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わたしの本棚33夜~「蜜蜂と遠雷」
☆「蜜蜂と遠雷」恩田陸著 幻冬舎文庫 803円(税込み、上下あり)
ピアノコンクールの舞台裏、若き4人の天才ピアニストたちのコンクールにかける思い、人生を描いた作品です。音楽コンクールの4人の候補者と選考委員の悲喜こもごもを描いて、そこから、人生を照らす手法は、ありふれているものの、丁寧に描いて好感でした。直木賞と本屋大賞を同時に受賞という快挙の作品でもあり、石川慶監督で映画化もされました。
わたし自身、読んでいて彼らが弾く曲を知りたくなって、音楽に造詣の深い友人からCDを借りて聞いたりしました。小説でのピアノ演奏の描写は、演奏者の人生との関係からも語らており、どんな人だろうと聴いてみたくなりました。映画化されるにあたり、全19曲を集めた音楽集も出て、本とCD両方で作品を堪能できました。
「ピアノが上手い人はたくさんいる、私たちが求めるのは上手い人ではなくてスターだ」といったような文章がところどころにあって、これは音楽に限らず、芸術全般に通じる教えのような気がしました。丁寧に紡がれる4人の人生背景と演奏描写は、そのまま、コンクールへの情熱ともなっていて、曲を知らなくても楽しめ、また、曲を知りたくなりました。
映画は、ダイジェスト的な感じで上手くまとめてはいるのですが、馬のシーンなど幻想な部分とかは、少し唐突で、やはり、この作品、小説から想像しながら読むのが楽しかったです。個人的には明石さんのようなピアニストが好きでした。
#読書の秋2020 #蜜蜂と遠雷 #恩田陸 #幻冬舎文庫 #直木賞