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「竜馬がゆく」≒「○○○○」論

皆さまに質問です。

日本における「国民的作家」の「国民的代表作」をひとつ挙げるとしたら?

私は夏目漱石「こころ」と答えます。老若男女を問わず誰もが知っていて、読んだことのある人が圧倒的に多いから。いまでも文庫本がコンスタントに売れているし、迷いは皆無です。

しかし「もう一作選んで」といわれたら悩みます。頭に浮かぶのは宮沢賢治「銀河鉄道の夜」か司馬遼太郎「竜馬がゆく」。太宰治「人間失格」も入れたいけど「国民的」にカテゴライズするのは違う気がします。いい意味でアウトローというか。

ただ↑に挙げたなかで(イチ書店員の主観ですが)もしかしたら「竜馬が~」はいちばん現代の若い人に読まれていないかもしれない。だからこそ今村翔吾さんに期待しています。

司馬さんの創り上げたキャラクターが実際の坂本龍馬であるかのように受け取られ、世間一般におけるイメージとして定着したことは間違いなく偉業でしょう。同時に、そろそろ「新訳」が出てもいい頃合いかなとも感じます。

もし新しい龍馬像が世に容れられても、その結果を受けて司馬さんの作品が消えるとは思いません。本屋で村上春樹さんが訳したサリンジャー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を見つけたら、高確率で野崎孝訳の「ライ麦畑でつかまえて」が横に並んでいるように。読み比べて違いを味わう楽しみもあるし「まずは『ライ麦畑』から」というお客さんが少なくないのです。

史実をしっかり網羅し、かつ究極的な部分で作者による解釈が滲み出る。書かれた時代の風潮も色濃く反映される。戦のない世界を願う時代小説家・今村翔吾が令和の読者へ向けて書く坂本龍馬像、ぜひ読みたいです。

「45歳から龍馬を書こうと思っているんですよ。一番、心技体がそろった45歳に」とのこと。5年後。うん。気長に待ちますか。

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