この日の思い出もそのうちに書きます。そしてその1年前の2021年8月18日は、彼の白血病入院治療4クール目の退院後に初めて会った日で、私たちの恋人としてのお付き合いが始まった日だと思っている日です。 818が縦に並び、この一年間で第89話まで投稿しまし
Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々 第89話 タケイさんの見立てと、マホとの出会い 微かな振動を伴ってツボの奥深くまで染み込んで来るようなタケイさんの指圧を、彼が必要とする箇所にじっくりと受けている間、彼に代わってマリがこれまでの経過を改めてタケイさんに伝えた。彼を診るにあたり、タケイさん
今年の4月に彼の叔父さんが亡くなった。ということを、昨日彼のお墓参りで偶然にも鉢合わせした彼の従兄のノリオさん(仮名、本編に既出)から知らされた。それにしても、お墓参りでの鉢合わせって、ありそうで、なかなかないことのような気がする。 この叔父さんは、彼の父親のすぐ下の弟で、彼と同一市内の比較的近所、自転車であれば10分もかからない場所に住んでいた。もう90歳を超えておられる、小柄で細身の、帽子の似合うダンディな叔父さんだった。ワダ兄弟の葬儀や法事に毎回顔を出され、お歳のせい
いい? この「断片」にはどうでもいいようなことしか書かないんだからね。 心暖まるエピソードとかを書く予定でもないし。 でも、私にとっては忘れたくない、大切な記憶なの。 ・・・・・・・・ あれは確か、彼の家で初めてサンドイッチを作って一緒にお昼ごはんを食べたときのこと。 冷蔵庫に入っていた1斤69円の食パンにマヨネーズ(正確には、卵不使用の「マヨネーズタイプ」という商品)を塗り、レタスと冷凍のアジフライを挟むだけの簡単なもの。 彼はマリのいる前でひょいひょいと作り、 「キミ
覚えている彼とのおしゃべりのシーンは後から思い出される。ああ、書くのを忘れた。そういうのがいくつもある。 あれはまだ、彼と付き合い始めてわりとすぐの頃だったと思う。彼が私の分もブロッコリーを買って来てくれたからそんな話題になったのだったか。いや、むしろそのときではなかった気がするが。 「……でも、ブロッコリーみたいなつぼみ菜は尿酸値の高い人は食べないほうがいいんだよ。私の母親が尿酸値が高かったから、気をつけていたんだよ。」 彼は尿酸値を上げる食べ物についてやたらと詳しか