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「挫折」ではない一歩
いまのところ全て購入しています。
最新の7号は、オーストラリアで撮影された2時間スペシャル「笑うカンガルー」です。数学者が登場する回ゆえか、いわゆる「理系ネタ」のスパイスが随所に効いていて頭を刺激されました。
95年のTV放送時は、たぶん陣内孝則さん扮する犯人の身勝手さにイライラしたはず。才能溢れる相棒にパラサイトし、なおかつ嫉妬の腹いせに女房を奪った俗物じゃないかと。でもいま見ると、ちょっと彼を気の毒に感じました。非常事態におけるとっさの機転も見事。ただのスポークスマンではなかった気がします。そしてある意味で彼こそいちばんの被害者かも。
詳しくはぜひDVDを。
ところで、この話には三谷作品の定番のひとつである「ファルコンの定理」が登場します。300年以上解明されなかった数学界の謎という設定。興味ゼロだった当時は「ふーん」とスルーしたのですが、数年前に↓を読んだ際「これが元ネタか!」と叫びたくなりました。
書かれている内容を完全に理解できたとは言えません。いや、率直に書きます。ほとんど「?」でした。でもある種の名著は繰り返し読むことで少しずつ己の血肉へ取り込んでいくもの。いい機会だから再読しようと思い、ページをパラパラ捲るとあちこちに線が引いてありました。初読時に心の琴線を震わせた箇所でしょう。
「数学においては、年齢とともに積み重なる経験などよりも、若者がもつ直感や大胆さの方が重要であるらしい」
「著名な大学教授がなにごとかを間違いなく正しいと言ったなら、翌日にはそれが間違いだと証明される確率が高い」
「数学は他のどのような学問にもまして主観を排した学問だ」
「ある理論が正しいかどうかは、人の意見には左右されない」
数学のことはよくわからなくても「ほう」となりませんか? そういうのもいわゆる「難解な読書」の醍醐味です。わかろうと頭をフル回転させることで、わからないなりに何かを拾い得る。たとえ本の訴えたい趣旨とは異なるものであっても、自分だけの財産としてしっかり蓄積されるのです。
「どうせ理解できない」「読んでも時間のムダ」と遠ざけていたら、いつまで経ってもゼロのまま。元プロレスラー・前田日明さんが「ゼロは何を掛けてもゼロだよ」と発言していたのをどこかで見ました。たしかにゼロとイチとでは大違い。500ページのうちのたった5ページでも心の震える箇所があれば、それがキッカケで新たな生きがいに出会えるかもしれない。
「ゴールデンカムイ」でアイヌの文化や歴史を知りたくなった方や「チ。」で宗教学や地動説に興味を抱いた人に提案があります。ぜひ重厚な専門書にチャレンジして欲しい。途中で投げ出してもいいのです。それは決して挫折ではありません。ゼロから一歩、確実に前へ踏み出してますから。
リアル書店なら、基本的にどのページも立ち読みできます(推奨するわけではありませんが必要なことだと認識しています)。もし「ほう」となる何かに出会えたら、どうぞそのままレジへ。お待ちしています。
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