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選言三段論法

今回の記事では選言三段論法について解説したいと思います。


選言とは「論理和」のことで、論理和とは「QかPかのどちらか」という意味です。

「QかP」だと、P、Qどちらか片方を満たせばいいのですが、QとPの両方を同時に満たす必要がある場合は「論理積」となり「QかつP」となります。

論理和には「排他的論理和」と「包含的論理和」があります。


排他的論理和


「QかPのどちらか」であるとき、QであればPではない、そして、PであればQではない、という関係であれば排他的論理和と呼ばれます。

図にすると以下のとおりです。

Pの外延にQはなく、Qの外延にPはありません。

したがって対象がPであればQではなく、QであればPになることはありません。

例:
ここでいったん退くか、それとも攻め続けるか、どちらかだ。
(退くことと攻めることは両立できません)

会社に行くか、休むか、どうしよう。
(会社に行くことと休むことは両立できません)

この例のように、排他的論理和になるときは選択肢が両立できないときです。


包含的論理和


「QかPのどちらか」であるとき、Qであると同時にP、そして、Pであると同時にQであることが考えられるという関係であれば「包含的論理和」と呼ばれます。

図にすると以下のとおりです。

Pの外延の一部にQがあり、Qの外延の一部にPがあります。

したがって対象はPのみかも知れませんし、Qのみかも知れませんし、PとQの両方かも知れません。

ちなみにもし対象がPとQが重なっている部分にだけにある場合は論理積となります。


包含的論理和の例を見てみましょう。

例:
TOEICかIELTSのどちらかのテストの結果を報告してください。
(TOEICとIELTSの両方のテストを受けて結果が良い方を報告しても構いません)

そのままだと味がないのでパンにジャムかバターをぬろう。
(バターをぬってその上にジャムをぬって食べても構いません)


選言三段論法


選言三段論法は大前提に論理和が含まれます。

小前提が肯定の場合:
大前提:PかQである
小前提:Pである
結論:ゆえにQではない

大前提:PかQである
小前提:Qである
結論:ゆえにPではない

小前提が否定の場合:
大前提:PかQである
小前提:Pではない
結論:ゆえにQである

大前提:PかQである
小前提:Qではない
結論:ゆえにPである

大前提の論理和が包含的論理和である場合は結論は妥当にはなりません。この場合は「選言肯定」と呼ばれる誤謬となります。


選言三段論法を用いるときは大前提の論理和が排他的なのか包含的なのか、つまり選択肢の両立が起こり得るのか、ということを意識する必要があります。



これまでの三段論法の記事をご覧になった方は、選言三段論法と仮言三段論法では2つの概念の関係を扱うことにお気づきになったと思います。


仮言三段論法の記事で紹介したモーダス・ポネンズモーダス・トレンズも、2つの包含関係の概念についてわかることを小前提、大前提、結論の形式で述べるものであり、関係がわからない2つの概念を媒概念を通して明らかにする三段論法において妥当な結論を得られる24個の式のいずれにも該当しません。


ちなみに、私は2つの概念を扱うモーダス・ポネンズやモーダス・トレンズを3つの概念を扱う三段論法の仲間に入れてしまうと些か混乱が生じる気がしています。

たとえばモーダス・ポネンズの小前提を「ある対象はPである」としたらどうでしょうか。これは概念を3つ扱う三段論法のモーダス・バーバラになります。

命題が3個あるかという点よりも概念をいくつ扱うかという点でグルーピングしたほうがわかりやすいと思いますし、モーダス・ポネンズやモーダス・トレンズは小前提を省いて結論を複合命題にしたほうが前件否定の虚偽や後件肯定の虚偽にも気づきやすいと思います。


ひとまず、三段論法には2つの概念が登場する三段論法と、3つの概念が登場する三段論法があるということを抑えておくと良いと思います。



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