媒概念曖昧の虚偽 - 三段論法の誤謬
これまで三段論法について解説しました。
三段論法のコンセプトとしておさらいしたいのが登場する概念が3つだけということです。
4つの概念を登場させると「四個概念の誤謬」という誤りになります。たとえ5つだろうが6つだろうが誤謬となります。
2つの概念しか登場しない場合も三段論法になりません。
なぜなら三段論法とは、関係が分からないある2つの概念の関係を、媒概念を用いて示すためのものだからです。
大前提と小前提に共通な概念は、大概念と小概念の関係を示すための媒介なので媒概念と呼ばれます。
まず最初の命題で、ある概念Pとある概念Cの関係を示し、次の命題である概念Qとある概念Cの関係を示し、結論でPとQの関係を示すというものなのです。
したがって、大前提と小前提に共通な概念が必要ですし、大前提と小前提の媒概念以外の概念は別の概念でなくては意味がありません。
そして結論で、大前提と小前提の媒概念以外の概念2つの関係を示さなくてはなりません。
例:
大前提:すべての哺乳類は生き物である(哺乳類ならば生き物である)
小前提:すべての羊は哺乳類である(羊ならば哺乳類である)
小前提で小概念である羊が媒概念である哺乳類とどういう関係なのかが分かりました。
大前提にも哺乳類という概念がありますので、どこに羊を置いてやればいいのかが分かります。
媒概念は大前提と小概念の関係を知るのに必要な媒介ですので、結論からは除外します。
結論:すべての羊は生き物である(羊ならば生き物である)
媒概念曖昧の虚偽
三段論法において、大前提と小前提にそれぞれ含まれる媒概念がまったく同じものでなければ大概念と小概念の関係を仲立ちできません。
たとえ媒概念が同じ言葉であっても、その言葉が示す概念が大前提と小前提で異なれば「媒概念曖昧の虚偽」と呼ばれる誤謬になります。
具体例を見ていきましょう。
媒概念である「神」という言葉が示す概念が、大前提と小前提で異なることがすぐ分かると思います。
大前提に含まれる「神」は「超越的な存在」のことを指していますが、小前提に含まれる「神」は暗喩的な意味の言葉であり「素晴らしい人」というニュアンスで使われています。
媒概念が示す概念が異なるため、大概念である「存在しないこと」と小概念である「恩師」の関係は結ばれず、「恩師は存在しない」という結論は妥当ではありません。
これは極端すぎる定立なので結論がおかしいことにすぐに気づきますが、媒概念の曖昧さは巧妙に隠されているケースがあると思います。
このような誤謬に気づくためには、媒概念を示すそれぞれの言葉が一致するかでなく、媒概念が示している概念が何であるかという点に注目する必要があります。
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