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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】寒暖差疲労・気象病と鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

この数年、春・秋以外の季節でも気候変動が大きく、寒暖差や気圧変化の影響で、急な、腰痛、肩こり、頭痛、目眩、倦怠感などの不調が出やすく体調がよくない、という訴えが増加しているようです。
こういった症状は、『寒暖差疲労』・『気象病』と呼ばれ、ニュースや天気予報の中でも注意喚起がされるようになり、そういった症状を専門とする『寒暖差疲労外来』という外来をつくる病院も出てきています。

今回は、気候変動と体調不良をテーマに、現代の『寒暖差疲労』・『気象病』のなぞを東洋医学的に明らかにしていきます。
それでは、最後までどうぞお読みください。


1.寒暖差疲労とは

わたしたちの身体の中では、自律神経が体温調整に関与しており、ホメオスタシスが正常に機能しています。
ホメオスタシスとは、「外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のこと」をいいます。
寒暖差や気圧の変化が大きくなると、その自律神経が過剰に働いてしまうことから、疲労がたまりやすくなり「寒暖差疲労」をおこす、といわれています。

「寒暖差疲労」の症状には、
・ 肩こり
・腰痛
・頭痛
・ めまい
・不眠
・ 食欲不振
・便秘
・下痢
・ イライラや落ち込みなど気分の変化
・ 冷え
・むくみ
といったものがあります。

「寒暖差疲労」は、前日との気温差や日内気温変動が7℃以上あるときにおこしやすくなるといわれており、病院での診断の際には、チェックシートや質問票により、身体がどの程度寒暖差に影響を受けやすいかどうかを調べることで診断を行っているようです。

2.東洋医学からみる寒暖差疲労とは

では、東洋医学においては、『寒暖差疲労』・『気象病』をどのように考えるのでしょうか?
東洋医学では、急な体調不良の原因のひとつとして、自然界の変動が身体に影響をあたえることによる、と何千年も前の文献に既に記載がされています。
東洋医学の専門用語では、そのような自然界の変動で人間にとって病気の原因になるものを『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』といい、以下の六種類が含まれます。

 〇風邪
 〇寒邪
 〇暑邪
 〇湿邪
 〇燥邪
 〇火(熱)邪

『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』が身体入り込むと、体内の気血水(エネルギー、血液、水分)の巡りが停滞して、急激に身体の不調がおこりはじめます。
また、それらが身体の内部まで侵入してしまうと、臓腑(東洋医学における内臓)の働きが悪くなり、さらに様々な不調や病気をひきおこします。

これが、まさに『寒暖差疲労』・『気象病』の症状をひきおこす、東洋医学的なメカニズムのひとつである、といえます!

では、次に、『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』のひとつひとつについて、それぞれの特徴とそれらが身体に入り込んだ時におきる症状についてみていきましょう。

3.風邪

一見すると「かぜ」と同じ文字ですが、『ふうじゃ』と読みます。
風邪のイメージは、まさにビュービューとふきつける、あの風です。
風邪は、寒暖差が大きく変化する、春の季節との関連が深く、以下のような特徴をもちます。

①動きが速く、移動しやすい
②風のように変化しやすい
③他の外邪(寒邪、湿邪、熱邪)を伴いやすい
④風は百病の長
⑤人体の上部から入り込みやすい
⑥汗孔(毛穴)が開き、汗がもれやすくなる
⑦肝の臓と関係する

風邪に人体が侵された場合には、次のような症状が急激に出やすくなります。

①風邪症状
寒気、頸やうなじの凝り、発汗、発熱、頭痛、めまい、鼻水、鼻づまり、咽痛、咳など
②皮膚症状
皮膚のかゆみ、発疹、蕁麻疹など
③疼痛症状
身体の痛み、しびれ、こわばり、ひきつれ、ふるえ、関節痛、けいれん、麻痺など

4.寒邪

寒邪のイメージは、まさにぶるぶる、ぞくぞくとするような寒さ、あるいはキンキンと冷えた氷です。
寒邪は、寒い冬の季節との関連が深く、以下のような特徴をもちます。

①冷やす、陽気を損なう
②収斂性(しゅうれんせい) ちぢめる、ひきしめる
③凝滞性(ぎょうたいせい) 固める、滞らせる
④腎の臓と関係する

寒邪に人体が侵された場合には、次のような症状が出やすくなります。

①風邪症状
寒気、悪寒、発熱、無汗、頭痛、頸やうなじの凝り、関節痛など
②疼痛症状
激しい痛み、固定した部位が痛む、患部の腫脹、すべての症状は温めると緩解し、冷やすと悪化する、手足のひきつれ、手足の冷えなど
③内臓症状
腹痛、下痢、腸鳴、嘔吐など

5.暑邪、火邪、熱邪

暑邪、火邪、熱邪のイメージは、炎天下、ぎらぎらとした太陽、猛暑、汗が出てくる、そんな夏の暑さです。

この3つの違いとしては、
・熱邪と火邪はほぼ同じ性質だが、火邪のほうが熱がより強い
・暑邪は湿(蒸し暑さ)を伴う
・風、寒、湿、燥などの外邪は体内に鬱して火になることがある
・喜、怒、思、悲、恐などの情緒が過剰になると火が生じることがある

暑邪、火邪、熱邪は、夏の季節との関連が深く、以下のような特徴をもちます。
<暑邪>
①熱性がある
② 気、津液を蒸発させて、消耗する
④ 湿邪と結びつく

<火・熱邪>
① 熱感がある
② 炎上性がある
③ 心の臓と関係する
④ 開泄(発散)する
⑤ 気、津液を消耗する
⑥ 発疹、出血しやすい
⑦ 風を発生させる

暑邪、火邪、熱邪に人体が侵された場合には、次のような症状が出やすくなります。

①熱射病、日射病、熱中症などの暑気あたり
②高熱、頭痛、多汗、脱水、腫瘍疼痛(できものができて痛む)、
 口や下のただれ感、意識障害、焦躁
③口渇、便秘、尿黄
④手足の痙攣、後弓反張(からだを後ろに反らせた状態)、吐血、
 鼻出血、血便、血尿
⑤あざや傷ができやすい

とりわけ、火邪、熱邪による症状には、以下のように、急激に悪化する重篤なものが含まれることから、場合によっては、救急搬送が必要とされるケースもあります。

・発病が急で、症状がはげしく、進行が早い
・熱症状から脱水をきたしやすい
・出血(吐血、下血)を伴う
・意識障害やョック状態をきたすことがある

6.湿邪

湿邪のイメージは、雨ふり、梅雨時のじめじめとした湿気です。
湿邪は、雨が降りやすい、梅雨や長夏(夏のおわり頃)の季節との関連が深く、以下のような特徴をもちます。

①重濁性 重くて下方向にひっぱる性質をもつ
②粘着性 ねばねば、じめじめとして停滞しやすい
④脾の臓と関係する

湿邪に人体が侵された場合には、次のような症状が出やすくなります。

①上半身(頭から胸)の症状
頭が張って痛む、頭が重い、胸がつっかえて苦しい、食欲不振、悪心、
腕から手がおもだるい、痺れ、顔や手足の浮腫みなど

②腹部(胃腸、消化器)あたりの症状
食欲不振、悪心、嘔吐、呑酸、痰が出やすい、腹張、口は乾くが水分は不要、口が粘る、下痢(泥状便)など

③下半身(腰から下)の症状
腰や足がおもだるい、尿が出づらい、帯下が多い、浮腫み、痺れなど

7.燥邪

燥邪のイメージは、からっとしたドライな空気、うるおいが不足したカサカサとした乾燥状態です。
燥邪は、秋の季節との関連が深く、以下のような特徴をもちます。

①陰液を消耗させ、乾燥させる
②肺の臓と関連する

燥邪に人体が侵された場合には、次のような症状が出やすくなります。

①鼻腔、咽、皮膚の乾燥
②便秘、便が硬い、尿が濃い
③乾いた咳

8.鍼灸によるアプローチ

ここまで、東洋医学からみる、寒暖差疲労、気象病の正体である、『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』についてご紹介をしてきました。

ところで、「寒暖差疲労、気象病のさまざまな症状に対しても、鍼灸による治療が可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』の中でご紹介をしたような様々な症状に対しても、鍼灸によるアプローチが対応可能となっています。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

東洋医学において、心身ともに健康な状態とは、身体の中を気血水(エネルギー・血液・水分)が滞ることなく巡っており、身体が熱や冷えに偏ることなく、バランスが保たれている状態のことをいいます。
身体のバランスが保たれた状態の時は、身体の防御作用(バリア機能)が充分に働くことから、前述の『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』の影響を受けずらく、例えば、外から冷えが入ってこようとしても、自分自身の力で柔軟に対応をして体内への侵入を防ぐことができます。
これが、いわゆる自己免疫力というものですね。しかし、気血水が停滞して循環が滞った状態になったり、身体が熱や冷えに偏ってしまうなど、身体のバランスが崩れて内臓機能が弱った状態になると、身体の防御作用は充分に働きにくくなり自己免疫力が弱ることから、『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』の影響を受けやすくなります。

鍼灸治療では、この自己免疫力を強化して、『六淫の外邪(りくいんのがいじゃ)』の影響を受けずらい身体づくりを目指していきます。
そうすることで、寒暖差疲労や気象病の症状をひきおこしにくくなります。

なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、悩んでいる症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。

その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。
あくまでも、根本原因にあったツボを選び、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

9.まとめ

どうでしょう? これまで『寒暖差疲労・気象病と鍼灸』についてご紹介をしてきました。
東洋医学においても、寒暖差疲労・気象病に対して鍼灸によるアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。
記事を読んで、鍼灸治療に関して興味をもった方、一度、治療を受けてみたいと思った方は、ぜひお近くの鍼灸院を訪ねてみてください。
なお、鍼灸といっても様々な方法がありますので、ここに記載されたような方法を行っている場合とそうでない場合がありますので、まずは問い合わせをしてみるのがよいでしょう。

今回はここまでとなります。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132

画像の出典:https://www.photo-ac.com/

参考文献:鍼灸臨床能力 理論編(緑書房)、中医学入門(東洋学術出版社)

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