わたしの本棚130夜~「mon 18号」
第34回大阪女性文芸賞を受賞した飯田未和氏が主宰をつとめる同人誌「mon」の18号です。春と秋の年2回の発行で、大阪文学学校、大阪を中心として活動されています。同人10名の短編小説のほか、今号はゲストとして、水無月うらら氏のエッセイを掲載されています。
☆mon 18号 mon同人 しまや出版 700円
大阪女性文芸賞の他、神戸エマール文学賞受賞者、三田文学新人賞受賞者、星新一賞入選者など実力派ぞろいの同人誌です。「季刊文科」「文芸思潮」「三田文学」の同人誌評にもとりあげられたり、「講談社・文学2017」に掲載されたりといった方たちの作品で、よみごたえありました。
そんな中、飯田未和氏の「溺れる亀」は、淡いBL風の小説で、大阪弁がきいてます。亀吉という亀をアクセントにして、主人公の山根、大村とその妻になる玲、伊藤さん、といった交流関係です。小学校のころ、女の先生にキスされてから女嫌いになった山根。ただ、そのトラウマしか書かれてないですが、恐らく、生まれながらの違和感があったのでは、と思いました。
最近は、ジェンダーや多様性、同性愛を尊重する恋愛小説や映画が多く、今冬、わたしが観た映画でも、草野翔吾監督「彼女が好きなものは」、セバスチャン・リフショツ監督「リトル・ガール」などに、男性を好きになる男性の苦悩が描かれていました。どちらの映画でも、痛いほど、切なくて、苦しくて、死をも覚悟することもあり、その点、この作品は、どう位置づけしたらいいのかしら、と少し迷ってしまいました。大阪弁と山根のキャラクターが、恋や悩みを、そんなに深刻に感じさせない要因のひとつかもしれず、それは作者の持ち味かもしれないと思いました。
同人のキン、ミカ氏は、「いつかはモクズ」で、今年の第39回大阪女性文芸賞佳作受賞者です。
★飯田未和★
1978年大阪府生まれ 京都大学大学院修了
第34回大阪女性文芸賞受賞「朝顔の家」(選考委員、黒井千次氏、中沢けい氏)
第9回神戸エルマール文学賞受賞