概念と概念の関係
異なる2つの概念と概念では、両者の関係には4つのパターンが考えられます。
以下が2つの異なる概念が取りうる4つの関係です。
それぞれのパターンについて解説していきたいと思います。
A. PがQを包含している
このパターンは概念Pが概念Qを包含しているケースです。概念Qは概念Pに包含されています。
概念Pのすべての外延に共通な性質を、概念Qのすべての外延が持ちます。
このような包含関係では、QならばPであるという定立が可能です。
概念Qであることが確定されれば概念Pと判断できるので、概念Qの内包を満たす条件は、概念Pの十分条件であるといえます。
また、概念Qが持つ概念Pの内包は概念Pの必要条件であり、概念Qは自身の内包と概念Pの内包の両方を必要条件に持ちます。
以下の図は、概念Pの一部の外延が概念Rという性質を含んでいるケースです。
概念Pの内包は概念Pの外延に当てはめるための必要条件であり、概念Pを概念Pたらしめる性質です。
そして、概念Pの外延の一部は概念Rの外延の一部であり、概念Pの内包に加えて概念Rの性質も含んでいます。
このようなとき、概念Pの外延の一部は概念Rを内包する、という言い方をします。
概念Rの外延すべてに共通な性質である内包を、概念Pの外延の一部が性質として含んでいる、という意味になります。
図で見るとわかりやすいのですが、概念Qのいかなる外延も概念Rを内包していません。
なので、概念Pの一部の外延が概念Rの内包を持っていたとしても、概念Pに包含されている概念Qが、概念Rの内包を持っているとは限らないのです。
包含という言葉を使うとき、包含されている概念のすべての外延は、包含している概念の外延にあることに目を向けてください。
ある概念がある概念を包含しているとき、包含されている概念は周延されているのです。
B. QがPを包含している
このパターンは概念Qが概念Pを包含しているケースです。
概念Pは概念Qに包含されています。
このパターンは先ほどの A のパターンのPとQが入れ替わったものです。
C. 2つの概念の一部が重なっている
このパターンは2つの概念が重なっているケースです。
概念Pの外延の一部は概念Qの外延にあり、概念Qの外延の一部は概念Pの外延にあります。
概念Pの外延の一部は概念Qの性質を内包していますし、概念Qの外延の一部は概念Pの性質を内包しています。
このようなパターンでは、概念Pの内包と概念Qの内包の両方を性質として持つ部分があります。
お互いの外延の一部がお互いを内包しているのです。
ただし、概念Pは概念Qを包含しているわけではありませんし、概念Qは概念Pを包含しているわけではありません。
包含というのは「概念Pならば概念Qである」という言葉で表します。
概念Pかつ概念Qである部分は概念Pの外延の一部なので「概念Pならば概念Qである」は成り立ちません。
「すべての概念Pは概念Qである」のように概念Pを周延させたときは成り立ちませんが、「一部の概念Pは概念Qである」のように、概念Pを不周延にしたときは成り立ちます。
D. 2つの概念が重なってない
このパターンでは2つの概念はまったく別のものです。
これらの2つの概念がまったく関連しないものという訳ではありません。
たとえば2つの概念が、ある概念の外延だったときです。
この場合、馬と人間という切り離された概念は、どちらも哺乳類の性質を内包するという点で関連があります。
馬も人間も哺乳類の外延ですので、哺乳類すべてに共通な性質を内包しているのです。
哺乳類の内包は、人間であることや、馬であることの必要条件ですので「哺乳類でなければ馬でも人間でもない」が成り立ちます。
2つの概念が同概念
4つパターンには入れませんでしたが、2つ概念が完全に重なっているパターンも想定できます。
概念Pと概念Qはまったく同じ概念であることを示しています。
このようなパターンが考えられるときは、同じ概念を別の言葉で呼んでいるケースです。
たとえば、「人間」「ヒト」「ホモ・サピエンス」などは、言葉は異なるものですが示している概念は同じものであるといえます。
ただし厳密にいうと、いつ、いかなるときもこれらの言葉が同じ概念を示していると判断すべきではありません。
言葉が使われる文脈や話者の解釈によって、同じ言葉が示す概念の内包が異なることが想定されます。
言葉は概念を示すものなので、言葉の違いではなく概念の違いに注意深く目を向けなくてはなりません。
また、2つ概念が完全に重なっているパターンのとき想定できるケースとして、ある概念の内包がその概念固有のものであるときです。
例えば「天才」という概念が「常人にはない素晴らしい発想ができる」という要素を内包していてそれが天才という概念にしかない要素であるとき、「天才」と「常人にはない素晴らしい発想ができる」はぴったりと重なり、両者はお互い必要十分条件となります。
このように複数の概念の関係について考えるときは頭の中で概念の関係の図をイメージすると理解しやすいと思います。
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