パーフェクト・プラン
俺の名前は澤田裕介。
俺は今日のためにあらゆる計算と準備をしてきた。
まずは頼まれたら断れない性格のあいつを新歓の幹事にさせること。
そして、あいつの近くには酒が強い連中を配置させ、自然な流れであいつが酔い潰れるまで飲ませること。
最後の仕上げに、サークル仲間の横山さんに協力を仰いだ。あいつは酔うと誰かれ構わずダル絡みする癖があるから、絡まれたら必要以上に騒いでもらうようお願いしておいたのだ。
そこでようやく、俺の出番だ。悪漢から女性を守る紳士のごとく振る舞いながら、あえてあいつの興味を俺に向かわせると、予想通りあいつは俺につっかかかってきた。
計画はまさに完璧だった。
酒で朦朧としたあいつを騙すのなんてわけはない。
もともと素面ではそこまで気が強くないあいつのことだ。自分のせいで俺に迷惑をかけたとわかれば、引け目を感じて多少の要求は飲んでくれるだろうとは思っていたが、まさかここまでうまくいくとは。
仲間たちには、「こいつ送ってくわ」なんて言ってまんまと二人きりになることに成功し、ついにはあいつのアパートまで来ることができたのだ!!
俺は嬉しくてすぐにでも部屋に入りたかったが、部屋の前まで来たところであいつは力尽きたのか、座り込んで寝てしまった。
おいおい。ここまで来てそりゃないで。
仕方がないので近くの自販機でミネラルウォーターを買い、再びあいつのところに戻る途中、おあずけされた仕返しにと、イタズラ電話をかけてやった。
目を覚ましたらしいあいつにペットボトルを渡すと、それだけですぐに警戒心が解けたようにふにゃっとはにかんできてマジで可愛かった。思わず俺の息子が反応してしまうほどには。
いやいやいや、さすがにそれはまずい。今までの計画が全てパーになってしまう。
ポケットに手を突っ込んでなんとか誤魔化しながらあいつの部屋に入ると、狭いシングルベッドに二人並びながら眠りについた。
最高の時間をありがとう。
お題:「朦朧」「ミネラルウォーター」「アパート」
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