あさぽの論理学

元メンサ会員が論理について解説します。

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  • 固定された記事

多くの人が陥りがちな認知バイアス(偏見)

認知バイアスとは、ある特定の人物や集団、または、ある特定の意見や価値観に対して、公正でない偏った認識の仕方をしてしまう心理現象のことです。 バイアスとは、偏見のことです。 論理的に物事を考えるためにはバイアスに気をつけねばなりません。 今回の記事では、人は心理状態によってどのような偏った認識をしてしまうかを解説したいと思います。 ハロー効果、ホーン効果 まったく同じ意見でも、誰が発言したか、という点で受け手の印象が変わることがあります。 それ自体はおかしいことでは

    • ナルシストは自分が好きな人のことではない

      「ナルシスト」という言葉を聞くと、自分のことが大好きでたまらない人のことだと多くの人が思うかも知れませんが実はそうではありません。その誤解を説いておくことは重要だと思うので少し長い講釈となりますがナルシシズムについて書こうと思います。 ナルシシズムについては加藤諦三先生が詳しく解説されていますのでそちらもご覧になってください。 ナルシシズムは自己陶酔のことであり、自己陶酔を持つ人のことをナルシストと呼びます。 自己陶酔とは、自分が他人よりも優れているのだと自惚れることで

      • 三段論法まとめ

        これまで三段論法の記事を色々書いてきたので少しまとめてみたいと思います。 2つの概念の関係について考える三段論法 以下の2つの概念による包含関係について考えます。 このPとQの関係を見ると以下のことがわかります。 PであればQである これはモーダス・ポネンズ(Modus ponens)と呼ばれます。 QでないならPではない これはモーダス・トレンズ(Modus tollens)と呼ばれます。 「PであればQである」の前件と後件を入れ替えそれぞれ否定すると「Qで

        • 選言三段論法

          今回の記事では選言三段論法について解説したいと思います。 選言とは「論理和」のことで、論理和とは「QかPかのどちらか」という意味です。 「QかP」だと、P、Qどちらか片方を満たせばいいのですが、QとPの両方を同時に満たす必要がある場合は「論理積」となり「QかつP」となります。 論理和には「排他的論理和」と「包含的論理和」があります。 排他的論理和 「QかPのどちらか」であるとき、QであればPではない、そして、PであればQではない、という関係であれば排他的論理和と呼ば

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          仮言三段論法

          これまで三段論法について解説してきました。 これまでの記事で紹介した三段論法は「定言三段論法」と呼ばれるものです。 今回の記事では仮言三段論法について解説したいと思います。 仮言三段論法について 定言三段論法は前提は真である必要がありましたが、仮言三段論法では前提は真偽が分からない仮説となります。 「もし〜であれば」「仮に〜だとすると」といった具合に前提に仮定を置きます。 前提は仮定なので真偽不明であってもいいですし、あくまで仮の話なので偽であっても構いません。

          人身攻撃

          話し合いの場において、相手の人格や社会的な地位や状況など、論点とは無関係な相手の属性を非難し、相手の主張の信頼性を失わせる論法を人身攻撃といいます。 人身攻撃は、相手を打ち負かすことを目的にしているので、人身攻撃を好んで使う相手との話し合いは最も難しいと思います。 そのため、人身攻撃は建設的なコミュニケーションを行う上で最も避けるべきものです。 人身攻撃は「ポール・グレアムの反論のヒエラルキー」において下層にあり反論の体を成しておらず、反論といえません。 今回の記事で

          詭弁家が使うテクニック

          三段論法の話が続きましたので今回は誤謬(ごびゅう)と詭弁(きべん)について解説したいと思います。 誤謬とは論理的な誤りのことです。 また、誤謬と似た言葉に詭弁があります。 誤謬であることを知っていながら相手を説き伏せるために誤謬を意図的に用いる論法を詭弁といいます。 詭弁を使う論者を詭弁家といい、詭弁家とはソフィストと呼ばれていた人たちのことだと思います。 詭弁は相手を説き伏せることに役に立つことから、ズルい論者は詭弁を好んで使います。そういう人たちから身を守るため

          詭弁家が使うテクニック

          三段論法の概念の関係のパターン

          この記事で三段論法の形式のパターンについて解説しました。 重要な理解として、3つの概念の関係を決めるのは大前提と小前提で、結論はその関係から読み取れることを述べます。 命題には4つ型があり三段論法の形式には4つ格があり、組み合わせると256パターンあり、そのうち24パターンが妥当な結論なり、弱勢式を取り除くと19パターンが存在します。 今回はそれが正しいか確かめてみたいと思います。 ただ256パターンを考えると、とても大変なので概念の関係から逆算して妥当となる式(例:

          三段論法の概念の関係のパターン

          三段論法の形式パターン

          三段論法についてこれまで解説してきました。 今回は三段論法の形式のパターンについて触れておこうと思います。 今回の解説は直感的でなく分かりにくい部分もありますが、三段論法を理解する上で無視できない要素だと思いますので取り上げることにしました。 前提と結論が取りうる4つの型(Types) 「PはQである」といった何かを肯定する判断を「肯定命題」といい、「PはQでない」といった何かを否定する判断を「否定命題」といいます。 また「すべてのPはQである」といった主語を周延す

          三段論法の形式パターン

          媒概念曖昧の虚偽 - 三段論法の誤謬

          これまで三段論法について解説しました。 三段論法のコンセプトとしておさらいしたいのが登場する概念が3つだけということです。 4つの概念を登場させると「四個概念の誤謬」という誤りになります。たとえ5つだろうが6つだろうが誤謬となります。 2つの概念しか登場しない場合も三段論法になりません。 なぜなら三段論法とは、関係が分からないある2つの概念の関係を、媒概念を用いて示すためのものだからです。 大前提と小前提に共通な概念は、大概念と小概念の関係を示すための媒介なので媒概

          媒概念曖昧の虚偽 - 三段論法の誤謬

          大概念不当周延の虚偽 - 三段論法の誤謬

          「媒概念不周延の虚偽 - 三段論法の誤謬」の記事で、三段論法の誤謬を解説しました。 今回の記事では別の誤謬を解説します。 以下の定立について考えていきましょう。 大前提は真偽不明、小前提の「すべての蜘蛛は睡眠が不要である」は仮に真だとして考えてみてください。 今回の例も大概念が周延されているか、周延されていないのか分かりませんので、周延されているケースと周延されていないケースを考えてみます。 大前提の大概念が周延している場合 大概念が周延されている場合は、すべての

          大概念不当周延の虚偽 - 三段論法の誤謬

          媒概念不周延の虚偽 - 三段論法の誤謬

          「三段論法の基本」の記事で三段論法の形式について解説しました。 再確認すると三段論法において重要なことは、まず登場する概念が3つであること、大前提と小前提に共通する概念があって、小前提の媒概念じゃないほうの概念(小概念)が結論の主語になっていて、大前提の媒概念じゃないほうの概念(大概念)が結論の述語になっていることです。 この三段論法の形式にしたがって定立をつくってみたいと思います。 読書家が媒概念であり、読書家という言葉が示す概念は小前提と大前提で共通しており媒概念曖

          媒概念不周延の虚偽 - 三段論法の誤謬

          三段論法の基本

          三段論法という言葉を知っている方は多いと思います。三段論法は命題が3つ並べばいいというものではなく、いつくかルールがあります。今回は三段論法の基本的な形式について解説していきたいと思います。 太郎さんは人間という概念の外延であり、人間は生き物という概念の外延です。 この包含の関係を言葉にすると以下のとおりです。 人間であれば生き物である 太郎であれば人間である このことから、 太郎であれば生き物である が導かれます。 これは三段論法と呼ばれるものです。上記のよ

          三段論法の基本

          概念と概念の関係

          異なる2つの概念と概念では、両者の関係には4つのパターンが考えられます。 以下が2つの異なる概念が取りうる4つの関係です。 それぞれのパターンについて解説していきたいと思います。 A. PがQを包含している このパターンは概念Pが概念Qを包含しているケースです。概念Qは概念Pに包含されています。 概念Pのすべての外延に共通な性質を、概念Qのすべての外延が持ちます。 このような包含関係では、QならばPであるという定立が可能です。 概念Qであることが確定されれば概念

          概念と概念の関係

          論理の基盤となる3つの法則

          論理的な思考するにあたって、間違いなく正しいとみなすべき絶対的な法則が3つあります。 この記事で紹介する3つの法則は、必ず成り立つと考え、絶対に疑いません。 なぜなら、これらの法則が成り立たないとき、論理的にものごとを考える行為そのものが無意味になってしまうからです。 1. 同一律 同一律(どういつりつ)とは、 あるものは、何かが作用しない限り、あるものであり続ける という法則です。 あなたが休もうと腰掛けた岩が腰を上げた瞬間に大蛇に変わったりしません。 手に取

          論理の基盤となる3つの法則

          周延と不周延

          ある概念において、その概念に当てはまる具体的なものを外延と呼びます。 人間という概念に当てはまる具体的なものである太郎さんと花子さんは、人間の外延です。 では、人間の外延は太郎さん、花子さんだけでしょうか? もちろん、そのようなこともありません。太郎さん、花子さん以外にも人間はたくさんいます。 このように外延が不特定多数あるときには、ある概念を示す言葉が外延の一部を指すのか、外延すべてを指すのか、という点に注意を向ける必要があります。 これは論理において重要な区別で