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エッセイ集

12
エッセイをまとめてあります📝
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記事一覧

いま、すごくすごく

いま、すごくすごく

いま、すごくすごく
お腹が空いている
でも今は病院の待ち時間で
買いに行くこともできないし
手元に食料は何もない。
朝食べた食パン一枚のエネルギーが
15時を回ったいま
もう完全に尽きた気がする。
だから本当にお腹が空いていて
もう本当に今すぐお腹を満たしたい。
あと40分待てば父が迎えにきて
車に乗り込んだらすぐに
コンビニに入ってもらい何かを買おうと思う。
何か...そう何かを。

こういう、

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お芝居はおしまい!

お芝居はおしまい!

流石にそろそろあまり言われなくなったが
幼い頃から母くらいの世代の女性に
「娘だったらよかったのに」
「こんな娘がほしかった〜」と言われることが
なぜだか多いのがわたしという人間で
その度に「そんなそんな〜(にこにこ)」
という感じでやり過ごしていた

大人になってふとしたことから
そんな話を初めて人に話したとき
「みんなそらのお母さんに
なりたくなっちゃうんだね〜」と言われて
ああそっかそういう

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生物『人々』(ヒトビト)

生物『人々』(ヒトビト)

わたしは人混みを歩くとき
ほとんど人を見ていないことに
最近ふと気がついた

ずっと下を向いているわけでもなく
ちゃんと前を向いて歩いている
でも誰のことも見ていない

誰にも焦点が合わないのだと思う。
忙しなく行き交う人々は
「人々」という生き物のようで
それでもってひとくくりにされている。
だからきっとその中に知り合いがいたとしても
ちょっとした有名人がいたとしても
わたしは胸を張って言える。

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しおりのひとこと

しおりのひとこと

「清々しい朝を迎えられますように」
そう手書きで書かれた
優しいラベンダー色のしおり
裏面には四葉のクローバーの押し花
とある方が作ってくれた

本の世界に入るとき
本の世界から出るとき
そのひとことが必ず目に止まる
こころの中でふんわり浮かぶその一言は
異なる世界を行き来するための切符みたい

この手作りのしおりに込められた
誠実で素直な優しさに毎度ときめいてしまう

わたしは清々しい朝が大好き

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いつしかの手紙

いつしかの手紙

久しぶりにとあるノートを開けてみたら
さっと落ちてきた3枚の便箋
そのままにしておくのも捨てるのも
なんかなあという気分
ここに記録して、そっと捨てよう

7月4日20時半 名前

自分が欲しい言葉は
待っていても来ないと思うんです。
だから相手に期待してはいけないと思っています。
「答え」もそうだと思います。
誰かに求めてはいけない。
自分で考えて導き出すものだから。

私が話していることは相手

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ごまかし着地

ごまかし着地

「あれ?あんたそれでよかったっけ?」

たまにこころの奥の方から
ほんの少し扉を開けて
ふぅ〜と声を出してくるヤツ
やたらとヤツの声はこころの中で響くし
何よりわたしは目くらましを喰らう

「あれ?わたしこれでいいんだっけ?」

いや違う!何かが違う!
これじゃない別の何か道があるはずだ
探せ!探せ!探せ!
いいから迷わず飛び乗れ!まだ間に合う!
いける、多分大丈夫!

バタバタと駆け回る思考

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指先までわたし

指先までわたし

今私の左の人差し指には
ガラスの指輪がある
全てガラスでできていて
私からみて正面に一粒の大きなガラス玉がついている
そのガラス玉は風船のようになっていて中は空洞だ
実際にこの指輪には「バブル」という名前がついている
そのため強い衝撃が当たると簡単に割れてしまう

この「バブル」は私の相棒だ
出かけるときには必ず左の人差し指につける
疲れたとき、少し元気がないとき
そのバブルのガラス越しに空を見て

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ただ進むこと

ただ進むこと

数日前、レポートを書き上げた。

すぐに入院してしまったから
ほんの数回しか出たことがない授業
その学期末レポートが
私の大学時代最後のレポートになった

ようやく、卒業できるみたい

そのレポートのテーマは
「今後の人生プラン」だった
最後にふさわしいテーマだと思った

でも今の自分にはとても難しかった
「今後の人生」
それはなんだか別の世界で
繰り広げられているようで
別の人の人生でも
描いて

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そのひとことの瞬間

そのひとことの瞬間

言葉ってすごいな
そう思わされることは
今まで幾度となくあった

「忘れられないひとこと」は
生きていく時間を重ねるたびに
わたしの中に書き記されていく

それは思い出すだけで
思わず感極まりそうになる
そんな優しい言葉で埋め尽くされ...
というわけではないのが
言葉の怖いところだと思う

何気ないひとこと
相手にとってはそうだったかもしれない
けれどわたしにとっては
もう一生治らない傷あとに

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こころがうごくとき

こころがうごくとき

昨日の夕方
締め切っていた病室のカーテンを
ほんの少しだけ開けてみた
理由はよくわからない

カーテンを開けたその瞬間
夕日の光が一気に部屋に入り
こもれびの影が
白い壁にゆらゆらと映った

しばらくの間
ただ眺めていた
窓の外のたくさんの緑と
差し込む夕日
微かな風の音で揺れる
こもれびの影

「きれい」と思った
本当に久しぶりに
こころが動いた

「感情がわからなくなる状態」
お医者さんから

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「笑い話の日」までの日

「笑い話の日」までの日

こころにぐっと負荷がかかると
そのときはもちろん苦しいけれど
負荷を乗り越えて回復するまでも
結構苦しかったりする

「いつかは笑い話になる」
そう思い、そう願い、
時が解決するのを待つ
それはかなり大変なことだ

「笑い話の日」を迎えるには
強い信念が必要なんじゃないかと
最近よく思う

「時」は何もしなくても
前へ進んでいってくれる
後ろへ進むことはない

でもこころは後ろに進むことができる

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ふたりで食べるアイス

ふたりで食べるアイス

「コンビニ行かない?アイス食べたい」
お風呂上がりの夜10時すぎ
「準備できたら行くわ!」
と言ってくれる友人がいる

1人で食べるより
彼女と食べたかった

実家の目の前に住む彼女
小学6年生のとき
転校して来てからずっと
わたしの大切な友だちで
いてくれている

強くてしなやかで
なのに繊細な優しさもある
そんな人なかなかいないんだと
大きくなるほどに思う

2人で歩きながらアイスを食べた

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