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わたしの本棚

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#推薦図書

わたしの本棚157夜~「浅草ルンタッタ」

わたしの本棚157夜~「浅草ルンタッタ」

王様は ルンタッタ ルンタッタ
いつも ルンタッタ ルンタッタ タッタラー ハイ!

 リズム感あふれる言い回しが、切なさとともに、読んだあと心に残りました。明治・大正時代の浅草の遊郭を舞台にした人情物語です。まるで舞台か映画を観ているような、映像がはっきりわかる描写力で、時としてお笑いやズッコケ描写もあって、泣き笑いしながら読み進めました。

☆浅草ルンタッタ 劇団ひとり著 幻冬舎 1650円

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わたしの本棚156夜~「シュンペーター」

わたしの本棚156夜~「シュンペーター」

 タイムリーな1冊です。コロナ禍後の世の中を考えるとき、地方のいち主婦にすぎないわたしにも、わかりやすく経済を、閉塞感を打ち壊すイノベーションの考えを解説してくれました。シュンペーターをほとんど知らなかったわたしは、資本主義の先を予言した1883年生まれの彼の言動を、時に詠嘆しながら読み進めました。経済学は、高校生の時の公民、大学の教養課程でほんの少しかじった程度だったので、学び直した感じで、重厚

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わたしの本棚154夜~「リセットの習慣」

わたしの本棚154夜~「リセットの習慣」

 わかりやすい文章で、共感を得る内容で、面白く、さくさく読めました。
なぜ今、リセットが必要なのか。医学の進歩と情報伝達の確実性で、体調をくずす要因を分析しやすくなりました。そんなか、著者の順天堂大学医学部教授である小林弘幸先生は、専門の自律神経の知識から、リセットの重要性を説いてくれています。

☆リセットの習慣 小林弘幸著 日経BP 日本経済新聞出版 800円+税

 自律神経には交感神経と副

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わたしの本棚149夜~「夜に星を放つ」

わたしの本棚149夜~「夜に星を放つ」

 芥川賞は文藝春秋で、直木賞はオール読物で、選評を参考にしながら読むのですが、今年は、近所のママ友さんが、「夜に星を放つ」を直木賞発表時に購入して読み終わり、早々に貸してくれました。読書家の彼女からは、「いい話だけど、短編集で、直木賞としては物足りないかな」というメッセージつきでした。

☆「夜に星を放つ」 窪美澄著  文藝春秋 1400円+税

 連作ではなく、独立した5編の短編集です。コロナ禍

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わたしの本棚141夜~「過渡の詩」

わたしの本棚141夜~「過渡の詩」

 角川書店の月刊誌「俳句」の2021年の12月号に、「必読の俳論1970-2020」という50年間での俳論、この一冊という特集記事がありました。総論含めて、7名の論客の方が素晴らしい文章を執筆されていますが、その中でも総論の澤好摩氏をはじめ、大井恒行氏、黒岩徳将氏が書かれているのが坪内稔典氏の「過渡の詩」と続く「俳句の根拠」です。絶版になっていて読めなかった「過渡の詩」は、今年、松山たかし氏の象の

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わたしの本棚140夜~「隣人の愛を知れ」

わたしの本棚140夜~「隣人の愛を知れ」

都会に生きる6人の女性たちの物語です。水戸家の母美智子、姉和歌、妹ひかり。立花莉里、スタイリストのヨウ、女優の青子。それぞれの恋愛や暮らし方を通して、女性の生き方を鮮やかに描いています。6人の群像劇で、一人5ページ弱の話が、冬至のあたり、クリスマスのあたり、小正月のあたり、節分のあたり、桃の節句のあたり、春分のあたり、こどもの日あたりと季節の推移とともに語られていました(ちょうど今の季節の移り変わ

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わたしの本棚137夜~「平城山(ならやま)」

わたしの本棚137夜~「平城山(ならやま)」

 西谷剛周先生率いる俳句結社「幻」は奈良を拠点とする、アットホームな結社です。「船団」の坪内先生と「幻」の西谷先生が仲良く、レンゲ句会などの合同句会や貞徳俳句大会などをご一緒させていただきました。そんな「幻」の編集委員であり、吟行の幹事として活躍する髙木泰夫氏の第一句集です。発行所も幻俳句会とあり、句集シリーズ5とあります。

☆「平城山」 髙木泰夫著 幻俳句会

 序文を西谷剛周先生が書かれてい

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わたしの本棚136夜~「哲学の蝿」

わたしの本棚136夜~「哲学の蝿」

 衝撃の本でした。ここまで書くか、といった人間の闇の部分を丁寧に考察し、本を読むことで、哲学書を読むことによって、人間を知ることによって、作者が寛解してきたものを追体験したような感覚が残る自伝的エッセイでした。一昨年、白石一文氏の小説「君がいないと小説は書けない」を読んだときにも赤裸々な自伝的な告白にびっくりしましたが、エッセイの形態をとっている分、この本の自伝部分はより強烈でした。

 ☆哲学の

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わたしの本棚135夜~「楽隊のうさぎ」

わたしの本棚135夜~「楽隊のうさぎ」

 去年、重版で25刷になったというロングセラーです。わたしが持っているのは平成22年の15刷の値段です。中沢けい先生というと、「海を感じる時」の衝撃が大きく、大ベストセラーですが、こちらの「楽隊のうさざ」もまた、吹奏楽部の中学生を描いた成長物語として、不朽の名作です。

☆「楽隊のうさぎ」 中沢けい著 新潮文庫  550円+税

 主人公奥田克久くんは、小学生のころ、いじめられた経験があり、引っ込

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わたしの本棚134夜~「東山道エンジェル紀行」

わたしの本棚134夜~「東山道エンジェル紀行」

不思議な本でした。ショッキングピンクのきれいな装丁、開けると、ピンクの紙とグレーの紙に物語が展開していきます。寺門孝之氏のポスターのような繊細な絵が随所についており、大人の絵本といった感覚です。

☆「東山道エンジェル紀行」 町田康著 寺門孝之絵 左右社 1980円(税込み)

 帯にパンクファンタジー! 小説家と画家の魂が鳴り響く!構想期間20年、幻の傑作がついに完結。「俺は生涯、死ぬまで追放者

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わたしの本棚132夜~「本当は逢いたし」

わたしの本棚132夜~「本当は逢いたし」

 私淑する俳人も多く、こういうふうに齢を重ねられたら素敵だなあ、と思う女流俳人池田澄子氏からのエッセイ集です。日本経済新聞、「俳句α」「うえの」に連載したエッセイから60余編が選ばれています。この10年、3・11からコロナウイルス禍までの間に綴った作品です。

☆「本当は逢いたし」 池田澄子著 日経BP社 2200円+税

 澄子氏の生い立ちから、日常のささやかな出来事を、俳句を織り交ぜながら語ら

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わたしの本棚131夜~「俳句いまむかしふたたび」

わたしの本棚131夜~「俳句いまむかしふたたび」

  2010年5月1日から始まった毎日新聞朝刊の季語刻々の連載。毎朝、社会面に今日の一句として、坪内先生が選んだ俳句と鑑賞エッセイが載ります。400回を超えた季語刻々のセレクト版です。去年の8月に出た「俳句いまむかし」の続編です。この本では、同じ季語の俳句で、現代の俳人と昔の俳人を並べて鑑賞しており、今昔の対比も面白い本です。旧「船団」の先輩や句友たちの素敵な俳句がたくさん載っています。

☆「俳

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わたしの本棚130夜~「mon 18号」

わたしの本棚130夜~「mon 18号」

 第34回大阪女性文芸賞を受賞した飯田未和氏が主宰をつとめる同人誌「mon」の18号です。春と秋の年2回の発行で、大阪文学学校、大阪を中心として活動されています。同人10名の短編小説のほか、今号はゲストとして、水無月うらら氏のエッセイを掲載されています。

☆mon 18号  mon同人 しまや出版 700円

 大阪女性文芸賞の他、神戸エマール文学賞受賞者、三田文学新人賞受賞者、星新一賞入選者な

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わたしの本棚127夜~「ばさら」

わたしの本棚127夜~「ばさら」

 生活にバタバタしており、贈っていただいても書けていないものもあり、読書の秋2021の課題の本もまだ数冊しか読めず・・・との毎日です。読書の感想を書くのが恐縮になっております。

 2020年5月に急逝した甲斐いちびん氏の第句2集です。この句集を制作中に急逝され、死後、奥さま、娘さま、山本直一氏、故宮竒亀氏、中原幸子氏を中心とする旧船団北摂句会の皆さんのご尽力によって上梓された句集は、追悼句会の思

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