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わたしの本棚

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#読書の秋2020

わたしの本棚57夜~「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」

わたしの本棚57夜~「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」

☆「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」山口周著 光文社新書 760円+税

 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が叫ばれ、世界のエリート、経営者は感性を鍛える傾向にあるといいます。論理的に白黒のはっきりつかない問題について答えを出さなければならないとき、最終的に頼れるのは個人の美意識しかない。そのため、哲学を鍛えられた欧州エリートやアートスクールに幹部を送り込んだり、早朝のギャラリー

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わたしの本棚55夜~「月の落とし子」

わたしの本棚55夜~「月の落とし子」

☆「月の落とし子」穂波了作 早川書房 1800円+税

 面白く一気に読みました。発想というか、ありえそうな話から入り、今、現在を予測したような展開は、ページをめくる手がとまりませんでした。

 人間の進歩を証明するための有人月探査「オリオン計画」で、月面に立った宇宙飛行士が、未知のウイルスに感染する、という設定。近未来、ありえそうです。宇宙とインターネットはまだまだ未知の部分の多い領域であり、人

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わたしの本棚54夜~「読みたいことを、書けばいい。」

わたしの本棚54夜~「読みたいことを、書けばいい。」

☆読みたいことを、書けばいい。田中泰造著 ダイヤモンド社 1500円+税

 元電通マンの田中泰延氏が47歳で青年失業家となり、フリーランスで働くうちに気づいたこと。文章の書き方、どんな文章がバズるか、支持されるかを就活のエントリーシートの書き方も絡めて書いてくださっています。

 シンプルです。「自分が読んで面白い文章を書こう」につきる話です。

文章は、随筆やSNSの短文からして、「何を書くか

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わたしの本棚50夜~「ネット興亡記」

わたしの本棚50夜~「ネット興亡記」

☆「ネット興亡記」敗れざる者たち 杉本貴司著 日本経済新聞出版 2000円+税

 わたしのように市井の普通の主婦が読んでも面白かったです。あとがきに著者が記されているように、インターネットの興亡記を検証することは大切で、そこに熱烈な人間ドラマがあったことを知ることにもなります。挫折や裏切りを知って胸を痛めたり、成功や希望を願ったり、わくわくする瞬間をたどって共有することもできました。

 今、イ

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わたしの本棚33夜~「蜜蜂と遠雷」

わたしの本棚33夜~「蜜蜂と遠雷」

 ☆「蜜蜂と遠雷」恩田陸著 幻冬舎文庫 803円(税込み、上下あり)

 ピアノコンクールの舞台裏、若き4人の天才ピアニストたちのコンクールにかける思い、人生を描いた作品です。音楽コンクールの4人の候補者と選考委員の悲喜こもごもを描いて、そこから、人生を照らす手法は、ありふれているものの、丁寧に描いて好感でした。直木賞と本屋大賞を同時に受賞という快挙の作品でもあり、石川慶監督で映画化もされました。

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わたしの本棚27夜~「FACT FULNESS」

わたしの本棚27夜~「FACT FULNESS」

☆「FACT FULNESS」ファクトフルネス ハンス・ロスリング著 日経BP社1800円+税

 世界はわたしが思っていたほど悪くないんだ、というのが読後、まず一番の感想でした。思い込みや憶測によって、事実が歪んでいること、自分の世界に関する見解が間違っていることを知りました。

例えば質問1、現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょうか? 答えは、60パーセントにものぼる。

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わたしの本棚26夜~「さざなみのよる」

わたしの本棚26夜~「さざなみのよる」

☆さざなみのよる 木皿泉著(河出書房新社)1400円+税

 小国ナスミ、享年43歳。癌でなくなる前後の彼女自身、彼女の身内、友人、少しだけ人生をともにした人たち、の目を通して、ナスミの死というものが描かれます。14話からなる話は、どれもふっと涙腺の緩むもので、市井の平凡な女性にすぎないナスミの生き方が、周りの人に、希望や勇気を与えるさまは、さざなみのように広がっていきます。

とにかくセリフがい

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わたしの本棚22夜~「望み」

わたしの本棚22夜~「望み」

 映画の先輩から、堤幸彦監督の最高傑作ではないだろうか、石田ゆり子の演技がいい、など聞いていたので、映画を先に観ました。主演の石田ゆり子×堤真一の迫真の演技、脇を固めた清原果耶、竜電太など素晴らしい演技で2時間、泣きながら見てしまいました。映画と小説は基本的には別の創作物(表現方法)と思っていますが、この作品、小説(原作)を読むと、映画が原作にとても忠実であったことがわかりました。小説は結末を知っ

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わたしの本棚17夜~「ファーストラヴ」

わたしの本棚17夜~「ファーストラヴ」

 子どもは親を選べない。完璧な親などいない。子どものためと思ってのことが深い傷になってしまうことがあったり、親の価値観が子どもを傷つけたり。傷つけられた子どもたちの慟哭を思うとき、切なさと哀しみとそれでも生きていかなくてはならないどうしょうもなさを思いました。

☆ファーストラブ 島本理生著(文藝春秋)1600円+税 

父親を刺殺した女子大生環奈、両親から心に深い傷を受けて育った臨床心理士の主人

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