鷺 行美(さぎゆきみ)

2022年7月2日に死別したパートナーとの思い出を綴ります。二人の過ごした時間はたった…

鷺 行美(さぎゆきみ)

2022年7月2日に死別したパートナーとの思い出を綴ります。二人の過ごした時間はたったの1年と2ヶ月間でした。 彼のたぐいまれな生き方と、彼が遺してくれたあたたかくまっすぐな愛のかたちを書き残したいと思います。 続きものですが、どうぞどこからでもお手に取り、触れていってください。

マガジン

  • 連載小説【知られざるアーティストの記憶】

    連載小説【知られざるアーティストの記憶】の本編を収録します。

最近の記事

バトンもらっちゃったよ!?【ミハエルカラオケ残暑バージョン】😊🎤🎶✨

※タイトル画像は写藍さんからお借りしました。ありがとうございました。 ちゃりれれさんから、 意外な人、鷺行美にバトンが回ってきました! ミエハルさん、チェーンナーさん、はじめまして。 よろしくお願いいたします! 鷺行美は、 子どもの頃から歌うことは大好き。 「カラオケで歌う」のも好き。 でも、実はカラオケはちょっと苦手… それはズバリ、「選曲」するのが苦手なんです。 レパートリーが多くないから、人が喜ぶ、盛り上がる歌を歌えないから。 選曲に気を遣って、気持ちを擦り減らして

    • 【知られざるアーティストの記憶】第94話 コロナ療養中に深まった夫婦の絆と、O病院からの連絡

      Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死  第94話 コロナ療養中に深まった夫婦の絆と、O病院からの連絡 2022年2月21日、マリはようやく熱が治まるとともに、市内や近隣の公団を調べて、希望に合う物件に片っ端から応募した。夫との話し合いで、子どもたち、特に次男と三男にはやはりまだ母親が必要であるとの結論に

      • 【知られざるアーティストの記憶】第93話 ニラ入りの味噌雑炊とロミオとジュリエット

        Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死  第93話 ニラ入りの味噌雑炊とロミオとジュリエット 「ニラが入った味噌味の雑炊が食べたい。」 体の痛みに耐えながら眠り続けるマリは、かろうじて食欲はあったので、夫にそんなリクエストをした。マリの夫は、優しい男である。そして、料理のできる男である。夫はマリのリクエス

        • 【知られざるアーティストの記憶】第92話 流行病の季節

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第13章 弟の死  第92話 流行病の季節 2022年2月15日、マリは年上の友人キョウコと共にT山に登る約束をしていた。そのことを彼に話すと、彼はまた 「私も行こうかな?」 と言った。それは、14日のランチ会でマホが改めて話してくれた、 「イクミさんはきっと、マリちゃんを通していろ

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        • 連載小説【知られざるアーティストの記憶】
          94本

        記事

          【知られざるアーティストの記憶】第91話 雨夜に灯りの点る家と、灯りの消えた家

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々  第91話 雨夜に灯りの点る家と、灯りの消えた家 「イクミさん、大丈夫やったかな?話、つまらんかったんやないかな?」 お話会での彼の態度は、案の定、マホを心配させていた。 「いやあ、目をつぶって聴いてたんじゃないかな……。」 マリは自信なくそう答えるしかな

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           大好きです   なつかしい人    ・・・   必ずそばにいてくれる人  *昨日さいかちの前を通ったときに、ふと  「なつかしい人」というフレーズが浮かんだ

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          【知られざるアーティストの記憶】第90話 マホのお話会に集う女性たちと彼

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々  第90話 マホのお話会に集う女性たちと彼 マホのお話会の会場は、彼の家から徒歩15分くらいのところにある、マリの友人がチベット人のご主人と営むチベット料理屋さんであった。マホに続いて、彼とマリもユミコの車に乗り込み、会場に向かった。 寂れた商店街の中に

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          【御礼】note一周年です

          私がnoteに初めての記事を投稿をした日から、2024年8月18日でちょうど1年になります。 8月18日は特別な日で、初投稿の1年前、2022年8月18日は彼の四十九日法要、納骨の日。忘れもしない、この日も不思議な日でした。この日の思い出もそのうちに書きます。そしてその1年前の2021年8月18日は、彼の白血病入院治療4クール目の退院後に初めて会った日で、私たちの恋人としてのお付き合いが始まった日だと思っている日です。 818が縦に並び、この一年間で第89話まで投稿しまし

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          【知られざるアーティストの記憶】第89話 タケイさんの見立てと、マホとの出会い

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々  第89話 タケイさんの見立てと、マホとの出会い 微かな振動を伴ってツボの奥深くまで染み込んで来るようなタケイさんの指圧を、彼が必要とする箇所にじっくりと受けている間、彼に代わってマリがこれまでの経過を改めてタケイさんに伝えた。彼を診るにあたり、タケイさん

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          【こぼれ落ちた断片06】叔父さんの訪問

          今年の4月に彼の叔父さんが亡くなった。ということを、昨日彼のお墓参りで偶然にも鉢合わせした彼の従兄のノリオさん(仮名、本編に既出)から知らされた。それにしても、お墓参りでの鉢合わせって、ありそうで、なかなかないことのような気がする。 この叔父さんは、彼の父親のすぐ下の弟で、彼と同一市内の比較的近所、自転車であれば10分もかからない場所に住んでいた。もう90歳を超えておられる、小柄で細身の、帽子の似合うダンディな叔父さんだった。ワダ兄弟の葬儀や法事に毎回顔を出され、お歳のせい

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          【こぼれ落ちた断片05】パンの耳

          いい? この「断片」にはどうでもいいようなことしか書かないんだからね。 心暖まるエピソードとかを書く予定でもないし。 でも、私にとっては忘れたくない、大切な記憶なの。 ・・・・・・・・ あれは確か、彼の家で初めてサンドイッチを作って一緒にお昼ごはんを食べたときのこと。 冷蔵庫に入っていた1斤69円の食パンにマヨネーズ(正確には、卵不使用の「マヨネーズタイプ」という商品)を塗り、レタスと冷凍のアジフライを挟むだけの簡単なもの。 彼はマリのいる前でひょいひょいと作り、 「キミ

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          【こぼれ落ちた断片04】ブロッコリーとカツオのタタキ

          覚えている彼とのおしゃべりのシーンは後から思い出される。ああ、書くのを忘れた。そういうのがいくつもある。 あれはまだ、彼と付き合い始めてわりとすぐの頃だったと思う。彼が私の分もブロッコリーを買って来てくれたからそんな話題になったのだったか。いや、むしろそのときではなかった気がするが。 「……でも、ブロッコリーみたいなつぼみ菜は尿酸値の高い人は食べないほうがいいんだよ。私の母親が尿酸値が高かったから、気をつけていたんだよ。」 彼は尿酸値を上げる食べ物についてやたらと詳しか

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          【知られざるアーティストの記憶】第88話 S医院の先輩の存在と、車の中の昼食

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々  第88話 S医院の先輩の存在と、車の中の昼食 マリの知人に一人だけ、S医院に通って癌を克服した人があった。それは、マリがこの町に越して来た年から冬場にだけ患った原因不明の重症の全身アトピーを、最終的に完治に至らしめたヒーラーの女性で、名をシマヅヨシエと言

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          現身の君|令和版百人一首 恋の巻【他の部】

          現身の 君通らざりし 我が軀 なお身中に 君宿したり うつしみの きみとおらざりし わがからだ なおしんちゅうに きみやどしたり 【心訳】 生きているときの生身の軀では、私の軀を通って行かなかったあなた。 あなたを愛の軀で包みたいと願っていたこの軀は、今もなお、真ん中の一番柔らかいところで、 あなたを包み抱き続けています。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈⿻*.· 一応、ノンフィクションの恋愛小説を連載し、三羽様に通読いただいている身として、やっとエントリーさせていただきました。

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          【知られざるアーティストの記憶】第87話 カギが閉め込まれ、カギのかかった箱

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々  第87話 カギが閉め込まれ、カギのかかった箱 夢の意味するところははっきりわからなくも、彼がマリの夢を見てくれたこと自体が夢のようであった。その夢には続きがあった。 彼は顔をほころばせながら、淡々と自分の見た夢をマリに共有した。最後には彼のそばにいられ

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          【知られざるアーティストの記憶】第86話 医師とのコミュニケーション

          Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →前回 第12章 S医院に通う日々  第86話 医師とのコミュニケーション S医院に通う道のりは、カーナビが示すとおりに毎回違う道を辿ったが、次第に一つのルートに固定されていった。それは、彼を助手席に乗せてあちこちに出かけたいというかねてからのマリの望みを、ある意味で叶えていた。マリはそのこ

          【知られざるアーティストの記憶】第86話 医師とのコミュニケーション