旅行中。Traveling.
私の好きな作家(村上春樹)が好きな作家(トルーマン・カポーティ)の『ティファニーで朝食を』(トルーマン・カポーティ著/村上春樹訳/新潮社刊)の好きなセンテンス(単行本の16頁より)。
そのアパートメントに移ってきて一週間ばかりたった頃、二号室の郵便受けの名札入れにいささか風変わりなカードが入っているのが目にとまった。社交用の名刺みたいにあらたまった書体で印刷されており、「ミス・ホリデー・ゴライトリー」、その下の隅に「旅行中(トラヴェリング)」とあった。それはまるで歌の文句みたいに僕の耳に残った。「ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング」
何度読んでも、このセンテンスが好きです。「ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング」。
私たちは、仕事があろうがなかろうが、家があろうがなかろうが、家族がいようがいまいが、みんないつも旅行中。そんなふうに思えるなら、生きていくのも、案外、楽しいものですね。
追伸
同名の映画も大好きです。登場人物や関係性やエンディングや、いろいろと原作との違いはありますが、それはそれとして「オードリー・ヘプバーン=ホリー・ゴライトリー」の魅力は本物ですから。確かに、村上春樹さんが同書のあとがきで指摘するように、読者としては映画を観る前に原作を読んだ方が、主人公のイメージが限定されずに読めるので幸福だとは思います。しかし現実的には、日本語初訳は1960年で映画初公開は1961年なので、その幸福を実感できた人は、かなり少ないと思われます。その後年なら、なおさら、オードリー・ヘプバーン=ホリー・ゴライトリーを知らずに原作を読むことは、なかなか難しいでしょうから。
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