KEEP CALM AND READ ... . 気を落ち着けて、…を読もう。
先日、『村上T 僕の愛したTシャツたち』(村上春樹著・マガジンハウス刊)を読みました。190頁に「この本は『ポパイ』二〇一八年八月号~二〇二〇年一月号に連載されたエッセイを書籍化に伴い加筆、修正したものに、インタビューをあらたに加えたものです。」と書かれています。つまり、そういう単行本です。
この本の中で、私の好きなTシャツは5頁に登場する「“TONY”TAKITANI Houser D」(T 1)の黄色いTシャツです。このTシャツの村上さんの解説は、7ページ(まえがき)と187頁(インタビュー)に書いてあります。村上さんも「いちばん大事にしている」そうです。それはなぜか? このTシャツに想像力を刺激されて短編小説を書き上げたからです。珠玉の名作(独断と偏見ですが)『トニー滝谷』の誕生です。
私は、もちろん小説も読んで、同名小説原作の映画も映画館で観て、DVDも買って時々思い出したように観ています(これについては、既に記事を書いていましたので、ご興味のある方は、ご一読を)。短編の成り立ちが一枚のTシャツからだということは、村上さんのエッセイで知っていましたが、実際のTシャツを見たのは、今回が初めてでした。「なるほど、一流作家はたった1ドルのTシャツからでも、傑作を生むのか」と感動すると同時に、作家の卵である私としては、どこにでも傑作のヒントはあるものだと背中を押された気分でした(妄想?)。
それから37頁のTシャツ「KEEP CALM AND READ MURAKAMI」(T 13)も、ぜひ一枚、着るというよりも、床の間に飾って、心静かに眺めたいような気がします(変態?)。マインドフルネスとか瞑想とかが、上手くいかない時でも「気を落ち着けて、ムラカミを読もう」のTシャツを眺めて、私には村上春樹(の文章)がある!と思えば何とか生きていけます(無職のアラカンでも)。猫が本を読むシルエットも素敵です。
追伸
43頁のTシャツ「村上RADIO」(T 17)も、いいですね。何とか入手したいとTOKYO FM「村上RADIO」放送後には、せっせと感想やメッセージをメールしているのですが、残念の連続です。フジモトマサルさんイラスト心に染みます(ご冥福をお祈りします)。
ところで、お前の自慢のTシャツは?と聞かれそうなので(聞かないか誰も?)、もうすでにボロボロになって捨ててしまったTシャツ「HIDEO NOMO 16」です(青と白の二枚)。野茂英雄さんがドジャースに入団した当時に(LAではなくてOSAKAで)買って着潰したものです。これがまだ着られる状態の時に着て、村上さんの神戸の朗読会に参加したのが、今となっては良い思い出です。
もう一枚はJSA(Joint Security Area 共同警戒区域 板門店)にあるお土産屋さんで妻が20年程まえに買ってきた、黒いTシャツです。背中は朝鮮半島の絵柄と二国(米国・韓国)の国旗、胸元には国連旗がデザインされています。そんなところでJSAマーク入りのお土産が売っているというのも、商魂逞しいというか、シュールですが、それを買ってくる人間がいるわけで(今は知らないけど当時はテーマパークみたいだったのよ(妻談))。さすがに今のご時世では着ることは自粛しています。