【現代詩】『作文の時間』
『作文の時間』
赤黄緑紫
教室にいる30人の同級生
いつもは喧嘩をしたり
悪口を言われ戯れている
どこにでもいる8歳の子供たち
思い思いに時を使い捨てて、ゆける
若き、同級生諸君
けれども
あの日のあの時あの場所で
霧が晴れて歯車が
ピタリとあった瞬間を、俺は見た
あらゆる苦悩や内実を孕んだランドセル
それを各々の机に凭(もた)せ掛けて置き
ーみなが平等になり澄ますー
同じ姿勢で全員が
西の方角を向いて沈黙する
出汁をとられる煮干の様に
その姿は愚直で、あまりにも素直だ
ふとー。
黙考している彼らの横顔を 目にしたとき
俺は前世で見たかもしれない
薄く霧がかかった中国の蒼い山さえもを
そこに想起するー。
〜〜〜
何を書こうが構わない、さ
たとえそれが=残虐不様=であろうとも
頭の中で考えることは其々自由、だ
俺達はそれを、互いに許しあおう
主張や意見の腸を
分かり合える日は
きっと、ずっと、来ない ん だから
〜〜〜
そんなこと、実は心の奥底で
既に知っている、弱冠に満たぬ
戦士たち
〜〜〜〜〜〜
だけど
あの時ばかりは信じられた
全員が心を一つにしている光景
教室いっぱいに広がって
俺をやさしげに包んでくれた
頼もしさ が
ほら、そこには
あったじゃないか
〜〜〜〜〜
言葉を書く時それは同時に
言葉を口では発せない時
けれども心は饒舌に
=言ふ=ことができる
言葉という有限な資源で
態(わざ)と誰かを傷つけてしまうのは
余りにも勿体無いから
〜〜〜〜〜
まだ、どんな人生も
展開されていない君へ
花束を捧ぐための詩
あかきみどりむらさき
2024ねん