ヨガの熟練者やアスリートなどが、心拍数を操るメカニズムを解明!東京大学発表。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事のテーマは、「脳」と「心臓」なのですが、まずどうして「心臓」が動くのかを説明したいと思います。
筋肉は、電気信号が筋肉に伝わり収縮しますが、「心臓」の筋肉は骨格筋と異なり、脳からの命令を受けていません。自分自身で「心臓」を勝手に止めたり動かしたりすることができないのです。
「心臓」には、右心房の筋肉内にある細胞「洞結節」が存在し、この細胞は一定の間隔で電気信号を発信してくれます(安静時、1分間に60~80回)。ひと度、電気信号が発信されると、心房の筋肉全体に均等に電気信号が伝わって、心房が収縮して心室へ血液が送られます。
その上でその電気信号は、「房室結節」という電気の通り道を通って、心室の真ん中の筋肉内に入り込みます。その電気信号は左脚と右脚の二手に分かれて、左の心室と右の心室へ均等に伝わることで、両心室の筋肉が同時に収縮し、「心臓」の外に血液を送り出します。
そのことで、まず上部の心房が収縮し、房室結節を伝わっている時間だけ遅れて心室が収縮することで、「心臓」は、心房→心室と時間差で収縮し、血液を絞り出すように効率的に「心臓」の外に送り出しています。
この様に効率的に動いている「心臓」ですが、最近「脳」と「心臓」にまつわる驚きの研究が行われました。
意図的に心拍数を下げる脳のメカニズムを動物実験で解明したと、東京大学の研究チームが明らかにしました。心拍数を少なく維持することで、スポーツの成績向上や不安の低下などに結び付く可能性があり、アスリートの新しい訓練方法やパフォーマンス向上、精神疾患の治療法の開発に役立てられると期待されています。
この研究成果は、2024年6月21日、アメリカの科学誌[サイエンス]にて発表されました。
今回は東京大学が解明した、「脳」と「心臓」の仕組みについて、解き明かします。
なぜアスリートなどは、心拍数をコントロールできるのか?
画像引用・参考:心拍数を意図的にコントロールする神経メカニズム ヨガのしくみにも迫る新たな脳内機構の解明 東京大学(2024年)
「心臓」の拍動は、基本的に人の意思とは無関係に働く「自律神経」で制御され、通常、意識的に動かすことができないと言われています。
ですが、熟練者で瞑想やヨガでゆっくりと呼吸をしたり、アスリートは心拍数を測定しながら下げる練習を繰り返し行うと、意図的に心拍数を下げられることが知られています。
動物にこの技を習得させるのは難しく、脳内のメカニズムは解明されていませんでした。
東京大学の吉本愛梨大学院生などの研究チームは、ラットの脳に電極を設置しました。研究チームは心拍数の変化を自分で測定しながらだと意識的に数値を変化させられることに着目して、こうした現象が起きるメカニズムを解析しました。
研究チームは、ラット17匹を使って心拍数が下がれば、目標の心拍数に近づくと、ひげに触れた様に感じる刺激を与えて知らせ、さらに目標まで下がると脳が刺激されて、報酬を与えるという実験を行いました。
この訓練で目標心拍数を少しずつ下げながら繰り返し行いました。この訓練を5日間継続すると、1分間の心拍数は、平均およそ450回から平均およそ200回まで下がり、訓練をした後も効果が10日間持続しました。
参考:心拍数を下げる脳の仕組みを動物実験で解明…東大の研究チームが発表 読売新聞(2024年)
心拍数が下がる時のラットの脳神経の働きを詳細に解析した結果、脳の中の意思決定や感情に司る場所の間にある、大脳の「前帯状皮質」の存在を突き止め、「前帯状皮質」から出た信号が、複数の脳の部位を経由して、「心臓」に伝わっていました。この「前帯状皮質」の繋がりは通常弱いですが、訓練によって強化された可能性が高いと推定できます。
この「前帯状皮質」を介して、意識的な指令が「心臓」を制御する神経にまで伝わっていると考えられます。
また、心拍数が減少したラットは、訓練前と比較して全体の運動量には変化がなかったものの、不安が抑えられていることを示す行動が増加したことも判明したといいます。
後日談
神経科学が専門の、研究チームの池谷裕二教授は、
「身体と脳は非常に密接に関与していることが再度分かった研究成果でした。脳から心臓までトップダウンで命令が伝わるという意外な能力を科学的に実証できました。効果を最大化する方法を検証し、健康増進に活かしていきたいです」
とし、
「今後、ヒトでも同じ様なメカニズムがあることが解明できれば、心拍数を制御するなどしてストレスへの抵抗性を高めるなどの効果にも期待が持てるのではないでしょうか」
と説明しています。
認知神経科学が専門の、自律神経に詳しい慶応大学の教授の男性は、「脳からの指示で自律神経が調整されるメカニズムを解明した重要な研究成果だと言えます。ヒトの治療などに活かすためには、生活環境や本人の性格など色んな要因の影響も受ける点に留意する必要もあります」と述べました。
私は不安だったり、緊張してテンパるとすぐ、バクバクして心臓の音が大きくなるので、周りの状況の影響を受けやすく、動揺しやすい私でも、それが少しでも落ち着かせられるなら、研究が進んだ後で是非取り入れられたら良いなと思いました。