マガジンのカバー画像

学芸員課程

10
運営しているクリエイター

記事一覧

学芸員の必需品 [仕事道具を紹介します]

学芸員の必需品 [仕事道具を紹介します]

「仕事道具」て、なんとなく憧れる言葉です。

料理人の包丁。美容師のハサミ。文豪の万年筆。

「これがないと仕事にならない」そんなこだわりのつまった愛用品の話を読んだり、聞いたりするのって楽しいですよね。

私もそんなことを言ってみたい!と思って、学芸員の仕事道具を考えてみました。何かあったかな。思いつくままに挙げてみましょう(写真撮ってくるの忘れたので、Amazonの画像で代用します)。

■メ

もっとみる
作品タイトルをめぐる冒険[about UKIYO-E]

作品タイトルをめぐる冒険[about UKIYO-E]

名付けの歴史をたどると、美術の違った側面が見えてくる!

というわけで、「美術作品の名前(タイトル)」というテーマをどんどん深掘りしていくシリーズです。

「作品タイトル」考〜奥深すぎる名付けの歴史〜

作品タイトルから考える日本美術

前回は、日本美術(絵画)の作品名について触れました。
江戸時代までは、作品ひとつひとつに作者がタイトルをつけるという習慣はなかったこと。
そして、明治時代に展覧会

もっとみる
面白い、西陣織。①

面白い、西陣織。①

ちょっとタイトルからして盛ってみました。

私が西陣織に携わるようになったのは、実家の家業が西陣織のデザイン製造卸業をやっているから、
地場産業でもあるので親戚筋に関係者がとても多いからなのですが、
ではなぜ、斜陽産業にもかかわらず、「続けている(続けようとしている)の?」と聞かれたら、それはもう、
「面白いから」
と言う返答が私的に的を得ている気がします。

では、どこが面白いのか、と言うことを

もっとみる
面白い、西陣織②

面白い、西陣織②

前回書いておりました、以下の記事。

https://note.com/a_butterfly_way/n/ne531aad6fe23

引き続きその「面白さ」をお伝えしていきたいと思います。

②「伝統」と言いながら続けたことで、生まれた工夫の数々がある

日本の伝統的工芸品の一つでもある西陣織ですが、西陣織として名乗るのには、西陣織工業組合に所属してそこで定められた規定を満たす必要があります。

もっとみる
「作品タイトル」考〜奥深すぎる名付けの歴史〜

「作品タイトル」考〜奥深すぎる名付けの歴史〜

すべてのモノには名前があります。私にも、あなたにも。

名前があるからその存在が認識できるとも言えますし、名前がなければ呼ぶこともできません。

と、たまには、こんな哲学的な書き出しも悪くないですね。

さて、美術作品にも作品名(タイトル)がありますよね。
ゴッホの《ひまわり》しかり、ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》しかり。

美術館に展覧会を観に行けば、飾られた作品の横には、作者の名前とともに作品名

もっとみる
作品タイトルから考える日本美術[シリーズ連載]

作品タイトルから考える日本美術[シリーズ連載]

名付けの歴史をたどると、美術の違った側面が見えてくる!
というわけでワクワクしながら、美術作品の名前(タイトル)について考察するシリーズ第2弾です。

前回は、西洋美術の作品名について各時代ごとの特徴を並べてみました。作品名に対する作家側の意識がじょじょに変化していった様子が何となく見えてきましたね。

今回は「日本ではどうだったの?」という視点で語ってみたいと思います。

■日本美術の作品名はと

もっとみる
美術館のコレクションにまつわる2つの制約とタブー視された解決法

美術館のコレクションにまつわる2つの制約とタブー視された解決法

美術館は収蔵品となる美術品をどうやって手に入れているのか、コレクションの成り立ちについて、まずは基本的な話を前回書きました。

購入、寄贈、寄託でしたね。まぁ、ここまでは教科書的な話なので、あまり面白くなかったと思います(でも基本を知ってもらわないと、今回の話もできないわけで…)。今回はもう一歩踏み込んで、美術館の作品収集には2つの制約があるよ、という話をしたいと思います。

さて、その制約とは?

もっとみる
美術館のコレクションて、どうやって集めているの?

美術館のコレクションて、どうやって集めているの?

美術館(博物館)の命ともいえるもの、それが収蔵品(コレクション)です。

作品を収蔵して、それを管理する学芸員がいる。これが、ギャラリー・貸し会場・展示会場と、美術館の決定的な違いと言っても過言ではありません。

博物館法を見ても、このことがきちんと定義されています。

このように美術館は美術品を収集することが事業の大きな柱なのです。コレクションをもたない美術館としては国立新美術館が有名ですが、こ

もっとみる
アートは無駄だし、役に立たない、とあえて言ってみる

アートは無駄だし、役に立たない、とあえて言ってみる

美術館業界には、「客を呼べる学芸員」が存在します。正確には「来館者数が伸びる展覧会が企画できる学芸員」ですね。名物学芸員といってもいいでしょう。

何人か思い浮かびますが、現役学芸員の個人名を出すのもあれなので、一線を退いた方で挙げるとすれば、板橋区立美術館の学芸員だった安村敏信さんは間違いなくその1人でしょう。板橋区美の館長までつとめ、現在は葛飾北斎の肉筆画美術館である信州小布施北斎館の館長をさ

もっとみる
観てきた!25年ぶり!の静岡県立美術館で「大展示室展」

観てきた!25年ぶり!の静岡県立美術館で「大展示室展」

2022年4月、長期休館を経てリニューアルオープンした静岡県立美術館。
いま、まさにオープンしたてほやほやだからこそ実現した、ちょっと変わった展覧会が話題になっています。ご存知でしょうか。

タイトルは そのものずばり、大展示室展 です。

わたし、どーしても観たくて、つい先日、東京から足を伸ばして行ってまいりました!!!

ということで今回は、「大展示室展」と、個人的にも思い入れと思い出が深い、

もっとみる