A piece of rum raisin - 第1ユニバース第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)
A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
ガンマ線バーストの話をメグミちゃんに解説させました。
メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説
登場人物:
宮部明彦 (第一ユニ):1970年12歳転移、1986年28歳
加藤恵美 (第一ユニ):1978年20歳転移、1986年28歳
森絵美 (第一ユニ):1978年20歳転移、1986年28歳
島津洋子 (第一ユニ):1979年27歳転移、1986年34歳
小平 (第一ユニ):1981年33歳転移、1986年38歳
湯澤 (第一ユニ):1981年23歳転移、1986年28歳
アイーシャ(第一ユニ):1981年23歳転移、1986年28歳
極超新星爆発(第一ユニ):2025年、ガンマ線バーストでの全種の滅亡
極超新星爆発(第三ユニ):2025年、ガンマ線バーストでの全種の滅亡
極超新星爆発(第二ユニ):2025年、ガンマ線バーストの目標から地球は逸れる
A piece of rum raisin - 第1ユニバース
●4つの宇宙
マルチバース(多元並行宇宙)は可能性のある複数の宇宙の集合である。多元宇宙はすべての存在を含み、そこには、われわれが一貫して経験している歴史的な宇宙に加え、空間、時間、物質、およびエネルギーの全体と、そして、それらを記述する異なる物理法則および物理定数なども含まれる。
そういう無限に存在する宇宙の中で、空間、時間、物質、エネルギーの全体、それらを記述する物理法則および物理定数が非常に似通った宇宙が隣接し並行して存在していた。
その中で、4つの宇宙の話をしよう。これはその中の第1ユニバースのお話。
ブラックホールに飲み込まれたものが、ホワイトホールへ向かって移動する際に通るトンネルのような領域のことをワームホールと言う。実際に、物質がブラックホールに飲み込まれたら、ブラックホールの潮汐力によって引き伸ばされる。ブラックホールに近づきすぎた恒星でさえ、その強大な潮汐力によって引き裂かれてバラバラになり、ブラックホールに呑み込まれてしまう。もちろん、生物が生き延びられることはない。その生物のデータを除いては。
ブラックホールに飲み込まれたものが、同じ宇宙(ユニバース)にあるホワイトホールから出てくることもあるが、多元宇宙(マルチバース)世界の別の宇宙(ユニバース)にあるホワイトホールからも出てくるものもある。
なぜか、多元宇宙(マルチバース)は、ブラックホールとホワイトホールの物質のやり取りによって、物質の総和を保ち、均衡しているようだ。そして、やり取りされるものは、物質だけではない。データもやり取りされているのだ。生物のデータすらも。
そういった無数にあるマルチバースの中に、非常に近接した(つまり、その世界の様相が似通った)4つのユニバースが存在した。それらを仮に第1、第2、第3、第4ユニバースと呼ぼう。無限に伸びる4つの時間線で、極小の地球という世界、その中で、西暦と人類が呼んでいる時間の1970年代後半から2025年頃までにさまざまなことが地球に起こる。
●第3ユニバースの小平博士と彼の助手のメグミが発見したこと、2008年
第3ユニバースと呼ばれる世界の2008年頃の日本で、東京大学宇宙線研究所主任研究員の小平一平博士と彼の助手の加藤恵美博士は、ニュートリノの研究に従事していた。彼らが気づき始めたのは、ある方向からのニュートリノの漸次的増大だ。その方向には、地球から150光年の距離を隔てて、ペガスス座IK星Aがあった。ペガスス座IK星Aの自転軸は観測によると地球を向いている。その角度のズレは0.5度である。
ペガスス座IK星Aは、いつ極超新星爆発を起こしてもおかしくない恒星である。爆発が起こった時は、致命的な電磁波が発生する。その流出は自転軸に沿って、円錐状に角度二度でライフルの弾丸のように打ち出される。電磁波の中には、ガンマ線も含まれている。それらの電磁波が飛来する前に、爆発によって発生したニュートリノが飛来するという研究結果がある。
小平と加藤は、ニュートリノの漸次的増大の統計データにより、ペガスス座IK星Aが極超新星爆発する可能性が、第3の時間線の2021年から2025年の間と予測した。
第3ユニバースの2008年9月、小平と加藤、そして、森絵美博士は、スイスとフランスの国境にある世界最大のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)を有するセルン(欧州原子核研究機構)を訪問していた。そこには、偶然、日本のKEK(高エネルギー加速器研究機構)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)から派遣された宮部明彦博士、湯澤研一博士も滞在していた。広報担当として、日経サイエンス契約ジャーナリストの岬麗子も同道していた。セルンで彼らを迎えたのは、主任研究員の島津洋子博士とアイーシャ・ジャヤワルダナ博士だった。
彼ら八人がセルンの島津のオフィスで、LHCの始動に祝杯をあげていたその時、溶接漏れからのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)のヘリウム流出事故が発生した。超伝導状態が維持できなくなり、クエンチ(急速なヘリウムの冷却現象の終息)が起こった。
制御不能の大量のガンマ線から対生成が発生し、と陽電子が流出した。既に、5TeVエネルギー(5兆電子ボルト)相当まで電流を上げていたLHCがニュートリノ、陽電子、ガンマ線をどの程度が放出してしまったのか、放射線検出器が飽和状態になってしまったので、未だにわからない
その時、偶発的に第3ユニバースと第1ユニバースを結ぶワームホールを通って、彼らの部分的な記憶データが、第3から第1へと、逆に、第1から第3にも移動した。
●第3ユニバースの湯澤とアイーシャによる記憶転移装置の開発
この奇妙な現象に興味を持った湯澤とアイーシャは、人為的に記憶データを他のユニバースに送信する方法を研究し始めた。
その研究で、第3ユニバースと第1ユニバースの時間線は、第3が25年先行している(つまり、第3が2025年の時、第1はまだ2000年)こと、第3と第2はほぼ同じ時間線であることが判明した。
つまり、彼ら八人の記憶データをさらに第1の彼ら(類似体と呼ぼう)に送信できれば、第3よりも25年遅れている第1で、極超新星爆発によるガンマ線バーストでの種の大量絶滅を防ぐ対策を立てられるのではないか?と小平は考えた。
2010年、不完全ながらも湯澤とアイーシャの記憶転移装置は完成し、密かにKEK(高エネルギー加速器研究機構)に設置された。まだ、ガンマ線と陽電子のエネルギーが必要なために、KEKの加速器が必要だったのだ。
2010年、彼らは前回の偶発的な部分記憶転移ではなく、彼らの類似体への全記憶転移を実行した。宮部の転送は、彼が十二才の1970年に、加藤は二十才の1978年に、森と島津は、彼女らが二十一才、二十八才の1979年に、小平、湯澤、アイーシャは、彼らの三十三才、二十二才の1981年に起こった。なぜ、同じ年月日におのおのの記憶が転移しないのかは、この時、湯澤とアイーシャにもわからなかった。それはユニバースの調整機能だったのだが。
そして、第3と第1では、メンバー八人の生年月日が多少異なっていた。しかし、80年代から数えて、極超新星爆発が起こるであろう2025年頃まで40年以上の時間がある。第1ユニバースのメンバーはみな若かった。問題は、80年代、90年代では、加速器や転移装置を製造する半導体技術が成熟していないことだった。
宮部は、第3ユニバースの歴史を元に、米国株式市場でグループの資金を稼ぐために株投資を行った。
90年代から2000年代にかけて、株が最も高騰するのは米国IT市場である。マイクロソフトやデルは株式公開時の株価から六百倍から千倍にもなった。株式分割などのデータを利用して、第一のグループは、2000年代には数兆円の資産を持つことができた。もちろん、この資産は、第3や第2には送れないのだが。
●第2ユニバース
その頃、湯澤は、改良型の記憶転移装置のデータを解析していた。そして、第2はどうなっているんだろう?と思い、記憶データが同調できる個体、類似体を探っていた。すると、メンバーの類似体が発見できた。第2の1986年頃だ。森絵美の類似体は発見できなかった。湯澤は、第2ユニバースでは、森絵美はその時間軸では存在しない、たぶん死亡したと想像した。
ところが、奇妙なことに、森絵美の思考の波長と似たような類似体があった。湯澤はその時、気づかなかったが、なぜか、第4ユニバースの森絵美の記憶が、森絵美の高校の同級生の神宮寺奈々に転移していたのだ。
第2ユニバースの森は、ニューヨークで『NWO(新世界秩序)』という秘密組織のことをFBIのアシスタントという立場で調査していた。第3ユニバースでは、NWO(新世界秩序)は、超新星爆発によるガンマ線バーストの直撃を回避する活動を妨害していた。
第2の森がNWOという秘密組織の実態を調べ上げることができる、という可能性に賭けて、加藤、森、島津、宮部は、第3から第2への記憶転移を実行した。
第4話 洋子の不覚醒1 P.2
1978年12月1日(金)に続く
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