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いま紹介したい「佐々涼子さん」の名著

お会いしたことはありません。

著書の内容や文体から「この人は熱いし信用できる」「末端が日々接する理不尽の実態をわかっている書き手だ」と感じていました。実際、読む前と後で世の中や人間(己も含む)に対する見方が一変する名著ばかりです。

最も印象深いのは、2014年に発売された↓でしょうか。

出版社は早川書房。2017年に文庫版も出ています。

初読時に読書メーターへ記したレビューを紹介させてください。

言葉が出ない。本好きを自称しながら本の紙を誰がどうやって作っているかなど考えた事も無かった。日本で製造する本は退色しにくい中性紙だとか文庫本は出版社別に紙の色が違うとかコミック誌は子どもが手を切らない様に、などの配慮も知らなかった。震災後も普通に本を買えた事の裏にあった、壮絶という一言では語り尽くせぬドラマに関しても無知だった。震災時の現地の話は正直読んでいて辛い。でもよくぞこの本を出してくれた。心からそう思う。主要人物がみんな人として素敵過ぎる。ただただ頭が下がる。紙の本を愛する全ての人々にお勧めです。

2017年の3月11日に二度目の読了をしました。まったくの偶然。本を読み続けていると、しばしばこういう現象が起きます。その時に書いたレビューがこちら。

再読。今日読み終えるのを狙ったわけじゃない。きっと日本製紙石巻工場の紙で作られた本が「一丁前に疲れてんじゃねえよ!しっかりしろ」と励ましてくれたのだ。色々ある。まだ生きていられるからこそ色々ある。この本が教えてくれるのは人の弱さ卑小さ汚さ身勝手さ。そして追い詰められた時の底力と信じる気持ちの可能性。想像も及ばぬ壮絶な逆境を跳ね返し、紙を作り続けてくれて本当にありがとう。いつか私が本を出す時は、ここで紙を作って頂きたいと思った。売れないだろうけど少しは恩返しになるかな。ささやかな夢。次の奇跡は自分で起こす。

電子書籍を否定はしません。私もお世話になっています。でもほしい情報を得て終わりではなく、読むことで「問い」をもらい、何らかの「答え」を己の頭で考えていく読書には紙の本が適しています。さらに手触りや重み、匂いなどを楽しめるし、美術品としての要素も備えている。

もしペーパーレスが当たり前になり、すべての書籍が電子で一本化されたら? べつに困らないという人もいるでしょう。そっちの方が多数派かもしれない。私は困ります。働き場がなくなるから? それもある。しかし最大の懸念はプルースト「失われた時を求めて」やメルヴィル「白鯨」といった長くて難解な古典文学が失われてしまうのでは、ということ。

少なくとも私は、あの内容とボリュームをPCやタブレット、スマホでは読み通せません。ああいう名作を咀嚼し、自家薬籠中のものとするにはどうしても紙の本が欠かせない。

ここ数年、新聞やネットニュースで「本の文化を守れ」という記事をよく目にします。ありがたい。ただ出版社や取次、書店に関する話がほとんどで、製紙工場で働く人へ目を向けたものは少ないような(かくいう私もこのnoteを書いていて気づいたのですが)。イチ書店員として、いまこそ「紙つなげ!」を推すタイミングだと感じました。

これからも読み続けます。売り続けます。佐々さん、ありがとうございました。

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