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作って食べたいnote

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#エッセイ

それは、恋しい思い出の味。《10√2cmの水餃子》

それは、恋しい思い出の味。《10√2cmの水餃子》

「今夜はなぁ、うたちゃんの好きな水餃子やでな。ちょっと早めに来んさい」

 電話の向こうで祖父がそういうと、うれしくて文字どおり飛び上がったものだった。水餃子はおじいちゃんちの冬の定番・・・というか、すこぶる孫うけのいいパーティーメニュー。父も母も私も妹も、誰もが大好きな家族の味。

 水餃子っていうと、ひだをたたんだ餃子ではなく、中華料理店の丸っこく小さく包まれたあれでしょ?って思うかもしれない

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赤パプリカのオイル漬け #夜更けのおつまみ

赤パプリカのオイル漬け #夜更けのおつまみ

その家を訪れたのは秋から冬へと向かうころだった。

州の中で一番寒いと聞いてはいたけれど、着いてみたら確かに寒い。前日までは別の農家で、半袖に汗だくで草むしりをしていたのが嘘のようだ。あわてて冬物のダウンを着込む。

わたしはそのとき、オーストラリアで田舎の家庭を転々としていた。家の仕事を手伝うことで食事と宿泊場所を得られるしくみを使い、長い旅をしていたのだ。

新しい家では、すでに韓国と台湾の子

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飽きちゃったよ…なんて言わせない【カボチャの焼きプリン】(レシピエッセイ)

飽きちゃったよ…なんて言わせない【カボチャの焼きプリン】(レシピエッセイ)

せっかく作っても食べる人がいないというのは結構空しい。

料理を作るのは好きだけど、仕事もあるし、手の込んだ料理や、時間のかかる料理を作るのは、週末のお楽しみとなる。作る量だって作り過ぎないようにはしても、ほんの少しだと作りにくい料理もあって、いかんせん残ってしまった料理を、一食で食べ切れる量に小分けにして冷凍することも少なくない。

先日、紹介したカボチャの丸焼きもそんな料理の一つだと思う。

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あとしまつが手軽な「茹でサバ」は、ほくほくと癖になる味。

あとしまつが手軽な「茹でサバ」は、ほくほくと癖になる味。

サバを茹でると美味しいのでは、と思ったのは偶然の事でした。「船場汁」と言う、サバと大根の美味しいお汁ものもありますし、茹でて食べてみたいなあと、試してみるとなかなかに美味しい。
その頃の私は一人暮らしだったもので、とことん洗い物を減らし、どうお魚を美味しく食べるかと執念めいた食欲に燃えていたのです。

さて、現在の食卓で作ると子供達も結構な勢いで食べるではありませんか。それにお財布にも優しい。和風

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買い置きだけで今週の作り置き、全行程で(だいたい)1時間。

買い置きだけで今週の作り置き、全行程で(だいたい)1時間。

In light of current circumstances, I actually started to piling up some staples (e.g. flour, rice, butter, suger...) and if you need to do the same, I'll give you a lift. 先週のちょうど今ごろ、隣人のAlinaがこんな助言と誘いを

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称賛されたい私の浮遊する苛々(と今週の作り置きレシピ)

称賛されたい私の浮遊する苛々(と今週の作り置きレシピ)

自分のやっていることに価値がある、と確信が持てることは実はごく稀なことなのかもしれない。

毎日の家事自体は、無限のループのようだとは思うけれども、特に嫌いというわけでもない。
掃除などは好きではないけれど、これは生きていくために必要なことなのだ。洗いたてのバスタオル、つるっと白いお風呂のタイル、きちんと出汁をとった味噌汁、気に入りの皿に盛り付けてある料理。私は、そういうものを愛している。朝起きて

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