#村上春樹
ダンス・ダンス・ダンス Dance dance dance
村上春樹さんのファン(村上主義者)としては『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』は好きな作品群です。その先にあるのが『ダンス・ダンス・ダンス』です。未読の方のために多くは語りませんが、単独で読んでも充分興味深い作品です。
個人的には、主人公の「僕」と同じようなライター稼業をしていた、当時の私にとっては「文化的な雪かき」という意味合いは他人事ではありませんでした。全体の印象
練馬ナンバーの黒塗りのタクシーの運転手の正体とは? What is the true identity of a black taxi driver with a Nerima license plate?
村上春樹さんの初期の短編集に『カンガルー日和』(刊・単行本=平凡社 文庫本=講談社/絵・佐々木マキ)があります。どの短編も春樹ワールドが楽しめますが、今回は「タクシーに乗った吸血鬼」を取り上げます。
渋滞した道路上でタクシーの車内に閉じ込められる僕と運転手の会話で構成される短編です。私は単行本(1983年)で読み、後に文庫本(1986年)で読んでいます。単行本で読んだ時は大学生で、文庫本で読ん
1961年6月25日、日曜日。Sunday, June 25, 1961.
ビル・エヴァンスは私の好きなジャズ・ピアニストの一人です。私にジャズを教えてくれた大人たちのほとんどは、もっとハードで哲学的なジャズが好みであったようで、エヴァンスに対しては、ただのBGMだとか、家具みたいな音楽だとか、とにかく甘いだとか、どちらかといえば否定的でした。
実際に自分で聴き始めてみて、数十年経ちますが、家具のように、ただそこにある、甘いBGMであるにしても、それも一つのジャズであ
納屋は焼かれたのか? Was the barn burned?
ときどき読み返す大切な本が私にはあります。その中の一冊が『螢・納屋を焼く・その他の短編』(村上春樹著・新潮社刊)です。
収録作品の「螢」は、のちのベストセラー「ノルウェイの森」の原型で、哀愁溢れる短編です。最後の螢が消えていくシーンは、夏の終わりであり、青春の背中を見送るような心持ちになります。
一方、収録作品の「納屋を焼く」は、かなり奇妙な短編です。この短編集の中では、この作品が最も好きで
KEEP CALM AND READ ... . 気を落ち着けて、…を読もう。
先日、『村上T 僕の愛したTシャツたち』(村上春樹著・マガジンハウス刊)を読みました。190頁に「この本は『ポパイ』二〇一八年八月号~二〇二〇年一月号に連載されたエッセイを書籍化に伴い加筆、修正したものに、インタビューをあらたに加えたものです。」と書かれています。つまり、そういう単行本です。
この本の中で、私の好きなTシャツは5頁に登場する「“TONY”TAKITANI Houser D」(T
彼女はリリー。She is Lily.
私の好きな作家の一人が谷崎潤一郎です。『細雪』の絢爛豪華なドロドロも素晴らしいですが、今回は猫を主人公にした小説を紹介します。タイトルは『猫と庄造と二人のをんな』です。中公文庫版は「をんな」表記ですが、新潮文庫版は「おんな」表記です。新潮版は中公版を底本にしているそうですから、中公版で充分かもしれませんね。中公版の良いところは「ドリス」という作品も同時収録されているところです。この未完の小品も素
もっとみる旅行中。Traveling.
私の好きな作家(村上春樹)が好きな作家(トルーマン・カポーティ)の『ティファニーで朝食を』(トルーマン・カポーティ著/村上春樹訳/新潮社刊)の好きなセンテンス(単行本の16頁より)。
そのアパートメントに移ってきて一週間ばかりたった頃、二号室の郵便受けの名札入れにいささか風変わりなカードが入っているのが目にとまった。社交用の名刺みたいにあらたまった書体で印刷されており、「ミス・ホリデー・ゴラ
「何が起こる?」 "What happens?"
『ストッキング』(村上春樹著)という超短編が好きです。『夜のくもざる』(単行本は平凡社刊/文庫本は新潮社刊)に収められています。ちなみに新潮文庫のカバー裏の紹介文には「ストッキング」は「読者が参加する小説」と書かれています。「よろしいですか、想像してみてください。」から始まり「十五秒で答えてください。ちくたくちくたく。」で終わります。文庫本では158頁から164頁までです(そのうちの162頁から1
もっとみる完璧な文章などといったものは存在しない。 There's no such thing a perfect piece of writing.
『風の歌を聴け』(村上春樹著)の冒頭です。noteを書く私の背中を押してくれる言葉です。
そして、この言葉は「完璧な絶望が存在しないようにね。」と続きます。
私は、明日への出口が見つからず、絶望が迫ったとき、呪文のように唱えます。この言葉は私の心を守ってくれます。
完璧な絶望が存在しないと信じることができるなら、希望がどこかに発見できるはずです。諦めずに探せば必ず出口はある…。
樹上の猫は消えたのか?Did the cat on the tree disappear?
『猫を棄てる』(村上春樹著)が一冊の本になりました。一冊の本になる前から文藝春秋の誌上で読んでいました。今回一冊の本になり再読しました。一人の読者としても、いろいろと考えさせられました。それを書くことが「感想文」になればと思います。何といってもタイトルです。自他ともに認める猫好きの村上さんが「棄てる」のです。そして「父親」について語るのです。これまでも村上さんのお父さまについては、村上さんのスピー
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