トニーは孤独を教えてくれる。Tony teaches loneliness.

『トニー滝谷』(村上春樹著)という短編が好きです。『レキシントンの幽霊』(文藝春秋刊)に収められています。

そのタイトルが、まず好きです。トニーはハーフではなくて、日本人です。では、なぜ「トニー」という名に? 

物語は、トニーの父親の省三郎から始まり、トニーの圧倒的な孤独で終わります。トニーは常にスマートでクールで、そして孤独です。孤独とは何か?

トニーは、その人生の中で愛を得て、一旦は孤独を手放します。しかし結局、最後の最後に、トニーは「ひとりぼっち」になります。孤独の倍返し?

トニーは私に、孤独の白い細い長い指先を教えてくれます。何人も逃れられない。その、ひんやりとした感触を。宿命的で哀しいソフトなタッチを。

追伸

『トニー滝谷』を原作にした、同名映画(市川準監督)があります。美しい静かな映画です。イッセイ尾形さんと宮沢りえさんが(原作の私のイメージに)かなり近かったです。西島秀俊さんの抑えた語りが哀しさを支えます。

私は劇場で映画を観て、そのあとDVDを買いました。そのDVDを、ときどき(例えば日差しが傾き始めた土曜の午後3時くらいに1人で)ぼんやり観ることがあります。妙な意見ですが、真剣に観る映画ではないような気がします。何となく受け身で、ぼんやりと観ています。いつもそうなのですが、ぼんやりしていて、泣いていることすら忘れています。少し、浄化されます。



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