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酔いが覚めたら


あかん。完全に飲みすぎた。

大学の新歓で幹事を任された俺は、周りを盛り上げるためにいつも以上に酒を飲んだが、しっかりと記憶があるのは二次会まで。

三次会だか四次会だか、とにかく店と店の移動中だったと思う。俺は朦朧とした意識の中、何故かほとんど話したことのない女子にまで変な絡み方をして、さらにそれを制止しに来た同じ学科の澤田に逆ギレして大声を上げてしまった。

くそっ 何でこんな最悪な記憶だけあんねん。


それから俺はどうやって帰ってきたかまったく覚えていない。
気がついたら自宅アパートの玄関の前に座り込んでいた。
スマホを取り出し時刻を確認すると、午前3時を回ったところだった。

と、突然スマホが震え出す。
着信画面には「澤田」の文字。

いや、気まずすぎるやろ…
激しく出たくない。
酔って寝ていることにして、無視してしまおうか。
しかし、酔っていたとはいえ悪いことをした。謝りたい気持ちもある。

自分の中の天使と悪魔が攻防戦を繰り広げていると、

「おい、何で出えへんねん」

背後からいきなり声をかけられた。

「は!!?!?さ、澤田!?なななんでここに…」

びっくりしすぎて舌がもつれた。
いや何で澤田がここにおんねん!?

「お前なぁ、ほんまいい加減にせえよ。お前のせいでこっちは終電なくしとんねん。一晩泊まらせるくらいはしてもらわんとあかんで」

澤田は両手をズボンのポケットに突っ込みながら、怒っているのか笑っているのかよくわからない不気味な表情でこちらに向かってくる。


え?なんか怖いんやけど…
だが、俺には反論の余地などない。

「いや、、まぁ、ええけど。うち狭いし汚いで。」

「そんなんわかってるわ。お前ん家が広くて綺麗やったら逆に気持ち悪いっちゅーねん」

澤田は憎まれ口をききながらポケットからミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、こちらに放り投げてきた。

下の自販機で買ってきたのだろうか。
え、俺のためにわざわざ?こいつ優しい奴やな…

「あ、サンキュー…あと、さっきは悪かったな。ほんま酔ってもうて…」

「ええわそんなん、わかっとる。ただ、絡んだ女子には明日謝っとけよ」

「せやな…ちゃんと謝るわ。ほんまありがとう」

めちゃくちゃええ奴やん、なんなんこいつ!!

澤田とは同じ学科ではあるが、サシで遊んだことはなかった。こんなええ奴ならもっと早くから仲良くしとけばよかった!なんて、酔いも覚めてテンションが上がった俺は自分の部屋を開け、澤田を招き入れたのだった。


先ほどから左手だけずっとポケットに突っ込んだままの澤田に少しばかり違和感を覚えたものの、奴の真の狙いなど、その時の俺には気づけるわけもなかった―――。


お題:「朦朧」「ミネラルウォーター」「アパート」

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