日本人は「SBS12」の遺伝子変異で、腎細胞がんを発症しやすい!海外では2%程度。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
「腎細胞がん」とは、尿を作る細胞にできるがんで、腎臓がんの8~9割を占めています。
「腎細胞がん」の腫瘍の最大径が5cm以下の小さながんでは、症状が出現することは極めて稀です。
最近では、無症状で、健診や人間ドックで実施した超音波検査で偶然発見されることが多くなっています。
しかし、がんが大きくなると、いわゆる「腎細胞がん」の古典的三大症状である疼痛、血尿、腹部のしこりなどの症状が見受けられます。
また、さらに症状が進行すると、全身的症状としての発熱、全身倦怠感、貧血、食欲不振、体重減少など以外にも、非常に稀に骨転移による骨折、疼痛、肺転移による血痰などの症状で発見されるケースもあります。
この「腎細胞がん」ですが、実は日本人に多く、海外では余り見受けられないということが、先日の研究で明らかとなりました。
今回は日本人に圧倒的に多い、未知なるがんだと言える、「腎細胞がん」の研究成果についてお伝えします。
世界11ヵ国で行われた「腎細胞がん」の研究成果から見えて来る実態
日本人の腎細胞がんの7割に、他国ではほとんど見られない未知の発がん要因が発見されたと、国立がん研究センターなどの国際共同研究チームが2024年5月14日に、明らかにしました。「SBS12」の遺伝子変異で、発がん物質など化学物質や環境などの外的要因の可能性が高いと想定されるといいます。
「腎細胞がん」で最も多い「淡明細胞型」に関して、日本人36人を含む世界11ヵ国の962人を対象に、発症を招くゲノム(全遺伝情報)を網羅的に調査する「全ゲノム解析」の結果で判明しました。
国際共同研究チームは「SBS12」の遺伝子変異の原因を特定し、新しい治療法や予防法などの開発に結び付けたいとしています。
論文は、2024年5月1日、イギリスの科学誌[ネイチャー]に発表されました。
国際研究チームは腎臓がんの8〜9割ほどを占める「腎細胞がん」に関して、発症頻度の高いチェコ、イギリス、ロシア、日本、発症頻度の低いタイなど11ヵ国962人の患者のがん細胞を「全ゲノム解析」をして、塩基配列から遺伝子変異の特徴的なパターンを抽出し、がんの原因や地域差を調査しました。
すると、日本人36例の7割の26人から、遺伝子変異が検出されました。その反面、他国では2%程度しか見受けられない特徴的な遺伝子変異パターン「SBS12」が発見され、追加で解析した日本人61例を加えて検証しても、75%から同じ遺伝子変異が同じ様な結果で発見されました。
遺伝子変異「SBS12」は日本人の肝臓がんでも過去に確認されていて、今まで知られている遺伝子変異パターンの傾向から、遺伝や高血圧、肥満、加齢などの内的要因ではなく、外的要因による可能性が高く、既に知られている発がんのリスクとは異なると推定されています。
原因が判明している遺伝子変異パターンもありますが、「SBS12」を発症する原因はまだ判明していません。
国際共同研究チームは、日本では、何らかの理由でこの「SBS12」の遺伝子変異を発症させる発がん物質などに、接する頻度が高い可能性があると想定しています。
国立がん研究センターによりますと、腎臓がんの中で8割程度が「腎細胞がん」で、この中で60~75%を淡明細胞型が占めます。北部ヨーロッパ、中部ヨーロッパで罹患率が高く、ここ数年では日本でも患者数が増加傾向です。
今後国際共同研究チームは、WHOとも協力し、発がん要因の分布調査や特定などを進める予定です。また、日本人の「腎細胞がん」の大規模な「全ゲノム解析」をして発がん要因の地域差を調査し、変異ががんに至るまでのメカニズムも詳細に解析します。それ以外のがんとの関わりも解析していきます。
参考:国内の腎細胞がん患者の7割に、日本人特有の遺伝子変異…未知の発がん要因から発症か 読売新聞(2024年)
国立がん研究センターの柴田龍弘・がんゲノミクス研究分野長は、「新しい『腎細胞がん』の治療法や予防法の開発に向けた一歩と言えます。これから、この日本人特有の『SBS12』の遺伝子変異が起きる原因を特定し、メカニズムや要因の研究を進めることで、『腎細胞がん』の治療薬や予防の開発に結び付けたいです」と説明しています。
体質?環境?
「腎細胞がん」ですが、海外では2%しか患者さんがいないのに、今回の研究成果では日本では7割を占めるという、極めて日本人の発症率が高いことが分かりました。
海外で流行っている蚊による感染症が世界的に問題となっていますが、日本ではそれが恐らく侵入していないのか、デング熱やマラリアなどが日本で流行っているということは聞きません。
以前書いた原因不明の小児肝炎に関しても、2023年これが原因かも?という研究も出ましたが、その後続報や発生したなどの話は聞いたことがなく、この感染症も海外に多いケースでしたので、そこから考えると、日本人の「腎細胞がん」も、海外とは違う体質や環境なのかな?と思っています。
がんは原発不明がんとなると、原因が特定されないまま、症状が悪化して進行し、そのまま亡くなることが多いです。
今回もまだこれという原因の特定には至っていないものの、日本人に多いことが証明されただけでも、大変価値のある研究成果でした。
このまま「腎細胞がん」の治療法や予防策が見つかるまで、研究が進んで欲しいなと思いました。