3word_novels

お題となる3つの単語を入れた短編小説を投稿しています。

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マガジン

  • シャンプー、朝顔、アイスコーヒー

    シャンプー、朝顔、アイスコーヒー

  • 言い訳、雨、穴

    言い訳、雨、穴

  • 水道、終電 、寝室

    水道、終電 、寝室

  • がらくた、館、暫く

  • 「夢」がテーマのとあるコンテストに応募した作品です。

最近の記事

朝顔の呪い

「お疲れ片岡。ほら、これやるよ」 「あっ師匠、待っててくれたんですね。ありがとうございます」 バイトの夜勤上がり、ふいに差し出された缶コーヒーを受け取った。結露で湿った表面を軽くTシャツでぬぐってプルタブを開け、ゴクゴクと音を立て一気に半分近い量を飲み干す。この瞬間が最高に生きているという感じがする。 「あー美味しい。生き返ります」 「だよな、わかる」 「けどこういう時はビールの方が良くないですか」 そう言って私がおどけてみせると、師匠は呆れたように息を吐いた。 「片

    • 露草

      学校の裏手の森を北東に進んでいくと、青々とした若葉が生い茂る木々を抜けた先に、小さな洞穴がある。 洞穴自体は子どもが何人か入れるくらいの大きさだったが、その入り口はボーボーに伸びた雑草に隠されており、一見するとただの岩にしか見えなかった。 ここは、僕たちの秘密基地だ。 *** 「でもさぁ、よくこんなとこ見つけたよね」 駄菓子屋で買った10円ガムを噛みながらミーコが言う。 「ユウタが珍しい虫を追いかけていて偶然見つけたんだよ。あれ、なんて言ったっけ?」 「クビキリギス

      • 聖戦に花は咲くか

        百合からのメッセージを受け取った俺は、ふぅ、と一息ついてから支度を始めた。 ついに明日だ。 緊張と高揚感から心臓がドクドクと音を立てているのがわかる。ジュラルミンケースを開き、中身に不備がないことを確認すると、シャワールームへ向かう。 冷たい水を浴びながら、この後、そして明日までの行動をシミュレーションしていく。 (まずはこの後、待機中の百合と合流。大丈夫だ。百合は心から信頼できる仲間だ) シャンプーを手に取り、泡立てる。爽快タイプの薬剤が頭をスーッと冷やし、心地よい

        • 俺のストレス解消法

          残業終わりの22時、木造アパートの軋む階段を駆け上がる。鍵を開けるのももどかしく、男はもつれる足で自宅の玄関に駆け込んだ。 ーーああ、早くしないと終電に遅れてしまう! 水道局員のトレードマークである青いツナギとヘルメットを乱雑に洗濯カゴに突っ込んで、速攻でシャワーを浴びる。シャンプーは雑でもトリートメントは丁寧に。 上がったらまず化粧水、保湿効果の高い乳液。肌が乾燥する前にすぐ塗らねばならない。良い匂いのヘアミルクをワンプッシュしてから髪を乾かした後、パンツ一丁のまま寝室

        マガジン

        • シャンプー、朝顔、アイスコーヒー
          2本
        • 言い訳、雨、穴
          1本
        • 水道、終電 、寝室
          2本
        • がらくた、館、暫く
          2本
        • 2本
        • 朦朧、ミネラルウォーター、アパート
          2本

        記事

          夢見るカタツムリ

          今月もまた水道代が払えなかった。 家賃など、いつから滞納しているか考えることすら億劫だ。 暗闇の中、手探りで台所のシンクを掴み蛇口を捻る。しかし、ぽたり、ぽたり、と垂れるわずかばかりの雫では、喉の渇きを潤すには到底足りなかった。 人は食べ物がなくても数週間は生きられるらしいが、水分がないと3〜5日で死んでしまうという。つまり、俺の命はそろそろ終わりが近い。 「はは…あっけねーな」 ずるずると身体を引きずりながら寝室に移動すると、ひとりごちた。 自分の人生の終わりを想像し

          夢見るカタツムリ

          呪いの館へようこそ

          「お疲れっしたぁ」 金曜日、23時37分。 バイト先の同僚たちに軽く挨拶をすると、急いで帰り支度をする。 早くしないと、あの店が閉まってしまう。 生粋のゲーム好きである俺は、週末になると新しいゲームを買っては、休日はひたすら家にこもり、ゲームをやり込むというのがルーティンになっていた。 だが、有名どころはもちろんのこと、あらゆるゲームをやり尽くした俺は、どんなゲームも大体2〜3日でクリアしてしまう。 そんな俺の最近のブームは、中古ゲーム屋で昔のインディーズゲームを見つけ

          呪いの館へようこそ

          ときめきは屋上から

          「はぁ。つまんねえ」  雲一つない空を見上げながら、誰もいない屋上で独りつぶやく。  俺は柏木悠斗、高三だ。周りは受験勉強で忙しそうだったが、進学する気のない俺にとっては、毎日退屈でしょうがない。  ふと視線を下に向けると、何かが落ちているのが目に入った。拾い上げてみると、どうやらハンカチのようだ。裏には可愛らしい刺繍が入っている。 「『はるか』……はるかちゃんって子が縫ったのか? ふーん、うまいじゃねーか」  繍われている文字はどれも綺麗で、刺繍をした子もきっと綺

          ときめきは屋上から

          初恋の音はクレッシェンド

          北風が肩を撫ぜる。 もう随分と肌寒い季節になってきた。 このくらいの時期になると、いつも思い出すことがある。 ねえ、覚えてる? 私たちが初めて出会った日のこと。 当時私は高校生で、貴方は私のクラスの担任の先生だったね。 親の都合で2年生の夏休み直前に転校してきたものの、なかなかクラスに馴染めずに一人になりがちだった私を、貴方は自分が顧問を務める吹奏楽部に誘ってくれた。 特にやりたかったこともなかったし、と軽い気持ちで部活に入ったけれど、貴方の指導はとても分かりやすく

          初恋の音はクレッシェンド

          センチメンタルと群青

          九月に入ったというのに、まだまだ寝苦しい夜が続いている。 六畳一間の古びたアパートで、壊れかけのクーラーだけではこの熱帯夜を乗り切るにはいささか力不足なのかもしれない。 今夜もなかなか寝付けずに、結局中途半端な時間に目を覚ましてしまった。 窓の外を見ると、まだ夜明け前だった。 夢を、見た。 キラキラしたステージで大勢の客を前に自分が歌を唄っている夢。 若い頃たしかに俺は、バンドマンを志していた。 あふれ出る想いを言葉にするのが好きで。 自分の中の衝動を音に乗せるのが

          センチメンタルと群青

          ご主人様と私の愛玩関係

          今のご主人様に仕えるようになってから、もうどれくらい経つだろうか。 前のご主人様には、人生の半分を捧げた。 丸眼鏡がよく似合う老紳士で、要領の悪い私にもいつも優しくしてくださったため、亡くなってしまった時はとても悲しかった。 と同時に、このような生き方しか知らない私は、これからどうやって生活していこうかと途方に暮れた。 そこに、たまたま前のご主人様の知り合いだという方が現れ、こうして今、働かせていただいているのだ。 ご主人様に仕える身とは言え、その方がどのような人かわから

          ご主人様と私の愛玩関係

          パーフェクト・プラン

          俺の名前は澤田裕介。 俺は今日のためにあらゆる計算と準備をしてきた。 まずは頼まれたら断れない性格のあいつを新歓の幹事にさせること。 そして、あいつの近くには酒が強い連中を配置させ、自然な流れであいつが酔い潰れるまで飲ませること。 最後の仕上げに、サークル仲間の横山さんに協力を仰いだ。あいつは酔うと誰かれ構わずダル絡みする癖があるから、絡まれたら必要以上に騒いでもらうようお願いしておいたのだ。 そこでようやく、俺の出番だ。悪漢から女性を守る紳士のごとく振る舞いながら、あえて

          パーフェクト・プラン

          酔いが覚めたら

          あかん。完全に飲みすぎた。 大学の新歓で幹事を任された俺は、周りを盛り上げるためにいつも以上に酒を飲んだが、しっかりと記憶があるのは二次会まで。 三次会だか四次会だか、とにかく店と店の移動中だったと思う。俺は朦朧とした意識の中、何故かほとんど話したことのない女子にまで変な絡み方をして、さらにそれを制止しに来た同じ学科の澤田に逆ギレして大声を上げてしまった。 くそっ 何でこんな最悪な記憶だけあんねん。 それから俺はどうやって帰ってきたかまったく覚えていない。 気がついた

          酔いが覚めたら

          恨み晴らし屋

          「その私怨、晴らします」 そんな物騒な謳い文句の看板があるのは、駅前から少し離れたところにある古びた雑居ビルだ。 私怨とは、個人的な恨みのことである。 一般的に恨みや怨恨を晴らすというのは、あまり褒められた行為ではない。 とは言え、世の中には裁判では裁けない罪もあるし、被害を受けたのに泣き寝入りするしかないという人もいる。そんな人達の行き場のない怒りや恨みの吐け口として、私はこの商売を始めた。 今日もまた、沈鬱な表情を浮かべた女性が一人、事務所の扉をノックしてきた。 話

          恨み晴らし屋

          次回作にご期待ください

          これは私が前の職場にいた時の話なので、ちょうど2年前になる。 当時私は、とある大手出版社の法務部にいた。 法務部とは、ざっくり言えばその会社のあらゆる業務や契約書、出版物などに対して、法律的に問題がないかとか、まぁそんな感じのことをチェックしている部署だ。かなりざっくり言ったが。 私は大学で少しだけ法律の勉強をしていたために新卒でいきなり法務部に配属されたのだが、正直なところ、私の志望動機は「大好きな漫画に関わる仕事がしたい」という単純かつ軽薄なものだったので、法務部の

          次回作にご期待ください

          素直になれない

          きっかけはささいなことだった。周りから見たら、バカみたいに映るかもしれない。 だけどとにかく俺と賢一は今、絶賛喧嘩中だ。 「また喧嘩してんの?いい加減折れなよどっちか〜」 幼なじみの直哉はいつも俺たち二人の喧嘩に首を突っ込んでは、やれやれ…という顔でバカにしてくる。別に仲裁したりはしてくれない。 「あっちが折れない限り俺だって折れられねーよ」 学食の人気メニュー、げんこつ唐揚げを頬張りながら俺は答える。 「今回はなんなの?ま、どーせ大した理由じゃないんだろうけど」

          素直になれない

          グッバイ,ベイベー

          「ロックンロールで世界を変える」とか言う奴は、大抵みんなしょうもない。 涼太もその一人だった。 あいつは本当に純粋に死ぬほど音楽が好きで、何よりもロックを愛していて、本気で世界を変えられると思っていたし、俺はそんなあいつのことが好きだった。 俺が高3の時、当時のバンドメンバーから 「隣の高校にめちゃくちゃギターが上手い奴がいるらしい」 と聞き、初めは気に入らなかった。 多くの同級生が有名なアーティストのコピーばかりをやっている中で、俺らは唯一オリジナル楽曲でやっていた

          グッバイ,ベイベー