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#子育て
シャツワンピースを着て試着室で泣いた話
大学生の夏、バイトを終えた足で深夜バスの停留所へ向かった。
前輪と後輪のあいだにぽっかりと口を開けたトランクルームがある。荷物を預ける乗客が長い列を作っていた。
運転手が流れ作業のように長方形のトランクケースを次々に投げ入れているのを横目に、乗車口へ向かう。肩からかけたトートバッグはバスの中に持ち込むと決めていた。
乗車口へ行くと、特有の匂いが充満していた。久しぶりだな、と思いながら数段の
残したい景色はいつも目の前にあって、嵐のように去る話
無謀にも、「覚えておきたい」と思う。
人は忘れる生き物なのに。
◇
外に出ると、3歳の娘と私は手を繋ぐ。
玄関を出て、娘は左手を差し出す。目は行く先のみを見ている。
娘の頭の横で宙に浮いている小さな手は、握り返されるのを静かに待っている。その手をぎゅっと掴むと、弾かれたように駆け出す。
待って、早いよ。そう言って、娘の揺れる髪の毛と、きゅっと上がった頬を斜め後ろから見る。喜びが、小さな身体か
サンタクロースは、まぎれもなく娘なのだ。
12月初旬、3歳の娘は悲しんでいた。
「12月になったのに、サンタさん、まだ娘ちゃんのところに来てくれないんだよね」
寂しそうに眉毛を八の字にして言うものだから、私は焦ってアドベントカレンダーを購入した。
毎日1つずつ、この枠をあけるよ。
最後の「24」をあけた日の夜、サンタクロースがプレゼントをくれるよ。
真剣な顔で、うん、うん、と言いながら説明を聞く娘。
紺色のそれを手渡すと、両手でし