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【連載】RYUKYU SOUL, HUMAN SOUL #18 平和祈念公園①
こんにちは。今週もお読みいただきありがとうございます。前回までは2回に渡り、沖縄県糸満市のひめゆりの塔を訪れて考えたことを綴りました。今回からは糸満市で沖縄地上戦の歴史を語るもう一つの地、平和祈念公園を訪れた時のことを書いていこうと思います。
<平和祈念公園>
平和祈念公園は沖縄地上戦の歴史を語り継ぎ平和への願いを発信する施設として、平和記念資料館、沖縄地上戦で亡くなられた方々の名前を刻んだ平和の礎(いしじ)、平和祈念像、国立沖縄戦没者墓苑、50墓に渡る府県や団体の慰霊塔で成り立っている、とても広い公園です。
民家さんの車で公園まで送ってもらい、まずは手前にあった資料館から見て回ることにしました。ひめゆりの資料館と同様に館内の撮影が禁止であったため今回も文章ばかりになってしまいますが、どうかお付き合いください。
この資料館では琉球王国の日本化から地上戦、戦後の米軍による占領、現代の米軍基地問題に至るまでの長い沖縄の歴史が、莫大な量の遺品や写真、証言によって語られています。
展示は琉球王国の内容から始まり、そこには琉球王国が武器を持たない平和を愛する民の集まりであったことが絵巻等を通して描かれていました。彼らは近隣のアジア太平洋の国々と積極的に友好関係を築いたり貿易をしたりしていて、#10 で紹介した首里城の造りが中国の城に似ているのもその例です。しかし明治政府の武力を背景にした「琉球処分」によって琉球王国は日本化を進め、日本政府の近隣諸国への進出の意向にかつての武力を持たない琉球王国の住民たちは巻き込まれていきます。
資料館には遺品や証言、瓦礫や薄暗いガマの中の様子を表す実寸大模型があり、臨場感を持って当時の一般住民たちの感じた恐怖を感じました。また、米軍に殺されるくらいならという理由で日本兵による住民の虐殺が沖縄であったことも語られていました。
中でも特に印象的だったのは、高齢の女性の方の証言でした。証言映像は特に多く収められており全てに目を通すことはできなかったのですが、ヘッドホンをつけて数ある証言映像の中から一つを選んで耳を傾けました。その映像に映る女性は学生であった当時の友人と共に米軍の爆撃を受け、隣で共に倒れ込んだ友人は即死して自分だけが偶然生き残ったという話をしていました。友人の死に様を説明している部分はとても生々しく、生きていることの奇跡を物語る証言でした。同時に、もし自分が生き残った彼女であったらその経験を乗り越えて語ることはとても勇気のいることだと思い、彼女の経験から生まれる強い戦争への憎しみや未来の沖縄の平和への願いをひしひしと感じました。
そして資料館の中には、戦後の米軍の収容所での生活を強いられた住民たちの写真や戦後の米軍に占領された沖縄のまちの再現も展示されてました。米軍に占領されたまちは英語の看板が並ぶだけでなく、フェンスにも囲まれていました。そして展示の最後には米軍の占領からの復帰を求める運動や現在も続く米軍基地反対運動へ、自分たちの生きてきた土地を理不尽に奪われたことに対する強い怒りを持って参加する大人たちの写真や言葉が展示されていました。
地上戦の歴史を学びに行ったのでまさか展示が琉球王国時代から始まり現代の基地問題で終わるとは予想外でしたが、全ての歴史を通して沖縄を見ることでより深く、地上戦や日本政府そのものが沖縄の人たち、とくに戦闘が激しく多くの住民を犠牲となった本島南部の人たちにもたらす意味を知ることができました。
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琉球王国が明治政府によって日本化された時代、日本で唯一の地上戦の地とされた時代、アメリカに占領された時代、そして国内最大規模での米軍基地が存在する現在まで、沖縄の人たちが絶えず受けてきた痛みというものは戦争によって家族や友人や生活の土地を理不尽に失うということに限ったものではありません。
彼らが未だに感じている痛みはもっと深く、自分たちの手で自分たちの未来を選ぶことができない、そして自分たちの手で自分たちの家族や友人、そして子孫の命を救えないということに対する痛みでもあるのです。そして、その深い傷や厳しい現実に十分な関心を向けてもらうことや救いの手を差し伸べてもらうことも未だできないというという痛みでもあるのです。
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