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ごまかし着地

「あれ?あんたそれでよかったっけ?」

たまにこころの奥の方から
ほんの少し扉を開けて
ふぅ〜と声を出してくるヤツ
やたらとヤツの声はこころの中で響くし
何よりわたしは目くらましを喰らう

「あれ?わたしこれでいいんだっけ?」

いや違う!何かが違う!
これじゃない別の何か道があるはずだ
探せ!探せ!探せ!
いいから迷わず飛び乗れ!まだ間に合う!
いける、多分大丈夫!

バタバタと駆け回る思考
全力疾走モード
これわたしにはちょっと危ない

全力疾走がわたしに向いてないのは
もう痛いほど実感した
でも止まらぬ思考にブレーキをかけられるほど
わたしは器用じゃない

「ああ突っ走りそうだな...」
そう思うことがせめてものできること
自分を健康に生かすことは
そういう静かな努力がいるものだと思う

そんな中、別に急ぎでもない用事のために
人混みの駅に向かった
その急ぎでもない用事が終わったら
なんだかお腹が空いてマックに行った
そうしたら注文待ちのお客さんが大勢いた

自分の番号が呼ばれるまで
なんとなくレジとキッチンを眺めてた

均整のとれたチームワークで
せかせかチャキチャキ動き回り
次から次へと回していく店員さんたち
なんだかずっと見ていたいと思った

ちょっと前に読んだ本の主人公は
ラッシュ時の駅のエスカレーターに
人々が順番に並ばれていくのを
美しいと思っていたのを思い出した
読んだ時はピンと来なかったけど
その主人公の気持ちが少しわかる気がした

慌ただしく動く店員さんたちを
ぼーっと眺めているうちに
慌ただしく動く思考が
ぱたりと止まった

何も焦らなくてもいいじゃないか
だってわたしはこの待ち時間
すごく好きだもん!

と、よくわからない着地をしたら
それまでずっと
歯を食いしばってたことに気がついた
歯医者さんに注意されたばかりだから
ギクりとした

「あれ?あんたそれでよかったっけ?」
と言ってくるヤツに
今日のわたしは言い返せた
「いいんだよ、これで!」とまでは
まだ言い切れないけど
まあそんなものだと思う。いろいろ。

明日のわたしは、明後日のわたしは
うまく言い返せないかもしれないし
やっぱり突っ走るときもあると思う
それでも多分また
ちょっと変でおかしいけど腑に落ちる
そんな着地をするんだろうなと思えば
今夜はよく眠れそう

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