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「名作小説のコミックス」から学んだ思い出
2022年の本屋大賞及び第11回アガサ・クリスティー賞、さらに第9回高校生直木賞も受賞した逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)が文庫になりました。併せてコミックスも発売されています。
単行本読了時に読書メーターへ書いたレビューの一部を紹介させてください。
これまでに読んだ全小説の中で最高傑作のひとつ。独ソ戦の物語でなぜクリスティー賞という疑問も氷解した。気配を悟らせない一流狙撃手さながらな至高の伏線に叫んだ(中略)ああはなりたくない。でも理不尽な死と隣り合わせな日々が続いたらならないとは断言できない。だから戦争はなくそう。ぜひロシア語とウクライナ語に翻訳を。
未読の方は、これを機にぜひ。
名作小説のコミックスといえば、忘れられない思い出があります。
10数年前、ずっと気になっていたジョージ・オーウェル「一九八四年」(ハヤカワepi文庫)を読み始めました。しかし半分ほどで挫折。歪にして陰鬱な世界観が息苦しかったうえに、どの登場人物にも感情移入するのが難しかったのです。
軽く落ち込んでいたところ、当時の同僚が↓を貸してくれました。
版元はPHP研究所。アマゾンでは電子書籍しか出て来なかったので、紙の本は版切れかもしれません。
衝撃を受けました。挫折した場面の続きに触れ、予想外の展開に本気でビビるやら打ちのめされるやら。そして終盤の重い重いひと言。
これはムリだ。そう思い、原作をそっと部屋の書棚へ仕舞いました。次に引っ張り出したのは9年後。その時はすでに免疫めいた何かを獲得していたのか、意外なほどスムーズに読了できました。
原作だからこそ伝わるものがあったのは間違いない。しかし両方読んだうえでの感想ですが、ラストはいまでも小説ではなくコミックスのそれで記憶に焼き付いています。原作の方をだいぶ後に読んだにもかかわらず、上書きされずに踏みとどまったのです。小説版では印象に残らなかったある人物の顔が。
コミックスにしか持ち得ない力がある。漫画ならではの響き方というものが存在すると学んだ次第です。
興味あるけどいきなり分厚い小説は、と躊躇した方はぜひコミックスを。原作読んでるし漫画はいいかなという方にも、ハヤカワ・コミックスさんのサイトで第一話を試し読みすることをオススメします。作品に対する熱がかつてとは微妙に異なる角度で、以前と変わらぬ胸を掻き毟りたくなる激情とともに沸き上がってくるはず。少なくとも私はそうでした。
コミックス「同志少女よ、敵を撃て」集めます。
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