洗濯物を2階に運ぶのが大変なあなたに。明日から出来る工夫4選!
こんにちは!作業療法士のハルです。
皆さんは、洗濯物をどこに干していますか?
我が家は主に、2階のベランダに干しています。そういった方は多いのではないでしょうか?
そこで出てくるのが「洗濯物を2階に運ぶのって大変…」という悩み。
それもそのはず!3人家族の我が家の水を吸った洗濯1回分の重量は、なんと約6.6㎏もありました。
実はこれ、2リットルのペットボトル3本分とほぼ同じ重さなんです。
これをほぼ毎日、2階に持ち運ぶことを考えると、普段洗濯物干しをされている方はもちろんのこと、病気やケガをされている方、力が弱くなってきたご高齢の方や妊婦さんは、なおのこと大変ですよね。
この記事では、”重い洗濯物を運ぶ”という作業が少しでも楽になるよう、明日からでも出来る工夫を、作業療法士の視点からお伝えします。
「作業療法士」は、普段私たちが何気なく日常生活で行っている活動(=”作業”と呼びます)が、何らかの理由によって行うことが難しくなっている方を対象に、リハビリテーションプログラムをつくります。
作業療法で取り扱う”作業”には、食べる、家事をする、仕事をする、遊ぶ…といった、私たちの日常生活に関わるすべての活動が含まれます。
つまり、”洗濯”も作業のひとつなのです。
そもそも運ぶ大変さはどこから…?
「洗濯」という作業は、主に以下の作業工程に分けられます。
この中でも、今回取り扱う”持ち運ぶ”という作業工程には、次のような要素が含まれているため、身体に負担がかかり大変さを感じやすいのです。
1、かがんで持ち上げる姿勢
洗濯かごを持ち上げる際には、一度前屈みの状態になります。
スウェーデンの整形外科医 ナッケムソンの研究によると、立っている姿勢の椎間板内圧を100%としたとき、立っている姿勢から前屈みで荷物を持ち上げる作業では、220%、つまり約2倍の負荷が椎間板にかかっています。
つまり、約6kgの洗濯かごを持ち上げるときに腰にかかる負担は12㎏ということになります。これは腰を痛める原因になりやすい姿勢です。
2、持ち上げながら移動する
洗濯物を運ぶ作業は、「持ち上げる」+「移動する」という2つの要素が組み合わさった動きです。
実は「持ち運ぶ」動作については、腰痛予防の観点から、労働基準法によって職場で持ち運んでよい荷物の重量が定められています。もちろん洗濯物にそこまでの重量はありませんが、「持ち運ぶ」という動作自体が身体に負担を与えるということは、ここから容易に想像できるでしょう。
さらに洗濯に伴う移動では、階段を上り下りする垂直方向の移動と、同じフロア内を歩く水平方向の移動があります。
膝や腰に痛みや動きづらさがある方や片麻痺の方など、移動すること自体に大変さを感じている方には、身体への負担を感じやすくなる作業といえます。
3、バランスのとりづらさ
洗濯物を運ぶ作業ではもうひとつ、転ばないようにバランスをとりながら移動する必要があります。
洗濯かごを持った場合、持ち方によっては前方や片側だけに重さがかかるため、バランスが崩れやすく転倒リスクが増えます。
また狭い廊下や階段では、洗濯かごで足元が見えなかったり、壁にぶつかることも考えられます。
バランス能力に影響を与える要因としては、以下のようなものが挙げられます。これらの機能は加齢に伴い低下するといわれており、直立姿勢を保持する能力では、60歳頃から機能低下が認められるという報告もあります。
そのため、大変さを感じやすくなるのです。
洗濯物運びを楽にする工夫4選
以上を踏まえると、「持ち運ぶ」工程を楽にするポイントは次の3つです。
では上記のポイントを踏まえ、具体的な方法についてお伝えしていきます。
1、洗濯かごを変える
両手で洗濯かごを持てない場合
片麻痺や骨折で片手しか使えない方や、杖を使用していて両手で洗濯かごを持てないという方には、ショルダータイプやリュックタイプ、肘にかけられるバッグタイプの洗濯かごがおすすめです。
1回に運べる量は少なくなりますが、手が空くため移動する際の転倒リスクを減らすことができます。
また洗濯機から取り出す・干す工程でも、洗濯かごを下に置く必要がないため、写真のように前屈みの姿勢をとることなく、洗濯物を干すことができます。
当社の「洗濯ネットバッグ」は、肘掛けタイプです。
物干し竿にS字フックをつけ、そこに洗濯ネットバッグをかければ、こちらも屈まずに洗濯物を取り出して干すことができます。
洗濯かご自体の重さを軽くする
普段お使いの洗濯かごの重さは、どのくらいありますか?洗濯かごの素材を変えることで、かご自体を軽くするのもひとつです。
4人家族の1回の洗濯量が入る、33L容量の洗濯かごで比較してみましょう。
「布製」は、400~700g前後と軽いものが多く、中の洗濯物を隠せるのが利点。一方で通気性は低いため、洗濯物を溜め込まない方が良いでしょう。メッシュタイプにすると、約400gという軽さに加え通気性も良くなります。
他に通気性が良いのは「プラスチック製」や「金属製」のもの。
「プラスチック製」は600g前後の軽さや、手入れのしやすさが利点です。
「金属製」は、手入れのしやすさやデザイン性に優れていますが、約1.3㎏と重さがあります。
洗濯かごを選ぶときは
以上を踏まえ、洗濯かごを選ぶときは、ご自宅の環境に合わせ、下記を参考にお好きなデザインのものを選ぶとよいでしょう。
2、1回の洗濯物の量を減らす
溜め込まない
1人暮らしで1日の洗濯物の量が少なかったり、雨が続く日には、何日分かまとめて洗濯する方も多いでしょう。まとめて洗濯すると、1回の洗濯量はその分多くなるため、運ぶ観点からすると負担が増えてしまいます。
取り込みやたたむ作業にかかる時間も増えてしまうため、身体の負担や時間を節約したい方は溜め込まないほうが良いでしょう。
分けて運ぶ
1回で運ぶ量が減るため、移動や持ち上げる際の身体の負担は減ります。
何度か往復しなければならないため移動距離は増えてしまいますが、次に紹介するような、洗濯物によって干す場所を変えるといった工夫を組み合わせれば、負担を減らすこともできます。
大きい洗濯物は洗濯機と同じ階で干す
シーツやバスタオルなど、サイズの大きい洗濯物は水分を含むとさらに重たくなります。その重さは、脱水後のシーツで約0.9㎏。
サイズの大きい洗濯物だけでも洗濯機と同じ階に干すことで、垂直移動を減らし、身体への負担を減らすことができます。
買い替えのタイミングで洗濯機を小型にする
高齢の方であれば、洗濯機を買い替えるタイミングで、洗濯機の容量を小さくする手もあります。一人あたりの1日の洗濯物は約1.5kgが目安なので、衣類+タオルや寝具などを洗うことも考えると最低でも5kgほどあればよいでしょう。選ぶ際には、次のようなポイントに注意してみましょう。
3、持ち上げずに転がす
キャスター付き洗濯かご
干し場までの動線に垂直移動がないのであれば、キャスター付きの洗濯かごに入れ転がして運ぶという方法もあります。これなら量が多くても一度で運ぶことができますし、持ち上げる負担を減らすことができます。
持ち手部分が、腰を曲げずに持てる高さのものを選ぶと移動が楽になります。さらにかごの部分が取り外せるタイプだと、干す際にも屈まずに済むので作業が楽になりますよ。
歩行車にのせる
高齢の方で歩行車を使用している方であれば、歩行車に乗せられるサイズの洗濯かごを用意することで、ご自身で洗濯物を運ぶこともできます。
4、動線を変える
”動線を変える”と聞くと、間取りを変えたり、ランドリールームを作るといった大がかりなイメージがあるかと思いますが、ここでは明日から出来る動線の工夫をお伝えしたいと思います。
2階から1階に干し場を変える
そもそも2階に運ぶことをやめるという方法です。1階に干場を用意できる方は、屋外用の物干しスタンドを用意すると、手軽に干場を確保できます。
その際は、胸~腰の高さで干せる高さのものを選ぶと、干す・取り込む作業も楽になりますよ。
部屋干しにする
部屋干しにすることで、移動距離を短くすることができます。
ここで気になるのは、匂いや乾きづらさ…。そうならないために、
上手に部屋干しするには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
《① 洗う前:洗濯槽に菌を持ち込まない》
生乾きのニオイの原因は「菌の繁殖」です。菌が繁殖しやすい環境は、衣類が濡れた状態が長時間続くとき。そのため、脱いだ衣類は洗濯機の中ではなく、通気性の良い洗濯かごに入れましょう。また、濡れた衣類と乾いた衣類も分けておきましょう。
《② 洗い方:洗濯物に菌を増やさない》
洗濯機への衣類の入れすぎは、汚れが取り切れず匂いの原因になります。
洗濯機に入れる量は、洗濯槽の7割が目安。洗濯ネットに入れる際にも、詰め込まないように注意しましょう。
抗菌対策ができる洗剤を使用するのもひとつです。
《③ 干し方:空気の通り道をつくる》
干す際には、風をしっかり当てて水分の蒸発を助けながら、部屋の湿度を下げて短時間で乾かすことが大切です。適切な部屋の湿度目安は40~60%。湿度60%を超えるとダニやカビが発生するリスクが高まるといわれています。湿度対策には、窓を開けたり、エアコンの除湿機能や衣類乾燥除湿機のようなアイテムを活用するのが良いでしょう。
干す場所は、風通しの良い広めの部屋や廊下や、浴室、洗面室がおすすめ。さらに空気が動きやすい、部屋の中央や天井付近がおすすめです。
扇風機やサーキュレーターを、洗濯物から1mほど話して首振り運転すると、まんべんなく風を送ることができます。
干し方は、空気の通り道ができる「アーチ形」がおすすめ。中央に短い衣類、両外側に長い衣類を吊るします。また、ハンガーを複数吊るす場合は、少なくともこぶし1つ分は間隔を空けて干すと良いでしょう。
実は部屋干しには、紫外線による衣服のダメージも少なくなり、梅雨や花粉の時期も気にせず干せるメリットもあります。
こちらの記事では、部屋干しに変えた実体験を踏まえた、洗濯を楽にする方法が紹介されているので、部屋干しについてより詳しく知りたい方はぜひ読んでみてくださいね。
自分に合った工夫でもっと楽な洗濯ライフを!
ここまで、洗濯の中の「持ち運ぶ」工程に焦点を当てて、楽に運ぶ工夫をお伝えしてきました。
「楽に運ぶ工夫」のポイントをまとめると、次のようになります。
私たちが普段何気なく行っている「洗濯」という作業。
今は面倒だなと思っていても、病気やけがでそれが出来なくなったとき、大事な作業だったと気が付くこともあります。
どんなときでも、少し工夫することであなたの大事な作業に取り組めるようになりますように。carewillは、”自分でやりたい”、そんな気持ちを応援します。